智囊 / 狡黠・竊磬賊・假跛書生・假斷腳偷
鄉一老嫗,向誦經,有古銅磬,一賊以石塊作包,負之至媼門外。人問何物,曰:「銅磬,將鬻耳。」入門見無人,棄石於地,負磬反向門內曰:「欲買磬乎?」曰:「家自有。」賊包磬復負而出,內外皆不覺。閶門有匠,鑿金於肆。忽一士人,巾服甚偉,跛曳而來,自語曰:「暴令以小過毒撻我,我必報之!」因袖出一大膏藥,薰於爐次,若將以治瘡者。俟其熔化,急糊匠面孔,匠畏熱,援以手,其人即持金奔去。又一家門集米袋,忽有躄者,垂腹甚大,盤旋其足而來,坐米袋上,眾所共觀,不知何由。匿米一袋於胯下,復盤旋而去。後失米,始知之。蓋其腹襯塞而成,而躄亦偽也。
新字:郷一老嫗,向誦経,有古銅磬,一賊以石塊作包,負之至媼門外。人問何物,曰:「銅磬,将鬻耳。」入門見無人,棄石於地,負磬反向門内曰:「欲買磬乎?」曰:「家自有。」賊包磬復負而出,内外皆不覚。閶門有匠,鑿金於肆。忽一士人,巾服甚偉,跛曳而来,自語曰:「暴令以小過毒撻我,我必報之!」因袖出一大膏薬,薫於炉次,若将以治瘡者。俟其熔化,急糊匠面孔,匠畏熱,援以手,其人即持金奔去。又一家門集米袋,忽有躄者,垂腹甚大,盤旋其足而来,坐米袋上,衆所共観,不知何由。匿米一袋於胯下,復盤旋而去。後失米,始知之。蓋其腹襯塞而成,而躄亦偽也。
書き下し
郷の一老嫗、向に経を誦す。古銅の磬有り。一賊、石塊を以て包を作り、之を負いて媼の門外に至る。人問う、「何物ぞ」と。曰く、「銅磬なり。将に鬻がんとするのみ」と。門に入りて人無きを見て、石を地に棄て、磬を負いて門内に反向して曰く、「磬を買わんと欲するか」と。曰く、「家に自ずから有り」と。賊、磬を包み、復た負いて出づ。内外皆覚らず。閶門に匠有り、肆に金を鑿つ。忽ち一士人、巾服甚だ偉にして、跛曳して来たり、自ら語りて曰く、「暴令は小過を以て我を毒撻す。我必ず之に報いん」と。因りて袖より一大膏薬を出し、炉次に薫じ、将に以て瘡を治せんとする者の若し。其の熔化するを俟ち、急ぎ匠の面孔に糊す。匠、熱を畏れ、手を援きて之を取る。其の人、即ち金を持ちて奔り去る。又一家、門に米袋を集む。忽ち躄者有り、腹を垂るること甚だ大にして、其の足を盤旋して来たり、米袋の上に坐す。衆の共に観るも、何に由るかを知らず。米一袋を胯下に匿し、復た盤旋して去る。後に米を失い、始めて之を知る。蓋し其の腹は襯塞して成り、而して躄も亦た偽りなり。
現代語訳
村のある老婆が、いつも経を唱えていた。古い銅の磬(打楽器)があった。一人の盗賊が石の塊を包みにして背負い、老婆の門の外に来た。人が「何の物か」と尋ねると、「銅の磬だ。売りに行くところだ」と答えた。門に入って人がいないのを見ると、石を地面に捨て、磬を背負って門の内側に向かって言った。「磬を買いませんか」。老婆は言った。「家にもともとあります」。賊は磬を包み、再び背負って出ていった。内も外も誰も気づかなかった。閶門に職人がおり、店で金を打っていた。突然、頭巾と服がたいへん立派な一人の士人が、足を引きずってやって来て、自分に向かって言った。「乱暴な県令が小さな過ちで私をひどく鞭打った。私は必ず仕返ししてやる」。そして袖から大きな膏薬を取り出し、炉のそばであぶって、傷を治そうとするかのような様子をした。それが溶けるのを待って、いきなり職人の顔に塗りつけた。職人は熱さに耐えず、手で顔を押さえてそれを取ろうとした。その男はすぐに金を持って逃げ去った。また、ある家が門の前に米の袋を集めていた。突然、足の不自由な人が現れ、大きく垂れた腹をして、足をひねりながらやって来て、米の袋の上に座った。みなで見ていたが、何が目的か分からなかった。米袋を一つ股の下に隠し、再び足をひねりながら去った。後で米が無くなって、ようやく気がついた。その腹は詰め物で作ったもので、足の不自由さも偽りだった。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『智囊』狡黠・斷腳盜躄盗なる者有り。一足躄にして、善く穿窬す。嘗て夜に二盗に従いて巨姓の家に入る。屋に登り瓦を翻し、二盗をして縄を以て之を下さしむ。資を捜して櫃に入れ、二盗に命じて上に係げ已わらしめ、復た其の櫃を下す。資を入れて之を上す。是くの如くする者三たびす。躄盗自ら度りて曰く、「櫃上らば、彼、我を置き去ること無からんか」と。遂に自ら入りて櫃中に坐す。二盗、之を係げて上す。果たして私語して曰く、「資重し。彼出でなば必ず多く取らん。棄て去るに如かず」と。遂に櫃を持ちて大野の中を行く。一人曰く、「躄盗、善く偷むと称するに、乃ち我ら二人の為に売らる」と。一人曰く、「此の時、将に主人翁に見えんとす」と。相い与に大いに笑い歓喜す。躄盗の乃ち櫃中に在るを知らず。頃くして二盗倦み、道上に坐す。躄盗、将に曙けんとするを度り、又遠舎に人の語笑する有るを聞き、櫃中より大声にて曰く、「盗、我を劫す」と。二盗惶訝して遁れ去る。躄盗、顧みて乃ち金資を得て帰る。何大復「躄盗篇」を作る。
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『智囊』狡黠・江南士子科は嘗て人の為に公事を居間す。其の人は約して公所に物を封ず、正に較量する次、一跛丐有り、右に杖を持ち、左に竹籃を携え、籃内に破衣有り、挨り入りて乞賞す。科は零星を掂りて之に与うるに、丐は少なきを嫌う、科は佯り怒り、元宝一錠を取りて籃中に擲ち、叱して曰く、「汝は此を欲するか」と。丐は悚懼して曰く、「財主は添えざれば則ち已む、何ぞ必ずしも怒らん」と、双手に宝を捧げて几上に置きて去る。後に事諧わず、其の人は封を啓くに、則ち元宝は乃ち偽物にして、向の丐者の為に易え去られたり、丐者は即ち科の党の仮る所なり。〔述〕蘇城は四方輻湊の地、騙局甚だ多し。曾て記す万暦季年、徽人の叔姪の墳を争う事有り、結訟すること数年、其の姪は先に人の郡の司理に通ずる有り、撫台に於いて一詞を准して之を発せんと欲す。忽ち某公子の閶門外に寓する有り、是れ撫公の年姪なりと云い、衣冠甚だ偉に、僕従も亦た都なり。徽姪は往きて拝し、因りて之を邀えて飲む。偶ま此の事を談及するに、公子は一力して承当す。遂に物を封じて質と為し、期に及びて、公子は公服し、訟詞を取りて袖中に納れ、径ちに撫台の門に入る、徽姪は外より之を伺うに、忽ち公事已に畢りて門閉ざされたり、意うに撫公は公子を留めて餐せしめんと。門役に詢うも、俱に知る莫し、乃ち晩衙に、公子は人叢の中より酒容にして出で、意気揚揚として、云う、「撫公の相待つこと頗る厚く、請う所已に諧えり」と。徽の寓に抵り、官封を袖中より出だすに、印識は宛然たり。
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『智囊』狡黠・丹客近年、崑山に一家有り、丹客の欺く所と為り、千金を去る。忿ること甚だしく、乃ち重賞を懸けて之を物色す。数日を逾えて、或いは丹客の東門外の酒肆中に聚飲せるを報ず。覘うに信に然り。賞を索めて去る。主人肆に入るに、丹客歓然として起ち迎う。主人言わんと欲するに、客遽かに之を止めて曰く、「吾が短を揚ぐる勿れ。原物は在り、且つ三杯を飲め。当に璧を還すべし」と。主人喜び、正に劇飲する間、丹客起ちて小便し、間を伺いて逸去す。同席の者に問うに、皆云う、「偶々此に群飲するのみ。初めより相い識らず」と。方に知る、報信の者も亦た其の党にして、来たりて賞銀を騙すのみなるを。
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