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智囊 / 武案・張威

張威自行伍充偏裨。其軍行,必若銜枚,寂不聞聲,每戰必克,金人憚之。荊鄂多平野,利騎不利步。威曰:「彼鐵騎一衝,則吾技窮矣。」乃以意創「撒星陣」,分合不常,聞鼓則聚,聞金則散,每騎兵至則聲金,一軍輒分數十族。金人隨分兵,則又趨而聚之,倏忽間分合數變,金人失措,然後縱擊之,以此輒勝。〔注〕威臨陣戰酣,則兩眼皆赤,時號「張紅眼」云。

新字:張威自行伍充偏裨。其軍行,必若銜枚,寂不聞声,毎戦必克,金人憚之。荊鄂多平野,利騎不利歩。威曰:「彼鉄騎一衝,則吾技窮矣。」乃以意創「撒星陣」,分合不常,聞鼓則聚,聞金則散,毎騎兵至則声金,一軍輒分数十族。金人随分兵,則又趨而聚之,倏忽間分合数変,金人失措,然後縦撃之,以此輒勝。〔注〕威臨陣戦酣,則両眼皆赤,時号「張紅眼」云。

書き下し

張威は行伍より偏裨に充てらる。其の軍は行くや、必ず枚を銜むが若く、寂として声を聞かず。戦う毎に必ず克ち、金人之を憚る。荊鄂は平野多く、騎に利ありて歩に利あらず。威曰く、「彼の鉄騎一たび衝かば、則ち吾が技窮まらん」と。乃ち意を以て「撒星陣」を創る。分合常ならず、鼓を聞けば則ち聚まり、金を聞けば則ち散ず。騎兵至る毎に則ち金を声らせば、一軍輒ち数十族に分かる。金人の分兵に随いて、則ち又た趨りて之を聚め、倏忽の間に分合数変す。金人措を失い、然る後に縦ちて之を撃ち、此を以て輒ち勝つ。〔注〕威、陣に臨み戦い酣なれば、則ち両眼皆な赤し。時に号して「張紅眼」と云う。

現代語訳

張威は兵卒から身を起こし、副将となった。その軍の行軍では、必ず枚をくわえているかのように、静まり返って声が聞こえなかった。戦うたびに必ず勝ち、金人は彼を恐れた。荊鄂は平野が多く、騎兵に有利で歩兵に不利である。威は言った。「敵の鉄騎が一度突き当たれば、わが技は尽きる。」そこで自分の考えで「撒星陣」を創った。分かれたり合したりは一定せず、太鼓の音を聞けば集まり、鉦の音を聞けば散る。騎兵が来るたびに鉦を鳴らすと、一軍はたちまち数十の小隊に分かれる。金人が兵を分ければ、また走って集める。わずかの間に分合を何度も変え、金人はなすすべを失った。その後に放って撃ち、この方法でいつも勝った。〔注〕威は陣に臨んで戦いがたけなわになると、両眼がみな赤くなった。当時の人は彼を「張紅眼」と呼んだ。

解説

騎兵の突進を、散って受け流し、集まって打つという変幻自在の動きで無力化した陣法です。張威は、平野では騎兵に歩兵が不利と認めたうえで、集中して受けず、星を撒くように散る発想を取りました。鉦と太鼓の二つの合図だけで分合を統制しており、複雑な動きを単純な合図で成り立たせている点が重要です。また、軍が静かに行軍するという日常の規律が、この動きを可能にしています。管理職にとっても、強い相手に正面から当たらず、分散と集中を使い分けるチームづくりや、合図を簡素にして迅速に動ける仕組みを整えることが参考になります。

この章句が説くこと

銜枚撒星陣聞鼓則聚聞金則散張紅眼組織設計判断

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