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智囊 / 狡黠・田嬰・劉瑾

田嬰相齊,人有說王者曰:「終歲之計,王盍以數日之間自聽之?不然,無以知吏之奸邪得失也。」王曰:「善。」田嬰即遽請於王而聽其計。王將聽之矣,田嬰令官具押券鬥石參升之計。王自聽計,計不勝聽。罷食後復坐,不復暮食矣。田嬰復請曰:「群臣所終歲日夜不敢偷怠之事也,王以一夕聽之,則群臣有為勸勉矣。」王曰:「諾。」俄而王已睡矣,吏盡偷刀削其押券升石之計。王終不能聽,於是盡以委嬰。劉瑾欲專權,乃構雜藝於武廟前,候其玩弄,則多取各司章奏請省決,上曰:「吾用爾何為?而一一煩朕耶,宜亟去。」如此者數次,後事無大小,唯意裁決,不復奏。

新字:田嬰相斉,人有説王者曰:「終歳之計,王盍以数日之間自聴之?不然,無以知吏之奸邪得失也。」王曰:「善。」田嬰即遽請於王而聴其計。王将聴之矣,田嬰令官具押券鬥石参升之計。王自聴計,計不勝聴。罷食後復坐,不復暮食矣。田嬰復請曰:「群臣所終歳日夜不敢偸怠之事也,王以一夕聴之,則群臣有為勧勉矣。」王曰:「諾。」俄而王已睡矣,吏尽偸刀削其押券升石之計。王終不能聴,於是尽以委嬰。劉瑾欲専権,乃構雑芸於武廟前,候其玩弄,則多取各司章奏請省決,上曰:「吾用爾何為?而一一煩朕耶,宜亟去。」如此者数次,後事無大小,唯意裁決,不復奏。

書き下し

田嬰、斉に相たり。人に王に説く者有りて曰く、「終歳の計、王は盍ぞ数日の間を以て自ら之を聴かざる。然らずんば、以て吏の奸邪得失を知る無し」と。王曰く、「善し」と。田嬰は即ち遽かに王に請いて其の計を聴かしむ。王は将に之を聴かんとす。田嬰は官をして押券の斗石参升の計を具えしむ。王は自ら計を聴くも、計は聴くに勝えず。食を罷めて後に復た坐し、復た暮れに食せず。田嬰は復た請いて曰く、「群臣の終歳日夜に敢えて偸怠せざる所の事なり。王は一夕を以て之を聴かば、則ち群臣に勧勉する有らん」と。王曰く、「諾」と。俄にして王は已に睡る。吏は尽く刀を偸みて其の押券升石の計を削る。王は終に聴く能わず、是に於いて尽く以て嬰に委ぬ。劉瑾は権を専らにせんと欲し、乃ち雑藝を武廟の前に構え、其の玩弄するを候ち、則ち多く各司の章奏を取りて省決を請う。上曰く、「吾、爾を用いて何をか為さん。而るに一一朕を煩わすか。宜しく亟かに去れ」と。此くの如き者数次、後に事は大小と無く、唯だ意のままに裁決し、復た奏せず。

現代語訳

田嬰は斉の宰相であった。ある人が王に説いて言った。「一年の会計報告を、王はなぜ数日かけて自ら聞かれないのですか。そうしなければ、役人の不正や得失を知ることができません」。王は言った。「よい」。田嬰はすぐに王に願い出て会計報告を聞かせることにした。王が聞こうとすると、田嬰は役人に証文や升、斗、石の細かい計算を用意させた。王は自分で報告を聞いたが、報告は聞ききれないほど多かった。食事を終えてから再び席に着き、夕食もとらなかった。田嬰は再び願い出て言った。「これは群臣が一年中昼夜を問わず、怠けずに励んできた事柄です。王が一晩でこれを聞いてくださるなら、群臣は励まされることでしょう」。王は言った。「承知した」。やがて王はすでに眠ってしまった。役人たちは皆、刀で証文や升石の計算書を削り取って改ざんした。王はついに聞き終えることができず、こうしてすべてを田嬰に任せた。劉瑾は権力を独占したいと思い、そこで遊びや芸事を武宗の前に仕立て、その楽しんでいるときを見計らって、多くの各部局の上奏文を持って来て裁決を求めた。皇帝は言った。「わしがおまえを用いているのは何のためだ。それなのに、いちいちわしを煩わせるのか。早く下がれ」。こういうことが何度かあって、のちには大小を問わず、劉瑾が思いのままに裁決し、もう上奏もしなかった。

解説

田嬰と劉瑾の話は、権力者に細かな実務を処理させ、うんざりさせることで、自然に権限を自分へ移す手法です。王は自分で聞くと言い出しましたが、膨大な情報量に疲れ果て、結局任せてしまいました。ここには、権限を持つ者が実務を手放すとき、実質的な決定権も一緒に失うという構造があります。管理職にとっても、細部まで任せた結果、気づかないうちに部下に実権が移っていないかを意識する必要があります。逆に、委任の範囲と確認すべき要点を最初に決めておくことが、権限移譲を安全に進める鍵になります。

この章句が説くこと

終歳之計押券盍自聴之権限移譲実権委任の範囲

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