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智囊 / 靈變・太史慈

太史慈在郡。會郡與州有隙,曲直未分,以先聞者為善。時州章已去,郡守恐後之,求可使者。慈以選行,晨夜取道到洛陽,詣公車門,則州吏才至,方求通。慈問曰:「君欲通章耶?」吏曰:「然。」「章安在?題署得無誤耶?」因假章看,便裂敗之,吏大呼持慈,慈與語曰:「君不以相與,吾亦無因得敗,禍福等耳,吾不獨受罪,豈若默然俱去?」因與遁還,郡章竟得直。

新字:太史慈在郡。会郡与州有隙,曲直未分,以先聞者為善。時州章已去,郡守恐後之,求可使者。慈以選行,晨夜取道到洛陽,詣公車門,則州吏才至,方求通。慈問曰:「君欲通章耶?」吏曰:「然。」「章安在?題署得無誤耶?」因仮章看,便裂敗之,吏大呼持慈,慈与語曰:「君不以相与,吾亦無因得敗,禍福等耳,吾不独受罪,豈若黙然倶去?」因与遁還,郡章竟得直。

書き下し

太史慈は郡に在り。会々郡と州と隙有り、曲直は未だ分かれず、先に聞する者を以て善と為す。時に州の章は已に去り、郡守は後れんことを恐れ、使うべき者を求む。慈は選ばれて行き、晨夜に道を取りて洛陽に到り、公車門に詣るに、則ち州の吏は才に至り、方に通ぜんことを求む。慈は問いて曰く、「君は章を通ぜんと欲するか」と。吏曰く、「然り」と。「章は安にか在る。題署に誤り無きか」と。因りて章を仮りて看るや、便ち之を裂き敗る。吏は大いに呼びて慈を持す。慈は与に語りて曰く、「君、以て相い与えざれば、吾も亦た因りて敗る無し。禍福は等し。吾は独り罪を受けず、豈に黙して俱に去るに若かんや」と。因りて与に遁れ還り、郡の章は竟に直を得たり。

現代語訳

太史慈は郡に仕えていた。ちょうど郡と州が対立し、どちらが正しいかはまだ決まらず、先に朝廷へ訴えた側が有利になる状況だった。このとき州の上奏文はすでに出発しており、郡守は遅れることを恐れて、使いにふさわしい者を探した。慈が選ばれて出発し、昼夜兼行で洛陽に着き、公車門に行くと、州の役人がちょうど着いたところで、取り次ぎを求めていた。慈は尋ねた。「あなたは上奏文を通したいのですか」。役人は「そうです」と答えた。慈は「その文はどこにありますか。宛名や表題に誤りはないですか」と言い、文書を借りて見るや、すぐに引き裂いた。役人は大声で叫んで慈を捕まえた。慈は役人と話して言った。「あなたが渡してくれなければ、私もこれを破ることはできなかった。だから禍も福も同じだ。私だけが罪を受けるのではなく、黙ってともに去ったほうがよいのではないか」。そこでともに逃げ帰り、郡の上奏文は結局、正しいと認められた。

解説

先に訴えた側が有利という状況で、相手の文書を破るという奇策に出た太史慈ですが、見どころは破った後の処理です。相手を責め立てるのではなく、渡したあなたにも責任がある、二人とも同罪だ、と相手の共犯意識を引き出して、騒ぎを収束させています。倫理的に問題の大きい行動ですが、窮地の中で相手の立場を逆手にとる説得の仕方には学ぶ点があります。ただし現代の職場では、同じ手段は信頼を壊し、不正と見なされます。判断力と大胆さを称えつつも、手段が許されるかは別に問う姿勢が大切です。

この章句が説くこと

裂敗章禍福等耳先聞競争説得倫理

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