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智囊 / 靈變・王安

神廟雖定儲,而鄭貴妃權譎有寵,東宮不無危疑,侍衛單微,資用多匱,彌縫補救,司禮監王安力為多。福邸出藩,貴妃傾宮畀之。或迎附東宮,勒止最後十箱,舁至宮門。安知之,諫曰:「此非太子之道也。」或曰:「業已舁至,奈何?」安曰:「即舁還之。」更簡箱之類此者十枚,實以器幣而贈之。乃謂妃曰:「適止箱於宮門,欲以仿箱制也。」上及貴妃皆大喜。

新字:神廟雖定儲,而鄭貴妃権譎有寵,東宮不無危疑,侍衛単微,資用多匱,弥縫補救,司礼監王安力為多。福邸出藩,貴妃傾宮畀之。或迎附東宮,勒止最後十箱,舁至宮門。安知之,諫曰:「此非太子之道也。」或曰:「業已舁至,奈何?」安曰:「即舁還之。」更簡箱之類此者十枚,実以器幣而贈之。乃謂妃曰:「適止箱於宮門,欲以仿箱制也。」上及貴妃皆大喜。

書き下し

神廟は儲を定むと雖も、鄭貴妃は権譎にして寵有り、東宮は危疑なきにあらず。侍衛は単微にして、資用は多く匱し。彌縫補救すること、司礼監の王安が力を為すこと多し。福邸の藩に出づるや、貴妃は宮を傾けて之に畀す。或いは東宮に迎附し、最後の十箱を勒止し、舁きて宮門に至らしむ。安は之を知り、諫めて曰く、「此れ太子の道に非ず」と。或ひと曰く、「業已に舁き至れり、奈何せん」と。安曰く、「即ち舁きて之を還せ」と。更に箱の此れに類する者十枚を簡び、実たすに器幣を以てして之を贈る。乃ち妃に謂いて曰く、「適に箱を宮門に止む、箱の制に倣わんと欲するなり」と。上及び貴妃は皆な大いに喜ぶ。

現代語訳

神宗皇帝は皇太子を定めたものの、鄭貴妃は権謀術数に優れて寵愛を受けており、東宮の地位には不安がないわけではなかった。護衛は少なく弱く、資金も不足しがちだった。これを繕い補った者として、司礼監の王安の功が大きい。福王が藩に出るとき、貴妃は宮中の財を傾けて与えた。ある人が東宮にへつらい、最後の十箱を押さえ、担いで宮門まで運ばせた。王安はこれを知り、諫めて言った。「これは太子の取るべき道ではない」。ある人が言った。「すでに担いで運んできてしまった。どうしよう」。王安は言った。「すぐに担いで返せ」。さらに、似た箱を十個選び、器物や織物で満たしてこれを贈った。そして貴妃に言った。「ちょうど箱を宮門で止めたのは、箱の作りを真似したかったのです」。皇帝も貴妃もたいへん喜んだ。

解説

皇太子の側が、貴妃の持ち物を奪ったとなれば、権力争いに火をつけます。王安は、略奪ではなく、箱の様式を真似るために止めただけ、という口実を作り、むしろ似た箱に贈り物を詰めて返しました。敵対する相手の面子を守りつつ、こちらの失点を成果に変える対処です。道徳的に正しいことを主張するだけでなく、相手の感情を損ねない出口を用意する発想が優れています。管理職が自部門の行きすぎを収める際も、相手に責める口実を与えないよう、返礼や理由づけを丁寧に整えることが、関係悪化を防ぐ鍵になります。

この章句が説くこと

十箱此非太子之道倣箱制面子権力闘争後始末

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