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智囊 / 詭道・祖逖・檀道濟・岳飛

祖逖將韓潛與後趙將桃豹分據陳川故城,相守四旬。逖以布囊盛土,使千餘人運以餽。潛又使數人擔米息於道,豹兵逐之,即棄而走,豹兵久飢,以為逖士眾豐飽,大懼,宵遁。宋檀道濟伐魏,累勝。至歷城,魏以輕騎邀其前後,焚燒谷草。道濟軍食盡,引還。有卒亡降魏,具告之。魏人追之,眾洶懼將潰。道濟夜唱籌量沙,以所餘少米覆其上,及旦,魏兵見之,謂道濟資糧有餘,以降者為妄而斬之,道濟全軍以歸。岳飛奉詔招撫嶺表賊曹成,不從,乃上奏:「群盜力強則肆橫,力屈則就招,不加剿而遽議招,未易也。」遂率兵入。會得成諜者,縛之帳下。飛出帳,調兵食。吏白曰:「糧盡矣,奈何?」飛陽曰:「且反茶陵。」已而顧諜作失意狀,頓足而入。陰令逸之,計諜歸告,成必來追。即下令蓐食,潛趣繞嶺。未明,已逼賊壘。出不意,驚呼曰:「岳家軍至矣!」飛乘之,遂大潰。自是連奪其險隘。賊窮,飛乃曰:「招今可行矣。」〔評〕孫臏強而示之弱,虞詡弱而示之強,祖逖、檀道濟飢而示之飽,岳忠武飽而示之飢。

新字:祖逖将韓潜与後趙将桃豹分拠陳川故城,相守四旬。逖以布嚢盛土,使千余人運以餽。潜又使数人担米息於道,豹兵逐之,即棄而走,豹兵久飢,以為逖士衆豊飽,大懼,宵遁。宋檀道済伐魏,累勝。至歴城,魏以軽騎邀其前後,焚焼谷草。道済軍食尽,引還。有卒亡降魏,具告之。魏人追之,衆洶懼将潰。道済夜唱籌量沙,以所余少米覆其上,及旦,魏兵見之,謂道済資糧有余,以降者為妄而斬之,道済全軍以帰。岳飛奉詔招撫嶺表賊曹成,不従,乃上奏:「群盗力強則肆横,力屈則就招,不加剿而遽議招,未易也。」遂率兵入。会得成諜者,縛之帳下。飛出帳,調兵食。吏白曰:「糧尽矣,奈何?」飛陽曰:「且反茶陵。」已而顧諜作失意状,頓足而入。陰令逸之,計諜帰告,成必来追。即下令蓐食,潜趣繞嶺。未明,已逼賊塁。出不意,驚呼曰:「岳家軍至矣!」飛乗之,遂大潰。自是連奪其険隘。賊窮,飛乃曰:「招今可行矣。」〔評〕孫臏強而示之弱,虞詡弱而示之強,祖逖、檀道済飢而示之飽,岳忠武飽而示之飢。

書き下し

祖逖の将の韓潜、後趙の将の桃豹と、陳川の故城に分拠し、相守ること四旬。逖、布囊に土を盛り、千余人をして運びて以て餽らしむ。潜、又数人をして米を担わしめて道に息ましむ。豹の兵、これを逐えば、即ち棄てて走る。豹の兵、久しく飢えたれば、以て逖の士衆豊飽なりと為し、大いに懼れ、宵に遁る。宋の檀道済、魏を伐ち、累ねて勝つ。歴城に至り、魏、軽騎を以て其の前後を邀え、谷草を焚焼す。道済の軍、食尽き、引き還る。卒の亡げて魏に降る者有り、具さにこれを告ぐ。魏人これを追う。衆は洶懼して将に潰えんとす。道済、夜に籌を唱え沙を量り、余す所の少米を以て其の上を覆う。旦に及び、魏兵これを見、道済の資糧余り有りと謂い、降者を以て妄と為してこれを斬る。道済、全軍もて以て帰る。岳飛、詔を奉じて嶺表の賊曹成を招撫するに、従わず。乃ち上奏す、「群盗は力強ければ則ち肆横し、力屈すれば則ち招に就く。剿を加えずして遽に招を議るは、未だ易からず」と。遂に兵を率いて入る。会々成の諜者を得て、これを帳下に縛す。飛、帳を出でて、兵食を調う。吏、白して曰く、「糧尽きたり。奈何せん」と。飛、陽りて曰く、「且く茶陵に反らん」と。已にして諜を顧みて失意の状を作し、足を頓みて入る。陰かに令してこれを逸し、諜の帰りて告ぐれば、成必ず来たり追わんと計る。即ち令を下して蓐食せしめ、潜かに趣きて嶺を繞る。未だ明けざるに、已に賊の塁に逼る。不意に出で、驚呼して曰く、「岳家軍至れり」と。飛これに乗じ、遂に大いに潰ゆ。是より連りに其の険隘を奪う。賊窮まる。飛乃ち曰く、「招、今行うべし」と。〔評〕孫臏は強くして而してこれに弱を示し、虞詡は弱くして而してこれに強を示し、祖逖・檀道済は飢えて而してこれに飽を示し、岳忠武は飽きて而してこれに飢を示す。

現代語訳

祖逖の将の韓潜は、後趙の将の桃豹と陳川の古い城を分けて占拠し、四十日間にらみ合った。祖逖は布の袋に土を詰め、千人余りに運ばせて食料を送るように見せかけた。韓潜はまた数人に米を担がせて道端で休ませた。桃豹の兵がこれを追うと、米を捨てて逃げた。桃豹の兵は長く飢えていたので、祖逖の兵は豊かに満ち足りていると考え、大いに恐れて、夜に逃げた。宋の檀道済は魏を討ち、勝ちを重ねた。歴城に着くと、魏は軽騎兵で前後をさえぎり、谷の草を焼いた。檀道済の軍は食料が尽き、引き返した。兵士の一人が逃げて魏に降伏し、事情を詳しく告げた。魏軍はこれを追った。兵たちは動揺して崩れそうになった。檀道済は夜に数を数える声をあげて砂を量り、残ったわずかな米をその上にかぶせた。朝になって魏の兵はこれを見て、檀道済の食料にはまだ余裕があると思い、降伏者を偽りの者として斬った。檀道済は全軍を無事に連れ帰った。岳飛は詔を受けて嶺南の賊の曹成を招き降そうとしたが、従わなかった。そこで上奏して、「盗賊の群れは力が強ければ勝手に暴れ、力が尽きれば招きに応じます。討伐を加えずにすぐ招撫を議するのは、なかなか難しいことです」と述べた。そして兵を率いて入った。ちょうど曹成の間者を捕らえたので、陣幕の下に縛りつけた。岳飛は幕を出て、兵糧を調べた。役人が「食料が尽きました。どうしましょう」と告げると、岳飛はいつわって「しばらく茶陵に戻ろう」と言った。それから間者を振り返って失意の様子を作り、足を踏み鳴らして中に入った。ひそかに間者を逃がさせ、間者が帰って告げれば、曹成は必ず追ってくるだろうと見込んだ。すぐに命令を下して寝床で食事をとらせ、ひそかに進んで山を回り込んだ。夜が明けないうちに、すでに賊の砦に迫った。不意に出て、驚いたように「岳家軍が来たぞ」と叫んだ。岳飛は勢いに乗じ、賊は大いに崩れた。これ以後、次々に険しい要所を奪った。賊は行き詰まった。岳飛は「今こそ招撫を行うべきだ」と言った。〔評〕孫臏は強いのに弱さを見せ、虞詡は弱いのに強さを見せ、祖逖と檀道済は飢えているのに満ち足りた様子を見せ、岳忠武(岳飛)は満ち足りているのに飢えた様子を見せた。

解説

馮夢龍の評が、この話を整理しています。強さを弱く見せる、弱さを強く見せる、飢えを満腹に見せる、満腹を飢えに見せる、と相手に誤った印象を与える四つの型です。祖逖と檀道済は、食料不足を隠して敵の戦意を折りました。岳飛は逆に、余裕を見せずに失意を演じて敵を呼び込んでいます。管理職にとっては、実際の状態と相手に見せる状態を、目的に応じて調整するという視点が示唆的です。取引先や社内に向けた発信で、すべてを正直に見せることが常に最善とは限らず、何を見せるかを意識する必要があります。ただし偽りが露見した時の信頼損失も計算に入れるべきでしょう。

この章句が説くこと

布嚢盛土唱籌量沙岳家軍至示弱示強見せ方危機管理

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