智囊 / 狡黠・白鐵餘
白鐵餘者,延州嵇胡也。埋一銅佛像於窮谷中柏樹之下,俟草遍生,宣言佛光現,乃集數百人設齋以出聖佛,佯從他所劚之,不得,謂是眾誠未至,不佈施耳。蓋舍者百餘萬,即劚埋處,獲像焉。求見聖佛者日益眾,乃以紺紫緋黃綾為袋數重盛像,觀者去其一重,一回佈施,數百里老少士女就之若狂。遂作亂,自稱「光王軍師」。程務挺討斬之。〔評〕一智也,善用之,即李抱貞、劉玄佐;不善用之,則白鐵餘矣!於智何尤哉?
新字:白鉄余者,延州嵇胡也。埋一銅仏像於窮谷中柏樹之下,俟草遍生,宣言仏光現,乃集数百人設斎以出聖仏,佯従他所劚之,不得,謂是衆誠未至,不佈施耳。蓋舎者百余万,即劚埋処,獲像焉。求見聖仏者日益衆,乃以紺紫緋黄綾為袋数重盛像,観者去其一重,一回佈施,数百里老少士女就之若狂。遂作乱,自称「光王軍師」。程務挺討斬之。〔評〕一智也,善用之,即李抱貞、劉玄佐;不善用之,則白鉄余矣!於智何尤哉?
書き下し
白鉄余なる者は、延州の嵆胡なり。一銅仏像を窮谷の柏樹の下に埋め、草の遍く生ずるを俟ちて、仏光現ると宣言す。乃ち数百人を集め、斎を設けて聖仏を出さんとす。佯りて他所より之を劚るも得ず。謂う、是れ衆の誠至らず、布施せざるのみと。蓋し舎する者は百余万にして、即ち埋めし処を劚り、像を獲たり。聖仏を見んと求むる者は日に益々衆く、乃ち紺・紫・緋・黄の綾を以て袋を為ること数重にして像を盛る。観る者其の一重を去り、一回布施す。数百里の老少士女、之に就くこと狂うが若し。遂に乱を作し、自ら「光王軍師」と称す。程務挺、討ちて之を斬る。〔評〕一智なり。善く之を用うれば、即ち李抱貞・劉玄佐なり。善く用いざれば、則ち白鉄余なり。智に於いて何ぞ尤めん。
現代語訳
白鉄余という者は、延州の稽胡(異民族)であった。銅の仏像を一体、深い谷の柏の木の下に埋め、草が一面に生えるのを待って、仏の光が現れたと宣言した。そこで数百人を集め、斎会を設けて聖なる仏を掘り出そうとした。わざと別の場所を掘ったが出てこない。そして言った。「これは皆の誠意が足りないので、布施をしないからだ」。布施をした者は百万余りに及び、そこで埋めた場所を掘って、像を得た。聖仏を拝みたいと求める者は日ごとに増え、そこで紺、紫、緋、黄の綾を何重にも重ねた袋を作って像を入れた。見る者はその一重を取り去るごとに一回布施をした。数百里の老いも若きも男女も、狂ったようにそこに集まった。ついに反乱を起こし、自ら「光王軍師」と称した。程務挺が討伐して斬った。〔評〕これも一つの智である。うまく用いれば、李抱貞や劉玄佐となる。うまく用いなければ、白鉄余になる。智をとがめてもしかたがない。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『智囊』詰奸・張駱石晋の魏州冠氏県の華林僧院に、鉄仏の長さ丈余なるもの有り、中心は且つ空なり。一旦「鉄仏は能く語る」と云い、徒衆は称賛し、郷県に聞こえ、士衆は雲集し、施利は填委す。時に高宗は鄴に鎮し、衙将の尚謙に命じて香を齎し斎を設けしめ、且つ其の事を験せしむ。三伝の張駱有り、与に偕に行かんことを請い、暗に県鎮と計り、院僧を遣りて尽く道場に赴かしむ。駱は潜かに僧房を開き、地に穴有るを見、引いて仏座の下に至る。乃ち謙をして仏前に立たしめ、駱は穴より入りて仏の空身の中に由り、厲声して俱に僧の過ちを説き、即ち人を遣りて僧を擒えしむ。其の魁首の数人を取りて上聞し、之を戮す。
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『智囊』權奇・李抱貞・劉元佐李抱貞、潞州に鎮し、軍資匱闕して、計の出づる所無し。老僧有り、大いに郡人に信服せらる。抱真、因りて之に請いて曰く、「和尚の道を仮りて以て軍中を済わんと欲す、可なるか」と。僧曰く、「不可なる無し」と。抱真曰く、「但だ言え、日を択びて鞠場にて身を焚くと。某、当に便宅に於いて一地道を鑿ち通連し、火の作るを候ち、即ち鑽りて以て相い出でん」と。僧、喜びて之に従う。遂に状を陳べて声言す。抱真、命じて鞠場に薪を積み油を貯え、因りて七日の道場を為し、昼夜に香灯し、梵唄雑ごも作る。抱真も亦た僧を引きて地道を視せしめ、之をして疑わざらしむ。僧、乃ち壇に升り爐を執り、衆に対して説法す。抱真、監軍の僚属及び将吏を率いて其の下に膜拝し、俸入を以て壇に施し、其の旁に堆む。是に由り士女、駢填し、財を舎つること億を計う。七日を計り満ちて、遂に薪を聚めて燄を発し、鍾を撃ち念仏す。抱真、密かに已に人を遣わして地道を填塞せしむ。俄頃にして僧と薪と灰となる。得る所の貨財を籍し、即日、悉く軍資庫に輦入す。別に所謂る舎利を求め、塔を造りて焉に貯う。汴州の相国寺、仏に汗流すと言う。節度使劉玄佐、遽に駕を命じ、自ら金帛を持して以て施す。日中、其の妻も亦た至り、明日、復た斎場を起こす。是に由り将吏商賈、道路に奔走し、唯だ貨を輸すこと及ばざるを恐る。因りて官をして簿を為りて以て入る所を籍せしむ。十日にして、乃ち寺を閉じて曰く、「仏の汗止みぬ」と。銭巨万を得て、以て軍資を贍う。〔評〕仏力に仗らずんば、軍資安くにか出でん。王者、三教を並存す、其れ亦た用うる所有るか。
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『智囊』狡黠・譎僧僧有り、貌を異にし、能く粒を絶つ。瓢衲の外、絲粟も俱に無し。徽商の木筏に坐し、旬日食わず飢えず。商これを試み、其の筏を中流に放つこと又旬日、亦た此の如し。乃ち相い率いて礼拝し、称して「活仏」と為し、競いて供養す。曰く、「供養を用いる無し。我は某山の寺の頭陀なり。大殿の毀れたるを以て、檀越より布施を乞い、無量の功徳を作さんと欲す」と。因りて疏を出し、各々甲乙を占め畢らしむ。仍りて期するに某月日、寺に入りて相い見えんことを以てす。期に及び、衆往きて寺を詢うに、絶えて此の僧無し。殿は即ち毀れ、亦た乞施する者無し。方に僧と与に之を駭く。忽ち伽藍の貌、酷だ僧に似たるを見る。懐中に簿有り、即ち前の疏なり。衆、神異に詫き、千金を喜施す。語を泄らせば功徳を損なわんことを恐れ、相い伝うる勿れと戒む。後に乃ち知る、始め像を塑せし時、僧の貌の異なるに因りて、遂に之に肖せ、此の伎倆を作せしことを。而して食わざるは、乃ち乾牛肉を臠大の数珠数十顆に暗に封じたるなり。皆奸僧の為す所なり。閿郷の一村僧、田家の牛の肥碩なるを見て、日に牛の野に在るを伺い、塩を己の首に置き、牛をして之を舐めしむ。久しくして遂に閑習す。僧、一夕、田家に至り、泣きて告げて曰く、「君が牛は乃ち吾が父の後身なり。父、夢を以て我に告ぐ。我は贖いて帰らんと欲す」と。主、牛を驅り出だす。牛、僧を見て即ち僧の首を舐む。主、遂に牛を以て僧に与う。僧、帰りて牛を殺し、其の肉を丸めて空竹杖の中に置き、又坐関して食わざるを以て人を欺く。後に孟知縣なる者有り、僧に便溺を詢い、始めて其の詐を窮む。
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『智囊』狡黠・鐵牛道人紹興の間、淮堧に一道人有りて求乞す。手に一鉄牛を持ち、高く「鉄牛道人」と呼ぶ。浮光に在ること数月、忽ち一日、富家の典庫に入りて銭を乞う。主人問う、「鉄牛は何の用ぞ」と。曰く、「能く瓜子金を糞す」と。主人、資財を以て之に易えんと欲す。道人堅く肯んぜず。後に議して只だ一宿を賃し、密室に置かしめ、来早に開き視るに、果たして糞する瓜子金数星あり。道人至り、鉄牛を取りて去る。主人の妄想心熾んにして、道人を尋訪し、此の牛を買わんと欲す。道人従わず。百色宛転して方に允す。日に得る金を以て之を計り、一歳の金価を償わんと議す。家に在ること数日、金を糞すること前の如し。未幾にして遂に止む。牛を視るに、尾の後ろに一つの竅有り、他の異無し。忽ち家中の一婢、暴疾あり。其の夫を召して贖い去らしむ。後に人有りて云う、「道人は預め此の婦人を買い、密かに其の金を持ちて其の家に在らしむ。前後の糞金、皆此の婦人の為す所なり」と。急ぎ之を尋ぬるに、已に遁れたり。〔議〕若し能く金を糞せば、尚お銭を乞うを須いんや。其の偽り甚だ明らかなり。而るに竟に貪心に蔽わる。「利は智を昏からしむ」、信なるかな。
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『智囊』詰奸・慕容彥超慕容彦超、泰寧節度使と為る。聚斂を好む。鎮に在りて常に庫を置きて銭を質す。奸民の偽銀を為りて以て質する者有り、主吏は之を久しくして乃ち覚る。彦超は陰かに主吏に教え、夜に庫垣に穴あけしめ、金帛を尽く他所に徙して盗を以て告げしむ。彦超は即ち市に榜し、民をして自ら質する所を言いて以て償わしむ。是に於て民争い来たりて言い、遂に偽銀を質せし者を得たり。超は罪せず、之を深室に置き、十余人に教えて之を為さしむ。皆な鉄もて質と為し、包むに銀を以てし、「鉄胎銀」と号す。〔馮述評〕偽銀を質せし者を得しは、巧みなり。十余人に教えて之を為さしむるは、是れ自ら奸を為すなり。後周の兵の城を囲むや、超は庫中の銀を出だして軍を労う。軍士嘩ぎて曰く、「此れ鉄胎のみ」と。咸な用を為さず、超は遂に自殺す。此れ小智の身を亡ぼすの戒めと為す可し。
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『智囊』得情・李德裕李徳裕、浙右に鎮す。甘露寺の僧、交代せる常住の什物を訴う。前の主事僧に常住の金若干両を耗用せられたりと。引証する前の数輩は皆な遞相に交領せる文籍分明なり。衆詞は、新たに替を得たる人が隠して之を用いしと指す。且つ云う、「初め上るの時、交領の分両既に明らかなり。交割の日に及んで、其の金を見ず」と。鞫して獄を具え、伏罪昭然たり。未だ破用の所を窮めず。公、其の未だ尽くさざるを疑い、微かに意を以て之を揣るに、僧乃ち冤を訴えて曰く、「積年以来、空しく分両の文書を交せしのみ。其の実は金無きなり。衆は乃ち孤立せるを以て、此に乗じて之を擠さんと欲す」と。公曰く、「此れ知り難からず」と。乃ち兜子数乗を召し、命じて連関の僧人をして事に対せしめ、人を兜子の中に遣り、門は皆な壁に向けて相見えしめず。命じて黄泥を取り、各々下次の金の様を模して交付し、以て証拠に憑らしむ。僧は既に形状を知らず、竟に模成らず。前の数輩は皆な伏罪す。
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