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智囊 / 詭道・張巡・種世衡

張巡守睢陽,安慶緒遣尹子奇將勁兵十餘萬來攻。巡厲士固守,日中二十戰,巡欲射子奇而不識,因刻蒿為矢,中者謂巡矢盡,走白子奇,巡乃使南霽雲射之,一發中其左目,子奇乃退。寶元中,党項犯邊。有明珠族首領驍悍,最為邊患。種世衡為將,欲以計擒之,聞其好擊鼓。乃造一馬持戰鼓,以銀裹之。極華煥,密使諜者陽賣之,後乃擇驍卒數百人,戎之曰:「凡見負銀鼓自隨者,並力擒來。」一日,羌酋負鼓而出,遂為世衡所擒。

新字:張巡守睢陽,安慶緒遣尹子奇将勁兵十余万来攻。巡厲士固守,日中二十戦,巡欲射子奇而不識,因刻蒿為矢,中者謂巡矢尽,走白子奇,巡乃使南霽雲射之,一発中其左目,子奇乃退。宝元中,党項犯辺。有明珠族首領驍悍,最為辺患。種世衡為将,欲以計擒之,聞其好撃鼓。乃造一馬持戦鼓,以銀裹之。極華煥,密使諜者陽売之,後乃択驍卒数百人,戎之曰:「凡見負銀鼓自随者,並力擒来。」一日,羌酋負鼓而出,遂為世衡所擒。

書き下し

張巡、睢陽を守る。安慶緒、尹子奇を遣わして勁兵十余万を将いて来り攻めしむ。巡、士を厲まして固く守り、日中に二十戦す。巡、子奇を射んと欲して識らず。因りて蒿を刻んで矢と為す。中る者、巡の矢尽くと謂い、走りて子奇に白す。巡乃ち南霽雲をして之を射しむ。一発して其の左目に中たり、子奇乃ち退く。宝元中、党項、辺を犯す。明珠族の首領あり、驍悍にして、最も辺患たり。種世衡、将と為り、計を以て之を擒にせんと欲す。其の好んで鼓を撃つを聞く。乃ち一馬を造り、戦鼓を持たしめ、銀を以て之を裹み、極めて華煥にし、密かに諜者をして陽りて之を売らしむ。後に乃ち驍卒数百人を択び、戎めて曰く、「凡そ銀鼓を負いて自ら随う者を見ば、並びに力を合わせて擒にして来れ」と。一日、羌酋、鼓を負いて出で、遂に世衡の擒にする所と為る。

現代語訳

張巡が睢陽を守っていたとき、安慶緒は尹子奇に精兵十万あまりを率いさせて攻めさせた。張巡は士卒を励まして固く守り、一日に二十回戦った。張巡は尹子奇を射ようとしたが、顔を知らなかった。そこで蒿(よもぎ)を刻んで矢を作った。それに当たった兵は、張巡の矢が尽きたと思い、走って尹子奇に報告した。張巡はそこで南霽雲に射させた。一発で尹子奇の左目に当たり、尹子奇はようやく退いた。宝元年間、党項が国境を犯した。明珠族の首領は勇猛で荒々しく、最も辺境の悩みの種だった。種世衡は将となり、計略で彼を捕らえようとした。彼が太鼓を打つのを好むと聞いた。そこで一頭の馬の像を造り、戦鼓を持たせ、銀で包み、たいへん華やかに輝かせ、ひそかに間者に売るふりをさせた。後に、勇敢な兵数百人を選び、戒めて言った。「銀の鼓を背負ってついてくる者を見たら、力を合わせて捕らえて来い。」ある日、羌の首領が鼓を背負って現れ、とうとう世衡に捕らえられた。

解説

敵将の顔を知らないという弱みを、偽の矢で補った張巡の機転と、相手の趣味を調べて罠にかけた種世衡の周到さが並んでいます。蒿の矢は、敵兵に尹子奇への報告を走らせるという動きで、標的を自分から名乗らせました。銀の鼓は、相手が欲しがるものを時間をかけて仕込み、持ち主を特定できる目印に変えています。仕事でも、重要な相手に近づくには、その人が何を好み、何に反応するかをよく観察し、自然に接点をつくる準備が効きます。ただし、種世衡の例は相手の欲を利用する策で、現代のビジネスではあくまで誠実な範囲に限るべきです。

この章句が説くこと

刻蒿為矢一発中其左目銀鼓好撃鼓判断観察

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