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智囊 / 靈變・楊四

天順中,承天門災,閣臣岳正以草詔得罪,降廣東欽州同知。道漷,以母老留閱月,尚書陳汝言素憾正,至是嗾邏者以私事中,逮係詔獄,拷掠備至,謫戍肅州鎮夷所。至涿州,夜宿傳舍,手梏急,氣奔欲死,涿人楊四者素聞正名,為之祈哀,解人不肯,因醉以醇酒,伺其熟睡,謂正曰:「梏有封印,奈何?」正曰:「可燒鏊令熱,以酒噴封紙,就炙之,紙得燥,自然昂起。」楊乃如其言,去釘脫梏,刳其中,復釘而封之。其人既醒,覺有異,楊乃告曰:「業已然,可如何?今奉銀數十兩為壽,不如納之。」正以此得至戍所。

新字:天順中,承天門災,閣臣岳正以草詔得罪,降広東欽州同知。道漷,以母老留閲月,尚書陳汝言素憾正,至是嗾邏者以私事中,逮係詔獄,拷掠備至,謫戍粛州鎮夷所。至涿州,夜宿伝舎,手梏急,気奔欲死,涿人楊四者素聞正名,為之祈哀,解人不肯,因酔以醇酒,伺其熟睡,謂正曰:「梏有封印,奈何?」正曰:「可焼鏊令熱,以酒噴封紙,就炙之,紙得燥,自然昂起。」楊乃如其言,去釘脱梏,刳其中,復釘而封之。其人既醒,覚有異,楊乃告曰:「業已然,可如何?今奉銀数十両為寿,不如納之。」正以此得至戍所。

書き下し

天順中、承天門災あり、閣臣の岳正は詔を草するを以て罪を得て、広東欽州同知に降せらる。漷に道して、母老なるを以て留まること月を閲す。尚書の陳汝言は素より正を憾み、是に至りて邏者を嗾して私事を以て之に中て、逮えて詔獄に係り、拷掠備に至り、粛州鎮夷所に謫戍す。涿州に至り、夜に伝舍に宿す。手梏は急にして、気は奔りて死せんと欲す。涿の人の楊四なる者、素より正の名を聞き、為に哀を祈る。解人は肯んぜず。因りて醉うに醇酒を以てし、其の熟睡を伺い、正に謂いて曰く、「梏に封印有り、奈何せん」と。正曰く、「鏊を焼いて熱くし、酒を以て封紙に噴き、就ち之を炙れば、紙は燥くを得て、自ずから昂起す」と。楊は乃ち其の言の如くす。釘を去りて梏を脱し、其の中を刳り、復た釘して之を封ず。其の人は既に醒め、異有るを覚る。楊は乃ち告げて曰く、「業已に然り。如何すべき。今、銀数十両を奉りて寿と為す。納れんには如かず」と。正は此を以て戍所に至るを得たり。

現代語訳

天順年間、承天門が火災に遭い、閣臣の岳正は詔の草稿を書いたことで罪を得て、広東欽州の同知に左遷された。漷を通ったとき、老いた母がいるために一か月ほど滞在した。尚書の陳汝言は以前から正を恨んでおり、このとき見張りの者をそそのかして私事を理由に咎め、逮捕して詔獄に送り、拷問を加え、粛州の鎮夷所に流罪とした。涿州に着き、夜に宿舎に泊まった。手かせがきつく、息が詰まって死にそうだった。涿州の人の楊四という者が、日頃から正の名を聞いていて、正のためにこの役人たちに哀れみを乞うた。護送の役人は承知しなかった。そこで強い酒を飲ませて酔わせ、ぐっすり眠るのを待って、正に言った。「手かせには封印があります。どうしましょう」。正は言った。「鍋を焼いて熱くし、酒を封の紙に吹きかけて、それを火であぶれば、紙が乾いて自然と浮き上がる」。楊はそのとおりにした。釘を抜いて手かせを外し、中をえぐり、また釘を打って封をした。役人が目覚めて、何か違うと気づいた。楊は事情を話した。「もうやってしまったことだ。どうしますか。今、銀数十両を謝礼に差し上げます。受け取るのが一番です」。正はこれによって流刑地に無事に着くことができた。

解説

不当な迫害を受ける岳正に、名前を慕う一般人の楊四が手を差し伸べ、封印を傷つけずに手かせの内側だけを削る技術で、苦痛を和らげました。役人を酔わせる、封印を熱で扱うなど、細部が緻密で、しかも最終的に賄賂で穏便に収めています。ここから見えるのは、権力者の不当な扱いが現場で小さな抜け道によって緩められるという構図です。管理職にとっては、制度の硬直した運用が人を傷つけるとき、ルールを破らずに実害を減らす工夫が可能かを考えるきっかけになります。また、名前だけで信頼された人の徳の重みも感じさせる話です。

この章句が説くこと

手梏封印醇酒人望運用救済

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