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智囊 / 制勝・王守仁

公曰:「不然,彼聞巢破,膽已喪矣,先出銳卒,要其惰歸,一挫其銳,將不戰而潰,所謂『先聲有奪人之氣』也。」乃指授伍文定等方略,先以游兵誘之,復佯北以致之,俟其爭前趨利,然後四面合擊,伏兵並起,又慮城中宗室或內應為變,親慰諭之,出給告示,凡脅從者不問,雖嘗受賊官職,能逃歸者,皆免死,能斬賊徒歸降者,皆給賞,使內外居民及鄉導人等四路傳佈。又分兵攻九江、南康,以絕其援。於是群力並舉,逆首就擒。

新字:公曰:「不然,彼聞巣破,胆已喪矣,先出鋭卒,要其惰帰,一挫其鋭,将不戦而潰,所謂『先声有奪人之気』也。」乃指授伍文定等方略,先以游兵誘之,復佯北以致之,俟其争前趨利,然後四面合撃,伏兵並起,又慮城中宗室或内応為変,親慰諭之,出給告示,凡脅従者不問,雖嘗受賊官職,能逃帰者,皆免死,能斬賊徒帰降者,皆給賞,使内外居民及郷導人等四路伝佈。又分兵攻九江、南康,以絶其援。於是群力並舉,逆首就擒。

書き下し

公曰く、「然らず。彼、巢の破らるるを聞かば、膽已に喪われん。先ず銳卒を出だし、其の惰歸を要し、一たび其の銳を挫かば、將に戰わずして潰えんとす。所謂『先聲は人の氣を奪う有り』なり」と。乃ち伍文定らに方略を指授し、先ず游兵を以て之を誘い、復た佯り北げて以て之を致す。其の爭いて前み利に趨くを俟ち、然る後に四面より合撃し、伏兵並びに起こる。又、城中の宗室の或いは內應して變を為さんことを慮り、親ら之を慰諭し、告示を出給す。「凡そ脅從の者は問わず。賊の官職を受くること有りと雖も、能く逃げ歸る者は皆な死を免ず。能く賊徒を斬りて歸降する者は、皆な賞を給す」と。內外の居民及び鄉導の人等をして四路に傳佈せしむ。又、兵を分かちて九江、南康を攻め、以て其の援を絕つ。是に於いて群力並び舉がり、逆首、擒に就く。

現代語訳

王陽明は言いました。「そうではない。敵は巣を破られたと聞けば、肝をつぶしているはずだ。まず精鋭の兵を出して、その気の緩んだ帰路を待ち受け、一度その鋭さをくじけば、戦わずに崩れるだろう。いわゆる『先に威勢を示せば人の気力を奪う』というものだ」。そこで伍文定らに策略を教え授け、まず遊撃の兵で敵を誘い、さらに負けたふりをして引き寄せました。敵が先を争って利を追うのを待ち、その後四方から一斉に攻撃し、伏兵がいっせいに起こりました。また、城中の皇族が内応して異変を起こすことを心配し、自ら慰め諭し、告示を出しました。「脅されて従った者は問わない。賊から官職を受けたことがあっても、逃げ帰る者は皆死罪を免じる。賊徒を斬って降伏する者には、皆賞を与える」。城内外の住民や道案内の者たちに、四方に伝えて広めさせました。さらに兵を分けて九江と南康を攻め、敵の援軍を断ちました。こうして皆の力がいっせいに挙がり、逆賊の首領は捕らえられました。

解説

王陽明は、守りを固めて援軍を待つという安全策に傾く周囲を抑え、気力を失った敵に追い打ちをかける選択をしました。勝負の流れが自分に向いたときこそ、攻める決断が必要だという判断です。その一方で、城中の宗室の動揺を防ぐため自ら慰撫し、脅されて従った者は罪を問わないと告示し、敵の組織を内側から崩す配慮も怠りません。現代でも、競合に対して優位に立った局面で、守りに入らず攻め切ることと、相手側の従業員や関係者に向けた透明な約束を並行して進めることが、混乱を最小限に抑えつつ勝ちを確実にします。

この章句が説くこと

先声奪人佯北脅従は問わず告示伏兵士気

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