智囊 / 敏悟・韓眾
衛中行為中書舍人時,有故舊子弟赴選,投衛論囑。衛欣然許之。駁榜將出,其人忽夢乘驢渡水,蹷墜水中,登岸而靴不沾濕。選人與秘書郎韓眾有舊,訪之。韓被酒半戲曰:「公今年選事不諧矣。據夢,『衛生相負,足下不沾。』」及榜出,果駁放。
新字:衛中行為中書舎人時,有故旧子弟赴選,投衛論囑。衛欣然許之。駁榜将出,其人忽夢乗驢渡水,蹷墜水中,登岸而靴不沾湿。選人与秘書郎韓衆有旧,訪之。韓被酒半戯曰:「公今年選事不諧矣。拠夢,『衛生相負,足下不沾。』」及榜出,果駁放。
書き下し
衛中行、中書舎人たりし時、故旧の子弟、選に赴く有り。衛に投じて論嘱す。衛、欣然として許す。駁榜将に出でんとす。其の人、忽ち夢に驢に乗りて水を渡り、蹷きて水中に墜つ。岸に登れば靴は沾濕せず。選人、秘書郎の韓眾と旧有り。之を訪ぬ。韓、酒を被りて半ば戯れて曰く、「公、今年の選事は諧わず。夢に据れば、「衛、生に相い負き、足下沾わず」なり」と。榜出づるに及び、果たして駁放せらる。
現代語訳
衛中行が中書舎人だったとき、旧知の子弟が官吏の選考を受けに来て、衛に頼み込んだ。衛は快く承知した。ところが合否の発表が出る前、その人は突然、夢で驢馬に乗って水を渡り、つまずいて水中に落ちる夢を見た。岸に上がると靴は濡れていなかった。選考を受けた人は、秘書郎の韓眾と親しかったので、訪ねて話した。韓は酒に酔って半ば冗談で言った。「あなたは今年の選考はうまくいきません。夢によれば、『衛は生に背き、足下は濡れず』(衛が人を生かす恩を負わず、足が濡れない)という意味です」。発表が出ると、案の定、不合格だった。
解説
口利きを約束した人が頼りにならなかったことを、夢の「水に落ちても靴は濡れない」という場面から読み取った話です。韓眾の言葉は半ば冗談ですが、「衛」の字と「負く」の音を結びつけた辛辣な当て推量でした。ここでの教訓は二つあります。ひとつは、口約束の請け合いだけで安心すると、足元をすくわれやすいこと。もうひとつは、頼まれごとを軽い気持ちで引き受けた側にも責任が生まれることです。管理職は部下や知人の依頼を安易に請け負わず、できることとできないことを明確に伝える誠実さを持たなければなりません。
この章句が説くこと
衛中行驢を渡る靴が濡れず駁榜口利き安請け合い
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