智囊 / 小慧・京城士人
《藝文類聚》:京邑士人婦大妒,嘗以長繩係夫腳,喚便牽繩。士密與巫嫗謀,因婦眠,士以繩係羊,緣牆走避。婦覺,牽繩而羊至,大驚,召問巫。巫曰:「先人怪娘積惡,故郎君變羊,能悔,可祈請。」婦因抱羊痛哭悔誓,巫乃令七日齋。舉家大小悉詣神前祈祝,士徐徐還,婦見,泣曰:「多日作羊,不辛苦耶?」士曰:「猶憶瞰草不美,時作腹痛。」婦愈悲哀,後略復妒,士即伏地作羊鳴,婦驚起,永謝不敢。
新字:《芸文類聚》:京邑士人婦大妬,嘗以長縄係夫脚,喚便牽縄。士密与巫嫗謀,因婦眠,士以縄係羊,縁牆走避。婦覚,牽縄而羊至,大驚,召問巫。巫曰:「先人怪娘積悪,故郎君変羊,能悔,可祈請。」婦因抱羊痛哭悔誓,巫乃令七日斎。舉家大小悉詣神前祈祝,士徐徐還,婦見,泣曰:「多日作羊,不辛苦耶?」士曰:「猶憶瞰草不美,時作腹痛。」婦愈悲哀,後略復妬,士即伏地作羊鳴,婦驚起,永謝不敢。
書き下し
《芸文類聚》に、京邑の士人の婦は大いに妒む、嘗て長縄を以て夫の脚に係け、喚べば便ち縄を牽く。士は密かに巫嫗と謀り、婦の眠るに因りて、士は縄を以て羊に係け、牆に縁りて走り避く。婦は覚めて縄を牽けば羊至る、大いに驚き、召して巫に問う。巫曰く、「先人は娘の積悪を怪み、故に郎君は羊に変ず、能く悔ゆれば、祈請すべし」と。婦は因りて羊を抱きて痛哭悔誓し、巫は乃ち七日の斎をせしむ。挙家の大小は悉く神前に詣りて祈祝す、士は徐徐として還る、婦は見て泣きて曰く、「多日羊と作り、辛苦せざりしか」と。士曰く、「猶お憶う草を瞰むこと美からず、時に腹痛を作せしを」と。婦は愈いよ悲哀す、後に略ぼ復た妒む、士は即ち地に伏して羊鳴を作す、婦は驚き起ち、永く謝して敢えてせず。
現代語訳
『芸文類聚』にこうある。都の士人の妻はひどく嫉妬深く、長い縄で夫の足をつなぎ、呼びたいときはその縄を引いた。士人はひそかに巫女の老婆と相談し、妻が眠った隙に、縄を羊につなぎ、垣根をつたって逃げ出した。妻は目を覚まして縄を引くと羊が来たので、たいへん驚き、巫女を呼んで尋ねた。巫女は言った。「ご先祖があなたの積み重ねた悪を怪しんで、ご主人は羊に変えられたのです。悔い改めれば、お祈りすることができます。」妻は羊を抱いて激しく泣き、悔い改めを誓い、巫女は七日間の斎戒をさせた。家中の者が大小みな神前に出て祈りを捧げた。士人はそのうちゆっくりと戻って来た。妻は見て泣いて言った。「何日も羊でいて、辛くはなかったですか。」士人は言った。「草を食べたが美味しくなく、ときどき腹痛がしたのをまだ覚えている。」妻はますます悲しんだ。のちにまた少し嫉妬すると、士人はすぐに地にうつ伏せになって羊の鳴き声をまねた。妻は驚いて起き上がり、永く詫びて二度としなかった。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『智囊』集哲・樂羊子妻楽羊子嘗て行路に遺金一餅を拾い、還りて以て妻に語る。妻曰く、「志士は盗泉の水を飲まず、廉士は嗟来の食を食わず。況んや遺金を拾うをや」と。羊子大いに慚じ、即ち之を野に捐つ。楽羊子遊学して、一年にして帰る。妻故を問う。羊子曰く、「久客して思いを懐くのみ」と。妻乃ち刀を引きて機に趨りて言う、「此の織るは一糸より累ねて寸となり、寸より累ねて丈となり、丈より累ねて匹となる。今若し斯の機を断たば、則ち前功尽く捐てられん。学を半途に廃するは、何ぞ是に異ならん」と。羊子其の言に感じ、還りて業を卒え、七年返らず。楽羊子遊学するとき、其の妻は勤めて作し以て姑を養う。嘗て他舎の鶏謬りて園に入る有り、姑殺して之を烹る。妻は鶏に対して餐せずして泣く。姑怪しみて故を問う。対えて曰く、「自ら貧しくして物を備うる能わず、食に他の肉有らしむるを傷むのみ」と。姑遂に棄て去りて食わず。〔評〕遺金を返さしむれば、則ち妻は益友たり。業を卒えしむれば、則ち妻は厳師たり。姑を道に諭し、夫の徳を成せば、則ち妻は又た大賢孝婦なり。
-
『智囊』雄略・鄒僕妻梁の末、襄州都軍務の鄒景温は職を徐に移され、また都軍の務めを管した。勁僕があり、拳勇を自ら恃み、独り妻と驢を策いて行き、芒、碭の澤の間に至って、大声で言った、「聞く、ここは素より豪客が多いと。どうして一人として吾が曹と勝負を決する者がいないのか。」言い畢ると、五六人の盗が叢薄の間より躍り出た。一人の夫が後ろより双手で交抱し、搏って之を仆し、短刃を抽いて以てその喉を断った。蓋し其の不備を掩ったのである。ただ妻が側にあり、殊に惶駭せず、ただ矯って大呼して言った、「快いかな、今日方に吾が恥を雪いだ。吾は良家の子で、其の俘掠に遭って、ここに致った。誰が神明がないと言うか。」賊は其の誠と謂って殺さず、行李と二驢とともに、驅って南に邁き、五六十里に近づき、亳の北界の達孤荘の南に至って息んだ。荘の門に器甲があり、蓋し近戍の巡警の卒である。この婦は遂に径ちに村人の中堂に入った。盗もまた其の食を謀ると謂って疑わなかった。そこで其の総首に泣いて拝し、且つ其の夫が屠られた状を告げた。総首は潜かに其の徒を召し、一時に執縛した。ただ一盗だけが逸れた。械して亳城に送り、咸な棄市された。婦は襄陽に返り、尼となって終えた。
-
『智囊』雄略・邑宰妾万暦中、政務寛緩にして、刑部の囚人の老いて死する者多し。某は郷科にして、北人なり、邑宰と為り、事に坐して詔獄に入る。久しくして雪ぐを得ず、且つ老いたり。己は必ず死せんと分し、而して子無きを自ら傷み、乃ち尽く其の産を鬻ぎ、一室を近き処に営み、愛する所の妾を置き、典獄者に厚く賂して、陰かに出入す。姪有り、頗る不肖にして、稍や其の資を窃み、博場の中に入り、邏者の疑う所と為り、之を窮詰するに、因りて尽く吐く。且つ云う、「家に一青騾子有り、叔の行くには必ず之に乗る。事無ければ則ち出でて賃す。請う騾を以て験と為せ」と。邏者は数日伺うに、果たして其の言の如し。宰は方に妾と中堂に対食するに、群邏至り、驚きて箸を失う。妾は遽かに起ちて迎えて曰く、「翁は胆薄し、相迫る毋かれ。爾が曹、翁と隙有るか」と。曰く、「之無し」と。曰く、「若し然らば、金を多く得んと欲するに過ぎざるのみ。金は我が掌に属す。第だ我に随いて行け。当に以て汝を飽かしむべし」と。邏者は婦人の貌美にして言の甘きを顧み、乃ち一人を留めて宰を守視せしめ、而して群れて妾に尾いて房に入る。妾は臥す所の牀を指して曰く、「金は其の顛に在り」と。小梯を携えて登れば、衆は下より之を謔る。殊に怒らず、笑声外に達す。須臾にして、一匣を捧げて下れば、之を発くに金多し。妾曰く、「未だなり」と。再び一巨箱を捧げて下れば、大鏹実てり。衆は金を攫み、声愈いよ哄し。
-
『智囊』小慧・陳五京師の閭閻は多く女巫を信ず。武人の陳五なる者有り、其の家の崇信の篤きを厭い、治むる能わず。一日、青李を腮に含み、家人を紿きて瘡の腫痛甚だしと言い、食わずして臥すこと竟日、其の妻は憂うること甚だしく、女巫を召して之を治せしむ。巫は降り、五の患う所は是れ疔瘡と名づく、其の素より神を敬わざるを以て、神は救うを与えずと謂う、家人は羅拝して懇祈し、然る後に之を許す。五は佯り呻吟すること甚だ急にして、家人に語りて云う、「必ず神師の入りて視て我を救うを得て可なり」と。巫は入りて案視す、五は乃ち従容として青李を吐きて之を視す、巫を捽え、其の頰を批ち、之を叱して門外に出だす。此より家人は崇を信ずる者無し。〔評議〕舎利を以て人を取れば、即ち舎利に借りて以て之を取る者有り、神道を以て人を困しめれば、即ち神道を詭いて以て之を困しむる者有り。奸として破れざる無く、偽として窮せざる無し。信なるかな。
-
『智囊』狡黠・竊磬賊・假跛書生・假斷腳偷郷の一老嫗、向に経を誦す。古銅の磬有り。一賊、石塊を以て包を作り、之を負いて媼の門外に至る。人問う、「何物ぞ」と。曰く、「銅磬なり。将に鬻がんとするのみ」と。門に入りて人無きを見て、石を地に棄て、磬を負いて門内に反向して曰く、「磬を買わんと欲するか」と。曰く、「家に自ずから有り」と。賊、磬を包み、復た負いて出づ。内外皆覚らず。閶門に匠有り、肆に金を鑿つ。忽ち一士人、巾服甚だ偉にして、跛曳して来たり、自ら語りて曰く、「暴令は小過を以て我を毒撻す。我必ず之に報いん」と。因りて袖より一大膏薬を出し、炉次に薫じ、将に以て瘡を治せんとする者の若し。其の熔化するを俟ち、急ぎ匠の面孔に糊す。匠、熱を畏れ、手を援きて之を取る。其の人、即ち金を持ちて奔り去る。又一家、門に米袋を集む。忽ち躄者有り、腹を垂るること甚だ大にして、其の足を盤旋して来たり、米袋の上に坐す。衆の共に観るも、何に由るかを知らず。米一袋を胯下に匿し、復た盤旋して去る。後に米を失い、始めて之を知る。蓋し其の腹は襯塞して成り、而して躄も亦た偽りなり。
-
『智囊』剖疑・張昺県に羊角巫なる者有り、能く人を咒して死せしむ。前令は禍を畏れ、毎に之を優礼す。其の法は、人の年甲を木橛に書し、生羊を取りて糞道に向かいて一たび擊つ。羊僕れて人死す。張昺、之を知りて発せず。一日、老婦の泣訴する有り、巫、其の子を殺す、と。張昺、人を遣わして巫を捕えしむ。巫、山に在りて已に覚り、其の徒に謂いて曰く、「張公は正人なり。吾、避くる能わず。吾が命尽きたり」と。乃ち手を束ねて縛に就く。至りて杖たること百数、損なう無く、反って杖つ者の手を傷つく。張昺、其の縛を釈き、之に謂いて曰く、「汝、能く杖つ者を咒して死せしめ、復た之を咒して生かさば、吾、即ち汝を宥さん」と。之を試みて験せず。遂に之を獄に収む。夜半、烈風に石を飛ばし、屋瓦索索として崩るるが若し。張昺、巫の所為なるを知り、起ちて衣冠を正し、香を焚き肃坐す。旦に及び、巫を取りて庭に至らしむ。衆、皆な巫を以て神人と為し、咸な之を釈さんことを請う。張昺、許さず。声を厲しくして巫を叱す。巫、悚懼し、忽ち珠一顆を墮とす。光焔、庭を燭らす。又た法書一帙を墮とす。掌の如く大なり。張昺、僚属を会し、其の書を焚き、其の珠を砕きて問うて曰く、「今、何如せんと欲す」と。巫、答えず、即ち僕れて死す。衆、請いて舁ぎ出さんとす。張昺曰く、「未だし」と。躬ら往きて獄中に瘞め、圧すに巨石を以てす。時に暑月、三日を越えて発き視れば、腐れり。巫の患い、遂に息む。〔馮述評〕巫の術も亦た人の禍福利害の念に乗じて霊なり。張昺は絶えて疑畏無し。故に邪術、自ずから入る能わず。道士に隠形の術を善くし、多く人の婦女を淫する者有り。公、擒えて至らしめ、痛く之を鞭つに、了に苦しむ所無く、已にして其の形も並びに見えず。公、他出に托して、径ちに馳せて其の居に詣り、縛して帰り、印を背に用いて、然る後に之を鞭つ。乃ち声に随って呼嗥し、竟に杖下に死す。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る