智囊 / 狡黠・皦生光
萬曆間,皦生光以妖書事論死,京都快之。生光才而狡,往往以術制人為利。有縉紳媚一權貴,求得玉杯為壽,偶詢之生光。不三日,生光持杯一雙來售,云:「出自中官家,價可百金,只索五十金。」縉紳欣然鬻之,逾數日,忽有廠校束縛二人噪而來,勢甚急,視之則生光與中官也,生光蹙額言:「前杯本大內物,中官竊出,今事覺不能諱,唯有速還原物,彼此可保無害。」縉紳大窘。杯已餽去,無可償,反求計於生光,生光有難色,久之,乃為料理納賄:「某中官若干,某衙門若干,庶萬一可以彌縫。」縉紳不得已,從之,費幾及千金,後雖知生光狡計,無如何矣。
新字:万暦間,皦生光以妖書事論死,京都快之。生光才而狡,往往以術制人為利。有縉紳媚一権貴,求得玉杯為寿,偶詢之生光。不三日,生光持杯一双来售,云:「出自中官家,価可百金,只索五十金。」縉紳欣然鬻之,逾数日,忽有廠校束縛二人噪而来,勢甚急,視之則生光与中官也,生光蹙額言:「前杯本大内物,中官窃出,今事覚不能諱,唯有速還原物,彼此可保無害。」縉紳大窘。杯已餽去,無可償,反求計於生光,生光有難色,久之,乃為料理納賄:「某中官若干,某衙門若干,庶万一可以弥縫。」縉紳不得已,従之,費幾及千金,後雖知生光狡計,無如何矣。
書き下し
万暦の間、皦生光、妖書の事を以て死を論ぜられ、京都これを快とす。生光は才にして狡、往往にして術を以て人を制して利を為す。縉紳に一権貴に媚びて、玉杯を求め得て寿と為さんとする者有り。偶々これを生光に詢う。三日ならずして、生光は杯一双を持ちて来たり售る。云う、「中官の家より出づ。価は百金なるべきも、只だ五十金を索むるのみ」と。縉紳欣然としてこれを鬻ぐ。数日を逾えて、忽ち廠校の二人を束縛して噪ぎ来たる有り。勢い甚だ急なり。これを視るに、則ち生光と中官なり。生光、額を蹙めて言う、「前の杯は本と大内の物なり。中官竊み出だし、今事覚して諱むこと能わず。唯だ速やかに原物を還す有るのみにして、彼此保つに害無かるべし」と。縉紳大いに窘む。杯は已に餽り去り、償うべき無し。反って計を生光に求む。生光難色有り、久しくして乃ち為に料理納賄す。「某中官は若干、某衙門は若干。庶わくは万一以て弥縫すべし」と。縉紳已むを得ずしてこれに従い、費す所千金に幾し。後に生光の狡計を知ると雖も、如何ともする無し。
現代語訳
万暦年間、皦生光は妖書(怪文書)の件で死刑を宣告され、都の人々は溜飲を下げた。生光は才能があって狡猾で、しばしば術策で人を操って利益を得ていた。ある高官に、有力者にこびようとして、玉の杯を手に入れて贈り物にしたいと考えた者がいた。たまたまこれを生光にたずねた。三日もたたないうちに、生光は一対の杯を持って来て売りつけた。「宦官の家から出たもので、価値は百金ほどですが、五十金だけいただきます」。高官は喜んで買った。数日たって、突然、東廠の役人が二人を縛って大騒ぎでやって来た。ひどく急いでいる様子である。見ると、生光と宦官だった。生光は眉をひそめて言った。「先の杯はもとは宮中の物でした。宦官が盗み出し、今、発覚して隠せなくなりました。ただちに元の物を返すしかありません。そうすれば互いに無事に済みます」。高官は大いに困り果てた。杯はすでに贈ってしまって、償えない。かえって生光に策を求めた。生光は難しい顔をして、しばらくしてから、取り計らうことを引き受け、賄賂の額を示した。「某宦官にはいくら、某役所にはいくら。万一取り繕えるかもしれません」。高官はやむなくこれに従い、費やした額は千金に近かった。のちに生光の策略だったと知ったが、どうすることもできなかった。
解説
この章句が説くこと
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