智囊 / 敏悟・顧琮
顧琮為補闕,嘗有罪係詔獄,當伏法。琮憂愁,坐而假寐,忽夢見其母下體,琮謂下詳之甚,愈懼,形於顏色,時有善解者,賀曰:「子其免乎,太夫人下體,是足下生路也,重見生路,何吉如之?」明日,門下侍郎薛稷奏刑失人,竟得免,琮後至宰相。
新字:顧琮為補闕,嘗有罪係詔獄,当伏法。琮憂愁,坐而仮寐,忽夢見其母下体,琮謂下詳之甚,愈懼,形於顔色,時有善解者,賀曰:「子其免乎,太夫人下体,是足下生路也,重見生路,何吉如之?」明日,門下侍郎薛稷奏刑失人,竟得免,琮後至宰相。
書き下し
顧琮、補闕と為る。嘗て罪有りて詔獄に係がれ、当に法に伏すべし。琮、憂愁して坐して仮寐す。忽ち夢に其の母の下体を見る。琮、下に之を詳らかにすること甚だしと謂い、愈々懼れ、顔色に形る。時に善く解く者有り、賀して曰く、「子、其れ免れんか。太夫人の下体は、是れ足下の生路なり。重ねて生路を見る、何の吉か之に如かん」と。明日、門下侍郎の薛稷、刑の人を失うを奏す。竟に免るるを得たり。琮、後に宰相に至る。
現代語訳
顧琮は補闕(官名)の職にあった。あるとき罪を得て詔獄につながれ、法によって処刑されることになった。琮は憂え悲しみ、座ったままうとうとして、ふと夢で自分の母の下半身を見た。琮は、あまりにはっきり見えすぎたと思い、いっそう恐れ、顔色に出た。そのとき、夢をよく解く者がいて、祝って言った。「あなたは助かるでしょう。母君の下半身は、あなたが生まれ出た道です。再び生まれ出る道を見たのですから、これ以上の吉はありません」。翌日、門下侍郎の薛稷が、刑の判断に誤りがあると上奏し、ついに助かった。琮はその後、宰相の位にまで至った。
解説
死刑を目前にした人物が見た、きわどい夢を「再び生まれ出る道」と読み直した話です。夢そのものは不吉に感じられますが、解く人は、母の体を生命の入り口として読み替え、希望の形に変えました。翌日に現実で救いが訪れたのは、夢と直接関係はなく、偶然の一致とみるのが自然で、因果は確かではありません。それでも、絶望のさなかにいる人にとって、別の見方の一言が支えになる場面は現実にもあります。管理職も、部下が大きな失敗で追い詰められているとき、評価や責任追及より先に、立て直しの道が残っていることを具体的に示す役割があります。
この章句が説くこと
詔獄生路母の夢顧琮薛稷絶望の中の希望
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