智囊 / 小慧・劉貢父
劉貢父為館職。節日,同舍遣人以書筒盛門狀,遍散人家。劉知之,乃呼所遣人坐於別室,犒以酒餚,因取書筒視之,凡與己一面之舊者,盡易以己門狀。其人既飲食,再三致謝,遍走巷陌,實為劉投刺,而主人之刺遂已。〔評〕事雖小,卻是損人利己。
新字:劉貢父為館職。節日,同舎遣人以書筒盛門状,遍散人家。劉知之,乃呼所遣人坐於別室,犒以酒餚,因取書筒視之,凡与己一面之旧者,尽易以己門状。其人既飲食,再三致謝,遍走巷陌,実為劉投刺,而主人之刺遂已。〔評〕事雖小,却是損人利己。
書き下し
劉貢父は館職たり。節日に、同舎は人を遣わして書筒に門状を盛れ、遍く人家に散ぜしむ。劉は之を知り、乃ち遣わす所の人を呼びて別室に坐らしめ、犒うに酒餚を以てし、因りて書筒を取りて之を視る、凡そ己と一面の旧有る者は、尽く易うるに己の門状を以てす。其の人は既に飲食し、再三致謝し、遍く巷陌を走り、実は劉の為に刺を投ず、而して主人の刺は遂に已む。〔評〕事は小なりと雖も、却って是れ人を損じ己を利するなり。
現代語訳
劉貢父は館職に就いていた。祝日に、同僚が人を遣って、書筒に名刺を入れて、方々の家に配らせた。劉はそれを知り、遣わされた使いの者を呼んで別室に座らせ、酒や料理でもてなした。そして書筒を取って中を見て、自分と一度でも面識のある人のところへのものは、すべて自分の名刺に入れ替えた。使いの者は飲み食いし、何度も礼を言って、あちこちの街路を走り回ったが、実は劉のために名刺を届けていた。そして同僚の名刺は、結局届かずに終わった。〔評〕事は小さいが、それは人を損ねて自分を利するものである。
解説
同僚が礼儀のために配らせた名刺を、使いの者をもてなしている間に自分のものにすり替える、いたずらめいた小細工です。馮夢龍は、事は小さいが他人を損なって自分に利するものと断じており、評価は厳しいです。礼儀の場で、自分の存在を印象づけるために、他人の努力を横取りするのは、現代なら成果の横取りにあたります。管理職は、部下の成果を上げる際に、誰の手柄かを明確にしておく必要があり、また、自分の側が小さな横取りに手を染めていないか、見直す機会にもなります。組織の信頼は、こうした些細な不正の積み重ねで損なわれていきます。
この章句が説くこと
書筒門状すり替え信用組織の倫理人を見抜く
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