智囊 / 武案・韓世忠
世忠與兀術相持於黃天蕩,以海艦進泊金山下。預用鐵綆貫大鉤,授驍健者。明旦,敵舟噪而前,世忠分海舟為兩道,出其背,每縋一綆,則拽一舟沉之,兀術窮蹙。〔述〕嘉靖間,倭寇猖獗吳郡,亦有黃天蕩之捷。時賊掠民舟,揚帆過蕩,官軍無敢抗者,鄉民憤甚,斂河泥船數十隻追之,以泥潑其船頭,倭足滑不能立,而舟人皆躡草履,用長腳鑽能及遠,倭覆溺者甚眾。
新字:世忠与兀術相持於黄天蕩,以海艦進泊金山下。預用鉄綆貫大鉤,授驍健者。明旦,敵舟噪而前,世忠分海舟為両道,出其背,毎縋一綆,則拽一舟沈之,兀術窮蹙。〔述〕嘉靖間,倭寇猖獗呉郡,亦有黄天蕩之捷。時賊掠民舟,揚帆過蕩,官軍無敢抗者,郷民憤甚,斂河泥船数十隻追之,以泥溌其船頭,倭足滑不能立,而舟人皆躡草履,用長脚鑽能及遠,倭覆溺者甚衆。
書き下し
世忠、兀朮と黄天蕩に相持す。海艦を以て進みて金山の下に泊す。預め鉄綆を用いて大鉤を貫き、驍健なる者に授く。明旦、敵舟噪ぎて前む。世忠、海舟を分かちて両道と為し、其の背に出ず。一綆を縋す毎に、則ち一舟を拽きて之を沈む。兀朮窮蹙す。〔述〕嘉靖の間、倭寇、呉郡に猖獗す。亦た黄天蕩の捷有り。時に賊、民舟を掠め、帆を揚げて蕩を過ぐ。官軍敢えて抗する無し。郷民憤ること甚だしく、河泥船数十隻を斂めて之を追う。泥を以て其の船頭に潑ぎ、倭足滑りて立つ能わず。而して舟人は皆な草履を躡み、長脚鑽を用いて遠きに及ぶ能う。倭の覆溺する者甚だ衆し。
現代語訳
韓世忠は兀朮と黄天蕩でにらみ合った。海の大船で進み、金山の下に停泊した。あらかじめ鉄の綱に大きな鉤を通し、屈強な者に渡しておいた。翌朝、敵の舟が騒ぎながら進んできた。世忠は海舟を二手に分け、敵の背後に出た。綱を一本垂らすたびに、一艘の舟を引き寄せて沈めた。兀朮は追い詰められた。〔述〕嘉靖年間、倭寇が呉郡で暴れ回った。ここでも黄天蕩のような勝利があった。当時、賊は民の舟を奪い、帆を揚げて蕩を通り過ぎた。官軍は誰も抵抗しなかった。郷民は大いに憤り、河泥を積んだ舟数十隻を集めて追った。泥を相手の船首に撒き散らすと、倭人は足が滑って立てなかった。舟人は皆、草履を履き、長い柄の鑽を使って遠くまで届かせた。倭寇で転覆して溺れた者は非常に多かった。
解説
この章句が説くこと
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『智囊』詭道・韓世忠金人、劉豫と兵を合わせ、道を分かちて入侵す。時に韓世忠は鎮江に駐し、統制解元をして高郵を守り、金の歩卒を候たしむ。自ら騎兵を提げて大儀に駐し、敵騎に当たる。会々魏良臣を遣わして金に使いせしむ。世忠、炊爨を撤し、良臣を紿きて曰く、「詔有りて移屯して江を守る」と。良臣去るや、世忠即ち馬に上り、軍中に令して曰く、「吾が鞭の向かう所を視よ」と。是に於いて軍を引いて大儀に次し、五陣を勒し、伏を設くること二十余所、鼓を聞かば即ち起こるを約す。良臣、金に至る。孛堇、世忠の師の退くを聞き、即ち兵を引いて江口に至り、大儀を距つること五里。副将撻孛也、鉄騎を擁して五陣の東を過ぐ。世忠、小麾を伝えて鼓を鳴らせば、伏兵四方より起こり、旗の色は金人の旗と雑じり出で、金軍乱る。我が軍迭いに進み、背嵬軍各々長斧を持ち、上は人の胸を揕き、下は馬の足を砍る。敵は甲を披て泥淖に陥り、世忠、勁騎を麾きて之を蹂み、人馬俱に斃る。遂に撻孛也を擒にす。
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『智囊』制勝・韓世忠世忠、鎮江に駐し、金人は劉豫と兵を合わせ、道を分かちて入侵す。帝、手札して世忠に命じ、守備を飭え、進取を図らしむ。辞旨懇切なり。世忠遂に鎮江より師を渡り、統制解元をして高郵を守り、金の歩卒を候たしめ、自ら騎兵を提げて大儀に駐し、敵騎に当たる。木を伐りて柵を為り、自ら帰路を断つ。会々魏良臣を遣わして金に使いせしむるに、世忠炊爨を撤し、良臣を給きて、「詔有りて移屯して江を守る」と言う。良臣疾く馳せて去る。世忠、良臣の已に境を出でしを度り、而して馬に上りて軍中に令して曰く、「吾が鞭の向かう所を視よ」と。是に於いて軍を引いて大儀に至り、五陣を勒し、伏を設くること二十余所、鼓を聞かば即ち起って撃たんと約す。良臣金軍に至るに、金人王師の動息を問う。具さに見る所を以て対う。聶児孛堇、世忠の退くを聞き、喜ぶこと甚だし。兵を引いて江口に至り、大儀を距つること五里。別将の撻孛也、千騎を以て五陣の東を過ぐ。世忠小麾を伝え、鼓を鳴らす。伏兵四もに起こり、旗色は金人の旗と雑じり出づ。金軍乱れ、我が軍迭いに進む。背嵬軍各々長斧を持し、上は人の胸を揕き、下は馬足を斲る。敵は重甲を披り、泥淖に陥る。世忠勁騎を麾いて四面より蹂躪し、人馬倶に斃れ、遂に撻孛也らを擒にす。
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