長短経 / 練士
夫王者帥師、必簡鍊英雄、知士髙下、因能授職。各取所長、為其股肱羽翼、以成威神、然後萬事畢矣。腹心一人〔主淵泉應卒、揆天消變、搃撮計謀、保國全命者也。、〕謀士五人〔主國安危、豫慮未然、諭才能、明賞罰、授官位、決嫌疑、定可否者也。、〕天文三人〔主占星厯、候風氣、理時日、考符騐效灾異、知天心去就者也。、〕地形三人〔主軍行止、形勢利害、逺近險易、水涸山阻、不失地理者也。、〕兵法九人〔主講論異同、行事成敗、簡鍊兵器、凡軍陣所用、刺舉非法者也。、〕
新字:夫王者帥師、必簡錬英雄、知士高下、因能授職。各取所長、為其股肱羽翼、以成威神、然後万事畢矣。腹心一人〔主淵泉応卒、揆天消変、搃撮計謀、保国全命者也。、〕謀士五人〔主国安危、予慮未然、諭才能、明賞罰、授官位、決嫌疑、定可否者也。、〕天文三人〔主占星歴、候風気、理時日、考符騐効災異、知天心去就者也。、〕地形三人〔主軍行止、形勢利害、遠近険易、水涸山阻、不失地理者也。、〕兵法九人〔主講論異同、行事成敗、簡錬兵器、凡軍陣所用、刺舉非法者也。、〕
書き下し
夫れ王者の師を帥いるや、必ず英雄を簡練し、士の高下を知り、能に因りて職を授く。各々長ずる所を取りて、其の股肱羽翼と為し、以て威神を成す。然る後に万事畢る。腹心一人〔淵泉に主として卒に応じ、天を揆り変を消し、計謀を総撮し、国を保ち命を全うする者なり〕。謀士五人〔国の安危を主り、未然を予慮し、才能を諭り、賞罰を明らかにし、官位を授け、嫌疑を決し、可否を定むる者なり〕。天文三人〔星暦を占い、風気を候い、時日を理め、符験を考え災異を效し、天心の去就を知るを主る者なり〕。地形三人〔軍の行止、形勢の利害、遠近険易、水涸山阻を主り、地理を失わざる者なり〕。兵法九人〔異同を講論し、行事の成敗、兵器を簡練し、凡そ軍陣の用うる所、非法を刺挙するを主る者なり〕。
現代語訳
王者が軍を率いるときは、必ず英雄を選び鍛え、士の優劣を知り、能力に応じて職を授ける。それぞれの長所を取って手足や翼とし、威と神妙さを成す。そうして初めてすべての事が成る。腹心一人〔深く考えて急変に応じ、天をはかって異変を消し、計略をまとめ、国を保ち命を全うさせる役〕。謀士五人〔国の安危をつかさどり、事が起こる前に考え、才能を見きわめ、賞罰を明らかにし、官位を授け、疑わしいことを決め、可否を定める役〕。天文三人〔星と暦を占い、風と気をうかがい、日時を整え、兆しと実際を照らして災異を調べ、天意の向かう先を知る役〕。地形三人〔軍の進退、地勢の利害、遠近・険しさ・平坦さ、水の涸れや山の阻みをつかさどり、地の理を誤らない役〕。兵法九人〔異同を論じ、行った事の成否を検討し、武器を選び整え、軍陣で用いるものをつかさどり、法に外れたことを告発する役〕。
解説

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六韜・王翼武王 太公に問ひて曰く、「王者 師を帥ゐるには、必ず股肱羽翼ありて以て威神を成す。之を為すこと柰何」と。太公曰く、「凡そ兵を挙げ師を帥ゐるは、将を以て命と為す。命は通達に在り、一術を守らず。能に因りて職を受け、各々長ずる所を取り、時に随ひて変化し、以て綱紀と為す。故に将に股肱羽翼七十二人あり、以て天道に応ず。数を備ふること法の如くし、命理を審らかに知る。殊能異技あらば、万事畢はれり」と。武王曰く、「請ふ、其の目を問はん」と。太公曰く、「腹心一人、潜謀もて卒かなるに応じ、消変を揆り、計謀を揔攬し、民命を保全するを主る。謀士五人、安危を図り、未だ萌さざるを慮り、行能を論じ、賞罰を明らかにし、官位を授け、嫌疑を決し、可否を定むるを主る。天文三人、星暦を司り、風気を候ひ、時日を推し、符験を考へ、災異を校べ、人心去就の機を知るを主る。地利三人、三軍行止の形勢、利害消息、遠近険易、水涸山阻を主り、地の利を失はず。兵法九人、異同を講論し、行事の成敗を論じ、兵器を簡練し、非法を刺挙するを主る。通糧四人、飲食・蓄積を度り、糧道を通じ、五穀を致し、三軍をして困乏せざらしむるを主る。奮威四人、材力を択び、兵革を論じ、風馳電撃して由る所を知らざらしむるを主る。伏鼓旗三人、鼓旗を伏せ、耳目を明らかにし、符節を詭り、号令を謬らせ、闇忽として往来し、出入すること神の若くするを主る。股肱四人、重きに任じ難きを持し、溝塹を修め、壁塁を治め、以て守禦に備ふるを主る。通材三人、遺を拾ひ過ちを補ひ、賓客に応偶し、論議談語し、患ひを消し結ぼれを解くを主る。権士三人、奇譎を行ひ、殊異を設け、人の識る所に非ざる、窮まりなきの変を行ふを主る。耳目七人、往来して言を聴き変を視、四方の事、軍中の情を覧るを主る。爪牙五人、威武を揚げ、三軍を激励し、難を冒して鋭を攻めしめ、疑慮する所なからしむるを主る。羽翼四人、名誉を揚げ、遠方を震はせ、四境を揺動して以て敵の心を弱むるを主る。遊士八人、姦を伺ひ変を候ひ、人情を開闔し、敵の意を観て、以て間諜と為すを主る。術士二人、譎詐を為し、鬼神に依託して以て衆心を惑はすを主る。方士二人、百薬を主り、以て金瘡を治し、以て万病を痊やす。法算二人、三軍の営壁・糧食・財用の出入を計会するを主る」と。
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荀子・大略篇主道(しゅどう)は人を知り、臣道(しんどう)は事を知る。故に舜(しゅん)の天下を治むるや、事を以て詔(つ)げずして万物成る。農は田に精(くわ)しきも、以て田師(でんし)と為すべからず。工賈(こうこ)も亦(ま)た然り。
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『講孟余話』盡心下 第三十八章余江戸獄にて日蓮宗の僧日命と交る。日命云ふ、「仏法に摂受・折伏あり。摂受は戒を持し経を念じ、仏意を講明し、万世に伝ふるを以て己が任とす。天下の治乱安危、外道邪魔の譏謗是非、毫も心に置くことなし、是れ摂受なり。折伏は外道邪魔を折伏し、天下を平治するを以て己が任とす。戒を持せず経を念ぜず、人の忿怒を憚らず、人の嫉悪を避けず、一身を捨てて仏道を張る、是れ折伏なり」と。日命は原と会津の藩士武井某と云ふ者にて、気力あり、少時略程朱の学及び長沼氏の兵法を学ぶ。已に僧と成りて、所謂折伏を以て自ら任とす。余因りて難ず、「摂受は獧者の事にして、折伏は狂者の事ならん。但だ摂受は天下の治乱安危、外道の譏謗是非を顧みざると、折伏は戒を持せず経を念ぜざるは、偏僻の甚しきに非ずや。又摂受は兵の正にして、折伏は兵の奇なり。兵は正中に奇あり、奇中に正あり、正或は時に奇となり、奇或は時に正となる。奇は常に奇、正は常に正なるは、死定膠固に非ずや。禹・稷・顔回地を易ふれば皆然るの理は何如にや」と云ふ。日命云く、「人各々能あり不能あり。一人にして衆能を兼ねんと欲すとも、決して成ることなし。唯だ細思せよ、摂受にして折伏を羨まず、折伏にして摂受を羨まず、是れ専精の人に非ざるよりは、決して能はざることなり。且つ摂受の人多ければ、仏道自ら明らかに、折伏の人多ければ、外道自ら滅す。然る後仏意に負くことなし。奇正並び用ひ、狂獧同じく教ゆ、固より亦仏道の要なり」と。噫、彼の異端の徒、其の偏僻の甚しきは、姑く論ぜずして可なり。乃ち其の道を任ずること斯くの如き、実に吾が儒の慙ぢ且つ懼るべき所に非ずや。
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『新書』輔佐典方は方を典り容儀を典り、以て諸侯・遠方の君を掌り、之が班爵・列位・軌伍の約、朝覲・宗遇・会同・享聘・貢職の数を譔し、其の民人の衆寡、政の治乱を辨ず。徳に率い道に順い、僻淫犯禁の差第を率い、天子巡狩すれば、則ち先ず其の方に循う。故に或いは功徳有りて挙げず、或いは淫僻犯禁有りて知らざるは、典方の任なり。奉常は天を典り、以て宗廟社稷の祀、天神地祇人鬼、凡そ山川四望国の諸祭、吉凶妖祥占相の事を掌り、礼楽喪紀を序し、国の礼儀、畢く其の宜しきに居らしめ、以て宗室を識し、民の風俗を観、詩商を審らかにし、憲命を修め、邪言を禁じ、淫声を息む。四時の交わりに於いて、南郊に事有り、以て報祈天明す。故に天事を歴ぬること得ず、鬼神に事うること序ならず、礼儀人倫を経すること正しからざるは、奉常の任なり。祧師は春を典り、以て国の衆庶、四民の序を掌り、礼義倫理を以て人民を教訓す。方に春三月、緩く施して遂げしめ、百物を動作せしむ、是の時皇考祖考に事有り□□□□□□。