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智囊 / 小慧・黠豎子

西嶺母有好李,苦窺園者,設阱牆下,置糞穢其中。黠豎子呼類竊李,登垣,陷阱間,穢及其衣領,猶仰首於其曹,曰:「來,此有佳李。」其一人復墜,方發口,黠豎子遽掩其兩唇,呼「來!來!」不已。俄一人又墜,二子相與詬病,黠豎子曰:「假令三子者有一人不墜阱中,其笑我終無已時。」〔評〕小人拖人下渾水,使開口不得,皆用此術,或傳此為唐伯虎事,恐未然。

新字:西嶺母有好李,苦窺園者,設阱牆下,置糞穢其中。黠豎子呼類窃李,登垣,陥阱間,穢及其衣領,猶仰首於其曹,曰:「来,此有佳李。」其一人復墜,方発口,黠豎子遽掩其両唇,呼「来!来!」不已。俄一人又墜,二子相与詬病,黠豎子曰:「仮令三子者有一人不墜阱中,其笑我終無已時。」〔評〕小人拖人下渾水,使開口不得,皆用此術,或伝此為唐伯虎事,恐未然。

書き下し

西嶺の母に好き李有り、園を窺う者に苦しみ、阱を牆下に設け、糞穢を其の中に置く。黠き豎子は類を呼びて李を竊まんとし、垣に登り、阱の間に陥り、穢は其の衣領に及ぶも、猶お首を其の曹に仰ぎて曰く、「来たれ、此に佳き李有り」と。其の一人は復た墜つ、方に口を発せんとするに、黠き豎子は遽かに其の両唇を掩い、「来たれ、来たれ」と呼びて已まず。俄にして一人又た墜つ、二子は相い与に詬病するも、黠き豎子曰く、「仮令え三子の者のうち一人も阱中に墜ちざれば、其の我を笑うこと終に已む無からん」と。〔評〕小人の人を拖いて渾水に下ろし、口を開くを得ざらしむるは、皆な此の術を用う、或いは此を唐伯虎の事と伝うるも、恐らく然らざらん。

現代語訳

西嶺のおばあさんには立派な李があったが、盗みに入る者に悩まされ、塀の下に落とし穴を掘り、その中に糞を入れておいた。悪賢い少年が仲間を呼んで李を盗もうとし、垣根に登って、落とし穴に落ちた。汚物が襟元まで及んだが、それでもなお仲間に向かって顔を上げ、言った。「来いよ、ここにいい李があるぞ。」仲間の一人がまた落ちた。口を開こうとしたとき、悪賢い少年はすぐにその口を両手でふさぎ、「来い、来い」と呼び続けた。やがてもう一人が落ちた。二人は互いにののしり合ったが、悪賢い少年は言った。「もし三人のうち一人でも穴に落ちなかったら、そいつは永遠に俺たちを笑い続けるだろう。」〔評〕小人が人を引きずって濁った水の中に降ろし、口を開けなくさせるのは、みなこの術を使う。この話を唐伯虎のことだとする伝えもあるが、おそらくそうではない。

解説

自分が不利益を被ったとき、仲間も同じ目に遭わせることで、非難の声を封じ、自分の恥を相殺する小人の心理を描いた話です。馮夢龍は、人を濁った水に引き入れて口を開かせない手口を、この術の典型としました。職場でも、不正や失敗に他人を巻き込んで共犯にし、告発を難しくする構図はありえます。管理職は、誰かが自発的に仲間に引き込もうとしている場面に出会ったら、断る勇気と、誘われた立場で声を上げる仕組みを備えておくことが大切です。また、評価を下す側としては、一緒に落ちた人々が、被害者か共犯かを見分ける必要もあります。なお、唐伯虎の話とする伝えには根拠が薄く、確かでありません。

この章句が説くこと

阱黠豎子渾水人を見抜く危機管理組織の倫理

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