長短経 / 覇図
智伯從韓魏之君伐趙、韓魏陰謀叛。智果曰、「二王殆将有變、不如殺之、不殺、則遂親之。」智伯曰、「親之柰何?」智果曰、「魏宣子之謀臣趙葮韓康子之謀臣段規、是皆能移其君之計。君與二君約破趙、則封二子萬家之縣各一。如是、則二主之心可以無變。」智伯不從。韓魏果反、殺智伯。〕於是強國務攻弱國務守、合縱連衡馳車轂擊、介胄生蟣虱、人無所告訴。
新字:智伯従韓魏之君伐趙、韓魏陰謀叛。智果曰、「二王殆将有変、不如殺之、不殺、則遂親之。」智伯曰、「親之柰何?」智果曰、「魏宣子之謀臣趙葮韓康子之謀臣段規、是皆能移其君之計。君与二君約破趙、則封二子万家之県各一。如是、則二主之心可以無変。」智伯不従。韓魏果反、殺智伯。〕於是強国務攻弱国務守、合縦連衡馳車轂撃、介胄生蟣虱、人無所告訴。
書き下し
智伯、韓・魏の君を従えて趙を伐つ。韓・魏、陰かに叛かんことを謀る。智果曰く「二王は殆ど将に変有らんとす。之を殺すに如かず。殺さずんば、則ち遂に之に親しめ」と。智伯曰く「之に親しむとは奈何」と。智果曰く「魏宣子の謀臣は趙葮、韓康子の謀臣は段規なり。是れ皆な能く其の君の計を移す。君、二君と趙を破らんことを約せば、則ち二子に万家の県各々一を封ぜよ。是くの如くんば、則ち二主の心、以て変ずること無かる可し」と。智伯従わず。韓・魏果たして反し、智伯を殺す。〉是に於て強国は攻を務め、弱国は守を務め、合縦連衡して、馳車轂撃ち、介冑に蟣虱を生じ、人に告訴する所無し。
現代語訳
智伯が韓と魏の君主を従えて趙を伐った。韓と魏はひそかに背く相談をした。智果が言った。「二人の王はおそらく変事を起こします。殺すに越したことはありません。殺さないなら、いっそ親しくなさい」。智伯は言った。「親しむとはどうするのか」。智果は言った。「魏宣子の参謀は趙葮、韓康子の参謀は段規です。この二人はどちらも主君の判断を動かせます。君が二人の君主と趙を破る約束をするなら、この二人にそれぞれ万戸の県を一つずつ封じなさい。そうすれば二人の主君の心は変わりません」。智伯は従わなかった。韓と魏は果たして背き、智伯を殺した。〉こうして強国は攻めることに努め、弱国は守ることに努め、合従連衡して、戦車が走り車軸がぶつかり、鎧の中にしらみが湧き、民には訴える先がなかった。
解説

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説苑・權謀智伯韓・魏の兵を從へて以て趙を攻め、晉陽の城を圍みて之を溉ぐ。城沒せざる者三板。絺疵智伯に謂ひて曰く、「韓・魏の君必ず反せん」と。智伯曰く、「何を以て之を知る」と。對へて曰く、「夫れ趙に勝ちて其の地を三分せんとするに、今城の未だ沒せざる者三板、臼灶蛙生じ、人馬相食む。城降ること日有らんとす。而るに韓・魏の君喜ぶ志無くして憂ふる色有り。是れ反するに非ずして何ぞや」と。明日、智伯韓・魏の君に謂ひて曰く、「疵、君の反する言へり」と。韓・魏の君曰く、「必ず趙に勝ちて其の地を三分せんとす。今城將に勝たんとす。夫れ二家愚なりと雖も、美利を棄てて約に偝きて成すべからざるの事を難くせんや。其の勢見るべきなり。是れ疵必ず趙の爲に君に說き、且つ君をして二主の心を疑はしめ、而して趙を攻むるを解かしめんとするなり。今君讒臣の言を聽きて二主の交を離す。君の爲に之を惜しむ」と。智伯出でて、絺疵を殺さんと欲す。絺疵逃ぐ。韓・魏の君果して反す。
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『韓非子』十過第十然りと雖も、知伯の人と為りや、麤中にして親しむこと少なし。我謀りて覚らるれば、則ち其の禍必ず至らん。之を為すこと奈何せん」と。張孟談曰く、「謀は二君の口より出でて臣の耳に入る、人之を知る莫きなり」と。二君因りて張孟談と三軍の反を約し、之と日を期す。夜孟談を遣はして晋陽に入れ、以て二君の反を報ず。襄子孟談を迎へて之を再拝し、且つ恐れ且つ喜ぶ。二君約を以て張孟談を遣はし、因りて知伯に朝して出で、智過に轅門の外に遇ふ。智過其の色を怪しみ、因りて入りて知伯に見えて曰く、「二君の貌将に変有らんとす」と。君曰く、「何如」と。「其の行ひ矜にして意高く、他時の節に非ざるなり、君先んずるに如かず」と。君曰く、「吾二主と約すること謹めり、趙を破りて其の地を三分せんとす、寡人の之を親しむ所以なり、必ず侵欺せず。兵の晋陽に著くこと三年、今旦暮に将に之を抜きて其の利を嚮けんとす、何ぞ乃ち将に他心有らんや。必ず然らず。子釈きて憂ふる勿かれ、口に出だす勿かれ」と。明旦、二主又朝して出で、復た智過に轅門に見ゆ。智過入り見えて曰く、「君臣の言を以て二主に告げしか」と。君曰く、「何を以て之を知る」と。曰く、「今日二主朝して出で、臣を見て其の色動き、而して臣を視属す。此れ必ず変有らん、君之を殺すに如かず」と。君曰く、「子置きて復た言ふ勿かれ」と。智過曰く、「不可なり、必ず之を殺せ。若し殺すこと能はずんば、遂に之を親しめ」と。君曰く、「之を親しむこと奈何」と。智過曰く、「魏の宣子の謀臣を趙葭と曰ひ、韓の康子の謀臣を段規と曰ふ、此れ皆能く其の君の計を移す。君其れ二君と約し、趙国を破らば、因りて二子の者を封ずること各々万家の県一とせよ。是くの如くんば、則ち二主の心以て変ずる無かるべし」と。知伯曰く、「趙を破りて其の地を三分し、又二子の者を封ずること各々万家の県一とせば、則ち吾が得る所の者少なし。不可なり」と。
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『智囊』知微・智過・絺疵張孟談が朝して智伯に因って出ると、智過に轅門の外で遇った。智過は入って智伯に見え、曰く、「二主は殆ど変有るのではありませんか」と。君は曰く、「どういうことか」と。対えて曰く、「臣は孟談に轅門の外で遇いましたが、その志は矜り、その行いは高うございました」と。智伯は曰く、「そうではない。吾は二主と約すること謹んでいる。趙を破れば、その地を三分する、必ず欺かない。子は口に出すな」と。智過は出て二主に見え、入って智伯に説いた、「二主は色が動き意が変わっております、必ず君に背きましょう。今これを殺すに如かず」と。智伯は曰く、「兵が晋陽に着いて三年になる。旦暮に当に抜いてその利を饗けようとするのに、他心が有るなど、あってはならない。子は慎んで復た言うな」と。智過は曰く、「殺さなければ、遂にこれに親しむべきです」と。智伯は曰く、「これに親しむとはどうするのか」と。智過は曰く、「魏桓子の謀臣は趙葭といい、韓康子の謀臣は段規といい、この者らは皆その君の計を移すことができます。君は二君と約され、趙を破れば、二子に各々万家の県一つを封ずると。かくすれば二主の心は変わらずにすみ、君は欲する所を得られます」と。
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『長短経』釣情智伯、韓・魏の君を従えて趙を伐つ。韓・魏は趙の臣張孟談の計を用いて、陰かに智伯に叛かんことを謀る。張孟談因りて智伯に朝し、智果に轅門の外に遇う。智果入りて智伯に見えて曰く「二主殆ど将に変有らんとす。臣張孟談に遇うに、其の志矜りて行い高きを察し、二君を見るに色動きて変ず。必ず君に背かん」と。智伯従わず。智果出でて、遂に其の姓を更めて輔氏と為す。張孟談入りて趙襄子に見えて曰く「臣、智果に轅門の外に遇う。其の視るに臣を疑うの心有り。入りて智伯に見えて其の族を更む。今暮に撃たずんば、必ず之に後れん」と。襄子曰く「諾」と。因りて韓・魏と守隄の吏を殺し、水を決して智伯の軍に灌ぐ。此れ情は視を以て釣るべきなり。
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『智囊』知微・智過・絺疵智伯は曰く、「趙を破って其の地を三分し、また二子に各々万家の県一つを封ずれば、吾の得る所は少なくなる。不可である」と。智過は君の用いぬこと、言が聴かれぬことを見て、出て姓を更めて輔氏となり、遂に去って見えなかった。〔張孟談の辺批に、正に智過の対手である。〕張孟談は聞いて、入って襄子に見え、曰く、「臣は智過に轅門の外で遇いましたが、その視る目には臣を疑う心が有りました。入って智伯に見え、出て姓を更めました。今暮に撃たなければ、必ず後れます」と。襄子は曰く、「諾」と。張孟談を使って韓・魏の君に見えさせ、夜に期して、守堤の吏を殺し、水を決して智伯の軍を灌いだ。智伯の軍は水を救って乱れ、韓・魏は翼して撃った。襄子は卒を将いて其の前を犯し、大いに智伯の軍を敗り、智伯を擒えた。智伯は身は死し、国は亡び、地は分かれ、智氏は尽く滅び、唯だ輔氏が存した。〔馮述評〕《綱目》に按ずるに、智果が姓を更めたのは、智宣子が瑤を立てて後とした時にあり、瑤を「才多くして不仁、必ず智宗を滅ぼす」と謂った。その知は更に早い。
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『長短経』七雄略何を以て其の然るを知るや。智伯は趙を伐つの利を見て榆次の禍を知らず、呉王は斉を伐つの便を知りて干遂の敗を知らず。此の二国なる者は大功無きに非ざるなり。前に利に没して後に患いを易るなり。今、王、楚の毀たれざるを妬みて、楚を毀つの韓・魏を強くするを忘る。臣、王の為に慮りて、取らざるなり。王、重世の徳を韓・魏に無くして、累世の怨み有り。夫れ韓・魏の父兄子弟の踵を接して秦に死する者、将に十世ならんとす。身首分離し、骸を革沢に暴す者、境に相い望む。頸を繫ぎ手を束ねて群虜と為る者、路に相い望む。故に韓・魏の亡びざるは、秦の社稷の憂いなり。今、王、之を信じ、兵を与にして楚を攻む。亦た過ちならずや。