智囊 / 小慧・幻術
凡幻戲之術,多係偽妄。金陵人有賣藥者,車載大士像問病,將藥從大士手中過,有留於手不下者,則許人服之,日獲千錢。有少年子從旁觀,欲得其術。俟人散後,邀飲酒家,不付酒錢,飲畢竟出,酒家如不見也。如是三,賣藥人叩其法,曰:「此小術耳,君許相易,幸甚。」賣藥人曰:「我無他,大士手是磁石,藥有鐵屑則黏矣。」少年曰:「我更無他,不過先以錢付酒家,約客到絕不相問耳。」彼此大笑而罷。
新字:凡幻戯之術,多係偽妄。金陵人有売薬者,車載大士像問病,将薬従大士手中過,有留於手不下者,則許人服之,日獲千銭。有少年子従旁観,欲得其術。俟人散後,邀飲酒家,不付酒銭,飲畢竟出,酒家如不見也。如是三,売薬人叩其法,曰:「此小術耳,君許相易,幸甚。」売薬人曰:「我無他,大士手是磁石,薬有鉄屑則黏矣。」少年曰:「我更無他,不過先以銭付酒家,約客到絶不相問耳。」彼此大笑而罷。
書き下し
凡そ幻戯の術は、多く偽妄に係る。金陵の人に薬を売る者有り、車に大士の像を載せて病を問い、薬を大士の手の中より過ごし、手に留まりて下らざる者有らば、則ち人に服することを許す、日に千銭を獲たり。少年子の傍らより観る有り、其の術を得んと欲す。人の散ずるを俟ちて後、邀えて酒家に飲み、酒銭を付さず、飲み畢わりて竟に出ず、酒家は見ざるが如し。是の如くすること三たび、売薬の人は其の法を叩く、曰く、「此れ小術のみ、君は相い易えんことを許さば、幸甚なり」と。売薬の人曰く、「我に他無し、大士の手は是れ磁石にして、薬に鉄屑有らば則ち黏するのみ」と。少年曰く、「我は更に他無し、先に銭を以て酒家に付し、客の到れば絶えて相い問わざることを約するに過ぎず」と。彼此大いに笑いて罷む。
現代語訳
およそ手品の術というものは、たいていは偽りである。金陵に薬を売る者がいて、車に観音像を載せて、病気を尋ね、薬を観音の手の中を通し、手にくっついて落ちないものがあれば、人に飲むことを許した。そうして毎日千銭を稼いでいた。ある若者が傍らから見ていて、その術を知りたいと思った。人が散ったあと、その薬売りを誘って酒屋で飲み、酒代を払わずに飲み終えて外に出た。酒屋は気づかないかのようだった。こうしたことが三度続いたので、薬売りはその方法を尋ねた。若者は言った。「これは小さな術にすぎませんが、あなたが交換に承知してくださるなら、ありがたいです。」薬売りは言った。「私に特別な術はありません。観音の手は磁石で、薬に鉄の粉が入っていればくっつくだけです。」若者は言った。「私にも特別な術はありません。あらかじめ酒屋に銭を渡しておき、客が来たら一切代金を尋ねないように約束しているだけです。」互いに大いに笑って終わった。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『春秋左氏伝』荘公二十八年 楚幕に烏あり楚の令尹子元文夫人を蠱せんと欲し、館を其の宮の側に爲りて、萬を振ふ。夫人之を聞き、泣きて曰く、「先君是の舞を以ってするや、戎備を習ふなり。今令尹諸を仇讎に尋ねずして、未亡人の側に於いてす。亦た異ならずや」と。禦人以って子元に告ぐ。子元曰く、「婦人すら仇を襲ふを忘れず、我反って之を忘る」と。秋、子元車六百乘を以って鄭を伐ち、桔柣の門に入る。子元・鬭禦疆・鬭梧・耿之不比旆と爲り、鬭班・王孫游・王孫喜殿す。眾車純門より入り、逵市に及ぶ。縣門發せず。楚言して出づ。子元曰く、「鄭に人有り」と。諸侯鄭を救ふ。楚の師夜遁る。鄭人將に桐丘に奔らんとす。諜告げて曰く、「楚の幕に烏有り」と。乃ち止む。冬、饑う。臧孫辰糴を齊に告ぐ、禮なり。郿に築く、都に非ざるなり。凡そ邑に宗廟先君の主有るを都と曰ひ、無きを邑と曰ふ。邑には築と曰ひ、都には城と曰ふ。
-
『呻吟語』内篇・應務・一葉を觀て樹の死生を知る一葉を觀て樹の死生を知り、一面を觀て人の病否を知り、一言を現て識の是非を知り、一事を現て心の邪正を知る。
-
人物志・八觀八観とは、一に曰く、其の奪救を観て、以て間雑を明らかにす。二に曰く、其の感変を観て、以て常度を審らかにす。三に曰く、其の志質を観て、以て其の名を知る。四に曰く、其の所由を観て、以て依似を弁ず。五に曰く、其の愛敬を観て、以て通塞を知る。六に曰く、其の情機を観て、以て恕惑を弁ず。
-
言志四録・言志録 第九十一条 月を看て宇宙を想ふ人の月を看るは、皆徒らに看るなり。須らく此に於て宇宙無窮の概を想ふべし。(乙亥中秋、月下に録す)
-
『韓非子』說林下二十三伯楽、二人に踶馬を相することを教へ、相与に簡子の廐に之きて馬を観る。一人、踶馬を挙ぐ。其の一人、後ろより之を循で、三たび其の尻を撫づるも馬踶まず。
-
言志四録・言志晩録 第八十八条 武技を観るも亦学余好んで武技を演ずるを観る。之を観るに目を以てせずして心を以てす。必ず先づ呼吸を収めて、以て渠が呼吸を邀ふ。勝敗を問はずして、其の順逆を視る。甚だ適なり。此れも亦是れ学なり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る