智囊 / 狡黠・石顯
石顯自知擅權,恐天子一旦入間言,乃時歸誠,取一言為驗,顯嘗使至諸官有所徵發,先白上,曰:「恐漏盡宮門閉,請詔吏開門。」上許之,顯於是故投夜還,稱詔開門入,旦果有人上書,告顯矯詔開宮門者,天子得書,笑以示顯,顯因泣曰:「陛下過私小臣,群下嫉妒,欲陷臣。」上以為然,愈寵信之。
新字:石顕自知擅権,恐天子一旦入間言,乃時帰誠,取一言為験,顕嘗使至諸官有所徴発,先白上,曰:「恐漏尽宮門閉,請詔吏開門。」上許之,顕於是故投夜還,称詔開門入,旦果有人上書,告顕矯詔開宮門者,天子得書,笑以示顕,顕因泣曰:「陛下過私小臣,群下嫉妬,欲陥臣。」上以為然,愈寵信之。
書き下し
石顕、自ら権を擅にするを知り、天子の一旦人の間言を入れんことを恐る。乃ち時に誠を帰し、一言を取りて験と為す。顕、嘗て使して諸官に至り徴発する所有り。先に上に白して曰く、「漏尽きて宮門の閉ざされんことを恐る。請う、詔して吏に門を開かしめよ」と。上これを許す。顕、是に於いて故に夜に投じて還り、詔と称して門を開きて入る。旦に果たして人の上書して、顕の詔を矯めて宮門を開きしを告ぐる者有り。天子書を得て、笑いて以て顕に示す。顕、因りて泣きて曰く、「陛下、小臣を過ぎて私す。群下嫉妬して、臣を陥れんと欲す」と。上以て然りと為し、愈々これを寵信す。
現代語訳
石顕は、自分が権力をほしいままにしていることを自覚しており、天子がいつか人の離間の言葉を聞き入れるのではないかと恐れた。そこで、ときどき誠実さを示して、一つの言葉を証拠として取りつけておいた。顕はあるとき、使者として諸官庁をまわり、物資の徴発をすることになった。出かける前に天子に申し上げた。「帰りが遅れて、漏刻が尽き、宮門が閉まってしまうかもしれません。どうか詔を下して、役人に門を開けさせてください」。天子はこれを許した。顕はそこでわざと夜になってから戻り、詔だと言って門を開けさせて入った。翌朝、はたして、顕が詔を偽って宮門を開けたと告発する上書をする者がいた。天子はその書を受け取ると、笑って顕に見せた。顕はそこで泣いて言った。「陛下が小臣を過分にお引き立てくださるので、下の者たちが妬み、私を陥れようとしているのです」。天子はその通りだと思い、ますます顕を寵愛し信頼した。
解説
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