智囊 / 狡黠・譎僧
有僧異貌,能絕粒。瓢衲之外,絲粟俱無。坐徽商木筏上,旬日不食不飢。商試之,放其筏中流,又旬日,亦如此。乃相率禮拜,稱為「活佛」,競相供養,曰:「無用供養,我某山寺頭陀,以大殿毀,欲從檀越乞佈施,作無量功德。」因出疏,令各占甲乙畢,仍期某月日入寺相見。及期,眾往詢寺,絕無此僧。殿即毀,亦無乞施者。方與僧駭之,忽見伽藍貌酷似僧,懷中有簿,即前疏,眾詫神異,喜施千金。恐泄語有損功德,戒勿相傳,後乃知始塑像時,因僧異貌,遂肖之,作此伎倆;而不食,乃以乾牛肉臠大數珠數十顆,暗崶之。皆奸僧所為。閿鄉一村僧,見田家牛肥碩,日伺牛在野,置鹽己首,俾牛舔之,久遂閑習。僧一夕至田家,泣告曰:「君牛乃吾父後身,父以夢告我,我欲贖歸。」主驅牛出,牛見僧即舔僧首,主遂以牛與僧。僧歸,殺牛,丸其肉置空竹杖中,又以坐關不食欺人焉。後有孟知縣者,詢僧便溺,始窮其詐。
新字:有僧異貌,能絶粒。瓢衲之外,糸粟倶無。坐徽商木筏上,旬日不食不飢。商試之,放其筏中流,又旬日,亦如此。乃相率礼拝,称為「活仏」,競相供養,曰:「無用供養,我某山寺頭陀,以大殿毀,欲従檀越乞佈施,作無量功徳。」因出疏,令各占甲乙畢,仍期某月日入寺相見。及期,衆往詢寺,絶無此僧。殿即毀,亦無乞施者。方与僧駭之,忽見伽藍貌酷似僧,懐中有簿,即前疏,衆詫神異,喜施千金。恐泄語有損功徳,戒勿相伝,後乃知始塑像時,因僧異貌,遂肖之,作此伎倆;而不食,乃以乾牛肉臠大数珠数十顆,暗崶之。皆奸僧所為。閿郷一村僧,見田家牛肥碩,日伺牛在野,置塩己首,俾牛舔之,久遂閑習。僧一夕至田家,泣告曰:「君牛乃吾父後身,父以夢告我,我欲贖帰。」主駆牛出,牛見僧即舔僧首,主遂以牛与僧。僧帰,殺牛,丸其肉置空竹杖中,又以坐関不食欺人焉。後有孟知県者,詢僧便溺,始窮其詐。
書き下し
僧有り、貌を異にし、能く粒を絶つ。瓢衲の外、絲粟も俱に無し。徽商の木筏に坐し、旬日食わず飢えず。商これを試み、其の筏を中流に放つこと又旬日、亦た此の如し。乃ち相い率いて礼拝し、称して「活仏」と為し、競いて供養す。曰く、「供養を用いる無し。我は某山の寺の頭陀なり。大殿の毀れたるを以て、檀越より布施を乞い、無量の功徳を作さんと欲す」と。因りて疏を出し、各々甲乙を占め畢らしむ。仍りて期するに某月日、寺に入りて相い見えんことを以てす。期に及び、衆往きて寺を詢うに、絶えて此の僧無し。殿は即ち毀れ、亦た乞施する者無し。方に僧と与に之を駭く。忽ち伽藍の貌、酷だ僧に似たるを見る。懐中に簿有り、即ち前の疏なり。衆、神異に詫き、千金を喜施す。語を泄らせば功徳を損なわんことを恐れ、相い伝うる勿れと戒む。後に乃ち知る、始め像を塑せし時、僧の貌の異なるに因りて、遂に之に肖せ、此の伎倆を作せしことを。而して食わざるは、乃ち乾牛肉を臠大の数珠数十顆に暗に封じたるなり。皆奸僧の為す所なり。閿郷の一村僧、田家の牛の肥碩なるを見て、日に牛の野に在るを伺い、塩を己の首に置き、牛をして之を舐めしむ。久しくして遂に閑習す。僧、一夕、田家に至り、泣きて告げて曰く、「君が牛は乃ち吾が父の後身なり。父、夢を以て我に告ぐ。我は贖いて帰らんと欲す」と。主、牛を驅り出だす。牛、僧を見て即ち僧の首を舐む。主、遂に牛を以て僧に与う。僧、帰りて牛を殺し、其の肉を丸めて空竹杖の中に置き、又坐関して食わざるを以て人を欺く。後に孟知縣なる者有り、僧に便溺を詢い、始めて其の詐を窮む。
現代語訳
異様な顔つきの僧がいて、穀物を断つことができた。ひさごと粗末な法衣のほかは、糸一本、粟一粒も持たない。徽州商人の筏に座り、十日間食べずに、飢えなかった。商人が試してみて、その筏を川の中流に流して、さらに十日、やはり同じであった。そこで人々はこぞって拝礼し、「生き仏」と呼んで、競って供養した。僧は言った。「供養は要りません。私はある山の寺の頭陀です。本堂が壊れたので、檀家から布施を乞い、限りない功徳を積みたいのです」。そこで寄進帳を出し、それぞれ割り当てを書き込ませた。そして某月某日に寺で会おうと約束した。その日になって、人々が寺を訪ねたが、そんな僧はいない。本堂はたしかに壊れていたが、布施を乞う者もいなかった。人々が僧と共に驚いていると、突然、護法神の像が顔つきがその僧に酷似しているのを見た。懐の中に帳面があって、前の寄進帳だった。人々は不思議な霊験に驚き、千金を喜んで寄進した。口外すれば功徳が損なわれるのを恐れ、広めないよう戒めた。後で分かったことには、はじめ像を作ったとき、僧の顔つきが変わっていたため、それに似せて作り、この仕掛けにしたのだった。食べなかったのは、干し牛肉を小さく切り、数十個の大きな数珠に隠し入れていたためだった。すべてが悪い僧のしたことである。閿郷のある村の僧は、農家の牛が太って大きいのを見て、毎日牛が野にいるのをうかがい、塩を自分の頭に置いて牛に舐めさせた。長くやるうちに、慣れてしまった。僧はある晩、農家に行き、泣いて告げた。「あなたの牛は、私の父の生まれ変わりです。父が夢で私に告げました。私は買い戻して帰りたいのです」。主人は牛を引き出した。牛は僧を見ると、すぐに僧の頭を舐めた。主人はそこで牛を僧に与えた。僧は帰ると牛を殺し、その肉を丸めて中空の竹の杖の中に置き、またこもって食事をしないことで人をだました。のちに孟という知事が、僧に便や尿のことを尋ね、はじめてその偽りを暴いた。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『智囊』狡黠・鐵牛道人紹興の間、淮堧に一道人有りて求乞す。手に一鉄牛を持ち、高く「鉄牛道人」と呼ぶ。浮光に在ること数月、忽ち一日、富家の典庫に入りて銭を乞う。主人問う、「鉄牛は何の用ぞ」と。曰く、「能く瓜子金を糞す」と。主人、資財を以て之に易えんと欲す。道人堅く肯んぜず。後に議して只だ一宿を賃し、密室に置かしめ、来早に開き視るに、果たして糞する瓜子金数星あり。道人至り、鉄牛を取りて去る。主人の妄想心熾んにして、道人を尋訪し、此の牛を買わんと欲す。道人従わず。百色宛転して方に允す。日に得る金を以て之を計り、一歳の金価を償わんと議す。家に在ること数日、金を糞すること前の如し。未幾にして遂に止む。牛を視るに、尾の後ろに一つの竅有り、他の異無し。忽ち家中の一婢、暴疾あり。其の夫を召して贖い去らしむ。後に人有りて云う、「道人は預め此の婦人を買い、密かに其の金を持ちて其の家に在らしむ。前後の糞金、皆此の婦人の為す所なり」と。急ぎ之を尋ぬるに、已に遁れたり。〔議〕若し能く金を糞せば、尚お銭を乞うを須いんや。其の偽り甚だ明らかなり。而るに竟に貪心に蔽わる。「利は智を昏からしむ」、信なるかな。
-
『智囊』權奇・李抱貞・劉元佐李抱貞、潞州に鎮し、軍資匱闕して、計の出づる所無し。老僧有り、大いに郡人に信服せらる。抱真、因りて之に請いて曰く、「和尚の道を仮りて以て軍中を済わんと欲す、可なるか」と。僧曰く、「不可なる無し」と。抱真曰く、「但だ言え、日を択びて鞠場にて身を焚くと。某、当に便宅に於いて一地道を鑿ち通連し、火の作るを候ち、即ち鑽りて以て相い出でん」と。僧、喜びて之に従う。遂に状を陳べて声言す。抱真、命じて鞠場に薪を積み油を貯え、因りて七日の道場を為し、昼夜に香灯し、梵唄雑ごも作る。抱真も亦た僧を引きて地道を視せしめ、之をして疑わざらしむ。僧、乃ち壇に升り爐を執り、衆に対して説法す。抱真、監軍の僚属及び将吏を率いて其の下に膜拝し、俸入を以て壇に施し、其の旁に堆む。是に由り士女、駢填し、財を舎つること億を計う。七日を計り満ちて、遂に薪を聚めて燄を発し、鍾を撃ち念仏す。抱真、密かに已に人を遣わして地道を填塞せしむ。俄頃にして僧と薪と灰となる。得る所の貨財を籍し、即日、悉く軍資庫に輦入す。別に所謂る舎利を求め、塔を造りて焉に貯う。汴州の相国寺、仏に汗流すと言う。節度使劉玄佐、遽に駕を命じ、自ら金帛を持して以て施す。日中、其の妻も亦た至り、明日、復た斎場を起こす。是に由り将吏商賈、道路に奔走し、唯だ貨を輸すこと及ばざるを恐る。因りて官をして簿を為りて以て入る所を籍せしむ。十日にして、乃ち寺を閉じて曰く、「仏の汗止みぬ」と。銭巨万を得て、以て軍資を贍う。〔評〕仏力に仗らずんば、軍資安くにか出でん。王者、三教を並存す、其れ亦た用うる所有るか。
-
『智囊』詰奸・張駱石晋の魏州冠氏県の華林僧院に、鉄仏の長さ丈余なるもの有り、中心は且つ空なり。一旦「鉄仏は能く語る」と云い、徒衆は称賛し、郷県に聞こえ、士衆は雲集し、施利は填委す。時に高宗は鄴に鎮し、衙将の尚謙に命じて香を齎し斎を設けしめ、且つ其の事を験せしむ。三伝の張駱有り、与に偕に行かんことを請い、暗に県鎮と計り、院僧を遣りて尽く道場に赴かしむ。駱は潜かに僧房を開き、地に穴有るを見、引いて仏座の下に至る。乃ち謙をして仏前に立たしめ、駱は穴より入りて仏の空身の中に由り、厲声して俱に僧の過ちを説き、即ち人を遣りて僧を擒えしむ。其の魁首の数人を取りて上聞し、之を戮す。
-
『智囊』狡黠・竊磬賊・假跛書生・假斷腳偷郷の一老嫗、向に経を誦す。古銅の磬有り。一賊、石塊を以て包を作り、之を負いて媼の門外に至る。人問う、「何物ぞ」と。曰く、「銅磬なり。将に鬻がんとするのみ」と。門に入りて人無きを見て、石を地に棄て、磬を負いて門内に反向して曰く、「磬を買わんと欲するか」と。曰く、「家に自ずから有り」と。賊、磬を包み、復た負いて出づ。内外皆覚らず。閶門に匠有り、肆に金を鑿つ。忽ち一士人、巾服甚だ偉にして、跛曳して来たり、自ら語りて曰く、「暴令は小過を以て我を毒撻す。我必ず之に報いん」と。因りて袖より一大膏薬を出し、炉次に薫じ、将に以て瘡を治せんとする者の若し。其の熔化するを俟ち、急ぎ匠の面孔に糊す。匠、熱を畏れ、手を援きて之を取る。其の人、即ち金を持ちて奔り去る。又一家、門に米袋を集む。忽ち躄者有り、腹を垂るること甚だ大にして、其の足を盤旋して来たり、米袋の上に坐す。衆の共に観るも、何に由るかを知らず。米一袋を胯下に匿し、復た盤旋して去る。後に米を失い、始めて之を知る。蓋し其の腹は襯塞して成り、而して躄も亦た偽りなり。
-
『智囊』狡黠・假皇帝唐の懿宗、屡々微行して寺観に游ぶ。奸民、大安国寺に江淮進奏官の寄する呉綾千匹の院に在るを聞く。是に於いて暗に其の群を集め、内より一人の上の状に肖たる者を選び、上の私行の服を衣せ、多く龍脳の諸香を以て薫襲し、二三の小僕を引き、潜かに寄綾の小院に入る。其の時、丐者の一二人至る有り。仮服の者之に遺りて去る。逡巡して、諸色の丐求の人、跡を接して至り、給すること暇あらず。仮服の者、院僧に謂いて曰く、「院中に何物か有る、之を借るべきや」と。僧未だ諾せざる間に、小僕、眼を僧に擲つ。僧驚駭して曰く、「櫃内に人の綾千匹を寄する有り。唯だ命のままに聴かん」と。是に於いて櫃を啓き、罄して之を給す。小僕、僧に謂いて曰く、「来早に朝門にて相い覓めよ。奏して引き入れて内に入るべし。酬ゆる所は軽からず」と。仮服の者、遂に衛に跨がりて去る。僧は是より経月、内門に訪ぬるも、杳として見る所無し。乃ち群丐は並びに是れ奸党なるを知る。
-
『智囊』剖疑・程顥南山の僧舎に石仏有り。歳ごとに其の首、光を放つと伝え、遠近の男女聚まり観、昼夜雑処す。政を為す者、其の神を畏れ、敢えて禁止する莫し。程顥、始めて至り、其の僧を詰りて曰く、「吾、聞く、石仏は歳ごとに光を現すと。諸れ有りや」と。曰く、「然り」と。戒めて曰く、「復た見るを俟たば、必ず先ず白せ。吾、職事あり、往く能わず。当に其の首を取りて就きて之を観るべし」と。自後、復た光有らず。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る