智囊 / 詭道・韋孝寬・岳飛・種世衡
崧泣允之,世衡乃草野利書,膏蠟致衲衣間,密縫之,仍祝之曰:「此非瀕死不得泄,若泄時,當言:『負恩不能成將軍之事也。』」又以畫龜一幅,棗一蔀遺野利。野利見棗、龜,度必有書,索之,崧目左右,又對「無有」。野利乃封信上元昊,元昊召崧並野利至數百里外,詰問遺書,崧堅執無書,至箠楚極苦,終不說,又數日,私召至其宮,乃令人問之,曰:「不速言,死矣。」崧終不說,乃命曳出斬之,崧乃大號而言曰:「空死,不了將軍事矣,吾負將軍,吾負將軍。」其人急追問之,崧於是褫衲衣,取書進入。移刻,命崧就館,而陰遣愛將假為野利使,使世衡。世衡疑是元昊使,未即相見,只令官屬日即館舍勞問,問及興州左右則詳,至野利所部多不悉。適擒生虜數人,世衡令於隙中密覘之,生虜因言使者姓名,果元昊使。
新字:崧泣允之,世衡乃草野利書,膏蝋致衲衣間,密縫之,仍祝之曰:「此非瀕死不得泄,若泄時,当言:『負恩不能成将軍之事也。』」又以画亀一幅,棗一蔀遺野利。野利見棗、亀,度必有書,索之,崧目左右,又対「無有」。野利乃封信上元昊,元昊召崧並野利至数百里外,詰問遺書,崧堅執無書,至箠楚極苦,終不説,又数日,私召至其宮,乃令人問之,曰:「不速言,死矣。」崧終不説,乃命曳出斬之,崧乃大号而言曰:「空死,不了将軍事矣,吾負将軍,吾負将軍。」其人急追問之,崧於是褫衲衣,取書進入。移刻,命崧就館,而陰遣愛将仮為野利使,使世衡。世衡疑是元昊使,未即相見,只令官属日即館舎労問,問及興州左右則詳,至野利所部多不悉。適擒生虜数人,世衡令於隙中密覘之,生虜因言使者姓名,果元昊使。
書き下し
崧泣きてこれを允く。世衡乃ち野利に書を草し、膏蠟もて衲衣の間に致し、密かにこれを縫う。仍りてこれに祝して曰く、「此れは瀕死に非ずんば泄らすを得ず。若し泄らす時は、当に言うべし、『恩に負き将軍の事を成す能わず』と」と。又、画亀一幅、棗一蔀を以て野利に遺る。野利、棗・亀を見、必ず書有りと度り、これを索む。崧、左右に目し、又「無し」と対う。野利乃ち信を封じて元昊に上す。元昊、崧と野利とを数百里の外に召し、遺書を詰問す。崧堅く執りて書無しと言い、箠楚を至らしめて極めて苦しむも、終に説かず。又数日して、私かに召して其の宮に至らしめ、乃ち人をしてこれに問わしむ、「速やかに言わずんば、死せん」と。崧終に説かず。乃ち命じて曳き出して斬らしむ。崧乃ち大号して言う、「空しく死せば、将軍の事を了せず。吾、将軍に負く、吾、将軍に負く」と。其の人、急ぎ追いてこれを問う。崧是に於いて衲衣を褫ぎ、書を取りて進め入る。移刻、崧に命じて館に就かしめ、而して陰かに愛将を遣わして偽りて野利の使と為し、世衡に使いせしむ。世衡、是れ元昊の使かと疑い、未だ即ち相見えず。只だ官属をして日に即ち館舎に労問せしむ。興州の左右に問い及ぶや則ち詳らかなるも、野利の部する所に至りては悉くせず。適々生虜数人を擒え、世衡、隙中より密かに覘わしむ。生虜因りて使者の姓名を言う。果たして元昊の使なり。
現代語訳
法崧は泣いて承知した。種世衡はそこで野利に宛てた書状を書き、油と蝋で固めて僧衣の間に置き、ひそかに縫い込んだ。そして法崧に「これは死にそうな目にあわない限り漏らしてはいけない。もし漏らす時は、『恩に背き将軍の事を成せませんでした』と言いなさい」と言い含めた。さらに、亀を描いた絵一幅と、棗ひと籠を野利に贈った。野利は棗と亀を見て、必ず書状があると推測し、これを求めた。法崧は左右に目をやり、「ありません」と答えた。野利は封書を作って元昊に上申した。元昊は法崧と野利を数百里離れた場所に呼び、贈られた書状を詰問した。法崧は固く守って書状はないと言い、杖で打たれて極めて苦しんだが、最後まで口を割らなかった。さらに数日して、ひそかに自らの宮殿に呼び、人に尋問させた。「早く言わなければ死ぬぞ」。法崧は最後まで話さなかった。そこで引きずり出して斬るよう命じた。法崧は大声で泣き叫んで言った。「むなしく死んだら、将軍の事を成し遂げられない。私は将軍に背いた、私は将軍に背いた」と。その者は急いで追いかけて尋ねた。法崧はそこで僧衣を脱ぎ、書状を取り出して差し出した。しばらくして、法崧に館に戻るよう命じ、ひそかに愛する将を送って野利の使者に偽らせて種世衡のもとへ使いに出させた。種世衡は元昊の使者ではないかと疑い、すぐには会わなかった。ただ部下に毎日客舎へ見舞いに行かせた。興州周辺の様子を尋ねさせると詳しいが、野利の部下のことになるとはっきりしない。ちょうど捕虜数人を捕らえていたので、種世衡は隙間からひそかにのぞかせた。捕虜は使者の名前を言った。果たして元昊の使者であった。
解説
この章句が説くこと
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