智囊 / 應卒・曹操・孫權
魏武嘗行役,失汲道,軍皆渴,乃令曰:「前有大梅林,饒子甘酸,可以解渴。」士卒聞之,口皆出水,乘此得及前源。濡須之戰,孫權與曹操相持月餘。權嘗乘大船來觀公軍,公軍弓弩亂發,箭著船旁,船偏重,權乃令回船,更一面以受箭,箭均船平。
新字:魏武嘗行役,失汲道,軍皆渇,乃令曰:「前有大梅林,饒子甘酸,可以解渇。」士卒聞之,口皆出水,乗此得及前源。濡須之戦,孫権与曹操相持月余。権嘗乗大船来観公軍,公軍弓弩乱発,箭著船旁,船偏重,権乃令回船,更一面以受箭,箭均船平。
書き下し
魏武、嘗て行役し、汲道を失い、軍みな渇す。乃ち令して曰く、「前に大梅林有り、子甘酸饒かなり、以て渇を解くべし」と。士卒これを聞き、口みな水を出し、この機に乗じて前の源に及ぶを得たり。濡須の戦、孫権、曹操と相持すること月余。権、嘗て大船に乗りて公の軍を観る。公の軍、弓弩乱発し、箭は船の旁に著き、船偏重す。権、乃ち船を回さしめ、更に一面を以て箭を受け、箭均しく船平らかなり。
現代語訳
魏の武帝(曹操)がある遠征で、水の取れる道を見失い、軍はみな喉が渇いた。そこで命令を出して言った。「前方に大きな梅林がある。実が甘酸っぱくたくさんなっているから、渇きをいやせるぞ。」兵士たちはこれを聞いて口の中に唾がわき、その勢いで前方の水源にたどり着けた。濡須の戦いで、孫権は曹操と一か月余り対峙した。孫権はあるとき大船に乗って曹操の軍を見に来た。曹操軍は弓や弩を乱れ撃ちし、矢は船の側面に突き刺さって、船が片側に傾いた。孫権は船の向きを変えさせ、反対側でも矢を受けさせたので、矢が両側に均等に刺さり、船は水平に戻った。
解説
一つは言葉の力で兵の渇きを紛らわせ、もう一つは船の傾きをあえて矢を受けて直す、機転の話です。曹操が梅林を口にした途端、兵士の口に唾が湧いたのは、約束された希望が体を動かす例です。孫権は、傾いた船を棄てるのではなく向きを変えて逆側にも矢を受け、状態を整えました。どちらも、不利な状況を悲観せず、手元の要素で状況を逆転しています。管理職は、士気が落ちた時に事実を覆い隠さずとも、先に希望を示して動かす言葉を持つとよいでしょう。ただし梅林の話は方便であり、実際の水源が見つかる見通しがあってこそ成立します。
この章句が説くこと
望梅止渇大梅林回船受箭濡須之戦士気機転
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