智囊 / 狡黠・郭純・王燧
東海孝子郭純喪母,每哭則群鳥大集。使檢有實,旌表門閭。復訊,乃是每哭即撒餅於地,群鳥爭來食之。其後數數如此,鳥聞哭聲,莫不競湊,非有靈也。〔評議〕田單妙計,可惜小用。然撒餅亦資冥福,稱孝可矣!河東孝子王燧家貓、犬互乳,其子言之州縣,遂蒙旌表。訊之,乃是貓、犬同時產子,取其子互置窠中,飲其乳慣,遂以為常。〔評〕即使非偽,與孝何干?
新字:東海孝子郭純喪母,毎哭則群鳥大集。使検有実,旌表門閭。復訊,乃是毎哭即撒餅於地,群鳥争来食之。其後数数如此,鳥聞哭声,莫不競湊,非有霊也。〔評議〕田単妙計,可惜小用。然撒餅亦資冥福,称孝可矣!河東孝子王燧家貓、犬互乳,其子言之州県,遂蒙旌表。訊之,乃是貓、犬同時産子,取其子互置窠中,飲其乳慣,遂以為常。〔評〕即使非偽,与孝何干?
書き下し
東海の孝子郭純、母を喪い、哭する毎に則ち群鳥大いに集まる。検せしめて実有り、門閭に旌表す。復た訊ぬるに、乃ち是れ哭する毎に即ち餅を地に撒き、群鳥争い来たりて之を食らうなり。其の後数々此の如し。鳥は哭声を聞き、競い湊まらざる莫し。霊有るに非ざるなり。〔評議〕田単の妙計、惜しむらくは小用なり。然れども餅を撒くも亦た冥福を資く。孝と称すべし。河東の孝子王燧、家の猫・犬互いに乳す。其の子これを州県に言い、遂に旌表を蒙る。これを訊ぬるに、乃ち是れ猫・犬同時に子を産み、其の子を取りて互いに窠中に置き、其の乳を飲むに慣らし、遂に以て常と為せるなり。〔評〕即使し偽に非ずとも、孝と何の与るや。
現代語訳
東海の孝子である郭純は、母を亡くし、声をあげて泣くたびに、鳥の群れが大勢集まった。調べさせたところ事実であったので、門に表彰の旗を立てられた。ところが、あらためて問いただすと、実は泣くたびに地面に餅をまき、鳥たちが争ってそれを食べに来ていたのであった。その後も何度もそうしたので、鳥は泣き声を聞くと、争って集まるようになった。霊妙な力があったわけではない。〔評議〕田単の妙計(火牛の計などのこと)が、惜しいことに小さなことに使われたものである。ただし、餅をまくのも亡き母の冥福を助けることにはなるから、孝と呼んでもよかろう。河東の孝子王燧は、家の猫と犬がたがいに乳を飲ませあった。その子はこれを州県に届け出て、ついに表彰を受けた。調べてみると、猫と犬が同時に子を産み、その子を取り替えて巣に入れ、たがいの乳を飲むのに慣れさせ、そのまま常のこととなったのであった。〔評〕たとえ偽りでなかったとしても、それが孝と何の関係があろうか。
解説
この章句が説くこと
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『翁問答』上卷之本此宝は天に在ては天の道となり、地に在ては地の道となるは、元来名はなき物なれ共、衆生に教へ示さん為めに、昔しの聖人其光景をかたどりて、孝と名付け玉ふ、夫よりこの方愚痴不肖の賤男賤女に至る迄も、其名をば知ると云共、其真実の道理は、老師宿儒知見抜群の人さへ悟り得る事稀なり、然る故に世俗孝は親に事ふる一事となして、浅近の道理なりと思へり、孔子嘆かはしく思召して、万世の盲聾を開かん為めに、孝徳神妙不測広大深遠にして、無始無終の神道を孝経に発明し玉ふ、孝徳の感通を手近く名付け言へば、愛敬の二字に極まれり、愛は懇に親しむ心なり、敬は上をうやまひ下を軽しめ侮らざる義なり、孝は譬へば明なる鏡の如し、向ふ物の形と色とに因て、鏡の中の影は品々かはれ共、明らかに写す鏡の体は同じ者なり、其如く父子君臣の人倫に相交ることは、千々万々品変れ共、愛敬の至徳は通せざる所なし、
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『徂徠先生答問書』卷中一孝行の儀御尋に候。成程聖人の教には孝弟忠信を中庸の徳行と名付け、是を貴賤によらず人たる者の勤め行ふべき事といたし申候。君子の道も、是を土台にいたし不申候得ば、高きにのぼるに楷梯なきがごとくに御座候。舜の契を司徒の官になされ、五倫を教へしめ給ふも、孔子の民に中庸の徳なき事を御なげき被成候も同意にて御座候。孝は父母によくつかへ候事、弟は兄長によくつかへ候事、忠は君につかゆるにても、又たれにても、人のためになし候事をば我身の事のごとくに如在なく身にかけ申候事に候。信と申候は、朋友其外あまねくの人にまじはり申候には言語を慎み偽り違候事なきやうに致し候を申候。是にて父母兄弟君臣朋友の道こもり申候故、五倫と申候も、中庸と申候も、孝弟忠信と申候も、ひとつ事にて御座候。
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『翁問答』上卷之本体充問曰庶人の孝行はいかゞ。師の曰農工商何れも其所作を能勤め怠らず財穀を貯へ、むざと費やさず身持心立能慎み、公儀を恐れて法度に背かず、我身子の事をば第二とし、父母の衣服食物を第一に思ひ入、心力を尽して及ぬきはをも調へて父母の受悦ぶ様にもてなして能く養ふは庶人の孝なり。体充問曰五等の孝の内、只庶人に計り父母を養ふと説給ふは、如何なる故にて候や。師の曰士より上は財乏しからず養ふ事は云ふに及はず、庶人は財乏しくして、充分に心を苦しめ力を尽さゞれば、衣服食物足らざる故に、庶人に計り養ひを説給ふ五等皆其位の内にて第一重き所を取りて、説給ふ道理は皆相通するなり、能く体認すべし。
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論語・為政篇孟武伯孝を問う。子曰く、「父母は唯其の疾(やまい)を之憂う。」
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尚書・君陳王若(かく)のごとく曰く、「君陳よ、惟れ爾令徳にして孝恭なり。惟れ孝にして、兄弟に友に、克く有政に施す。汝に命じて茲の東郊を尹(をさ)めしむ、敬せよや。昔周公万民を師保し、民其の徳を懐く。往きて乃の司を慎み、茲に厥の常に率へ。懋めて周公の訓を昭らかにせば、惟れ民其れ乂まらん。我聞く、曰く、
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『十善法語』巻第五・不綺語戒若或ハ父母カ悪事ニ随順シテ止ヌコトアレハ。此ハ変ト知ヘシ。其時ニハ事ノ軽重。時ノ進不ヲ斟酌スヘキコトシヤ。自心ノ及ハヌ処ハ。智者明師ノ指示ヲ受ルガヨイ。要ヲ取テ云ハ。此孝道。思惟度量シテ別ニムツカシキ一法ヲ造作スルナラス。唯子タル者ノ平生安ンスル処。コレヲ孝ノ道ト云。何故ニ如是ソ。此父母コレ我自性善根ノ開発セル儀シヤ。若業障深キ衆生ハ父母ノ名字タモ聞コトナラヌシヤ。梵網経ニ。若有犯者不得現身発菩提心。乃至二却三却不聞父母三宝名字トアル。余経ニ。夢ニ父母師僧ヲミル。皆福分ノアル処ト云。魚ノ水中ニ游フ如ク。鳥ノ空中ニ飛カ如ク。孝子順孫ノ父母王母ノ膝下ニアル。此ニ同シ。実実ニカクノ如クナラバ。地中ニ金一釜ヲ得ズトモ或ハ冬時筍ヲ得ストモ。孝道全トス。世ニ不孝ノ子アル。或ハ功利名誉ニ蔽ハル。或ハ博奕婬酒ニ蔽ハル。ミナ宿悪深重ノナス所ト知ルヘキシヤ。
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