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智囊 / 善言・谷那律・裴度

高宗出獵遇雨,問谷那律曰:「油衣若為不漏。」對曰:「以瓦為之則不漏。」上因此不復出獵。裴度為相時,憲宗將幸東都,大臣切諫,不納。度從容言:「國家建別都,本備巡幸,但自艱難以來,宮闕署屯,百目之區,荒圮弗治,必假歲月完新,然後可行。倉卒無備,有司且得罪。」帝悅曰:「群臣諫朕不及此,如卿言,誠有未便,安用往耶。」因止不行。

新字:高宗出猟遇雨,問谷那律曰:「油衣若為不漏。」対曰:「以瓦為之則不漏。」上因此不復出猟。裴度為相時,憲宗将幸東都,大臣切諫,不納。度従容言:「国家建別都,本備巡幸,但自艱難以来,宮闕署屯,百目之区,荒圮弗治,必仮歳月完新,然後可行。倉卒無備,有司且得罪。」帝悦曰:「群臣諫朕不及此,如卿言,誠有未便,安用往耶。」因止不行。

書き下し

高宗猟に出でて雨に遇う。谷那律に問う、「油衣は若何せば漏れざる」と。対えて曰く、「瓦を以て之を為れば則ち漏れず」と。上此に因りて復た猟に出でず。裴度相たりし時、憲宗将に東都に幸せんとす。大臣切に諫むるも納れず。度従容として言う、「国家別都を建つるは、本巡幸に備うるなり。但だ艱難以来、宮闕署屯、百目の区、荒圮して治まらず。必ず歳月を仮りて完新し、然る後に行くべし。倉卒にして備え無くば、有司且つ罪を得ん」と。帝悦びて曰く、「群臣朕に諫むるも此に及ばず。卿の言の如くんば、誠に未だ便ならざる有り。安んぞ往くを用いんや」と。因りて止めて行かず。

現代語訳

高宗が狩りに出て雨に降られた。谷那律に尋ねた。「油を塗った雨具は、どうすれば漏れないのか」。谷那律は答えた。「瓦で作れば漏れません」。帝はこれを聞いて、もう狩りに出なくなった。裴度が宰相だったとき、憲宗が東都に行幸しようとした。大臣たちが強く諫めたが聞き入れられなかった。裴度は落ち着いて言った。「国家が別都を建てるのは、もともと巡幸に備えるためです。ただ、乱れた世になって以来、宮殿や官庁、軍の駐屯地、百官の役所などは荒れ果てて修復されていません。年月をかけて新しく整えたのちに行くべきです。突然で準備がなければ、担当の役人が罰を受けるでしょう」。帝は喜んで言った。「群臣は朕を諫めたが、ここまで言い及ばなかった。そなたの言うとおり、確かにまだ都合が悪い。なぜ行く必要があろう」。そして取りやめ、行かなかった。

解説

猟に出る高宗は雨具の漏れを案じ、谷那律は「瓦で作れば漏れません」と答えました。瓦の雨具など作れないのだから雨の日の猟は無理だというたとえで、帝は黙って猟をやめています。裴度は、東都へ巡幸したがる憲宗を、大臣たちが強く諫めて失敗したあと、主君の意志を否定せず、宮殿が荒れていて準備が整わず、迎える役人が罰せられるという現実の問題として話して止めました。反対を述べるより、実行条件の不備を示す方が受け入れられます。計画に待ったをかける時の、相手の目的を肯定したうえで条件を詰める姿勢が参考になります。

この章句が説くこと

以瓦為之東都巡幸倉卒無備現実条件諫言代替案

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