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智囊 / 靈變・徐文貞・王守仁

留都振武軍邀賞投帖,詞甚不遜,眾憂之。徐文貞面諭操江都御史:「出居龍江關,整理江操之兵。萬一有事,即據京城調江兵,杜其入孝陵之路。」且曰:「事不須密,正欲其聞吾意,戒令各自為計。」變遂寢。王公守仁至蒼梧時,諸蠻聞公先聲,皆股栗聽命。而公顧益韜晦,以明年七月至南寧,使人約降蘇受。受陽諾而陰持兩端,擁眾二萬人投降,實來觀釁。公遣門客龍光往諭意,受眾露刃如雪,環之數十里,呼聲震天,光坐胡牀,引蠻跪前,宣朝廷威德與軍門寬厚不殺之意,辭懇聲厲,意態閒暇,光貌清古,鼻多髭,頗類王公。受故嘗物色公貌,竊疑公潛來,咸俯首獻款,誓不敢負。議遂定,然猶以精兵二千自衛,至南寧,投見有日矣。而公所愛指揮王佐、門客岑伯高雅知公無殺蘇受意,使人言蘇受,須納萬金丐命,蘇受大悔,恚言:「督府誑我。且倉卒安得萬金?有反而已。」

新字:留都振武軍邀賞投帖,詞甚不遜,衆憂之。徐文貞面諭操江都御史:「出居竜江関,整理江操之兵。万一有事,即拠京城調江兵,杜其入孝陵之路。」且曰:「事不須密,正欲其聞吾意,戒令各自為計。」変遂寝。王公守仁至蒼梧時,諸蠻聞公先声,皆股栗聴命。而公顧益韜晦,以明年七月至南寧,使人約降蘇受。受陽諾而陰持両端,擁衆二万人投降,実来観釁。公遣門客竜光往諭意,受衆露刃如雪,環之数十里,呼声震天,光坐胡牀,引蠻跪前,宣朝廷威徳与軍門寛厚不殺之意,辞懇声厲,意態閒暇,光貌清古,鼻多髭,頗類王公。受故嘗物色公貌,窃疑公潜来,咸俯首献款,誓不敢負。議遂定,然猶以精兵二千自衛,至南寧,投見有日矣。而公所愛指揮王佐、門客岑伯高雅知公無殺蘇受意,使人言蘇受,須納万金丐命,蘇受大悔,恚言:「督府誑我。且倉卒安得万金?有反而已。」

書き下し

留都の振武軍は賞を邀えて帖を投じ、詞は甚だ不遜なり。衆はこれを憂う。徐文貞は面ずから操江都御史に諭す、「出でて龍江関に居り、江操の兵を整理せよ。万一事有らば、即ち京城に据りて江兵を調え、其の孝陵に入る路を杜げ」と。且つ曰く、「事は密なるを須いず、正に其れをして吾が意を聞かしめ、各々自ら計を為さしめんと欲するなり」と。変は遂に寝む。王公守仁は蒼梧に至るや、諸蛮は公の先声を聞き、皆な股栗して命を聴く。而るに公は顧って益々韜晦し、明年七月を以て南寧に至り、人をして降を蘇受に約せしむ。受は陽り諾して陰かに両端を持し、衆二万人を擁して降り、実は来たりて釁を観る。公は門客の龍光を遣わして往きて意を諭さしむ。受の衆は刃を露わすこと雪の如く、これを環ること数十里、呼声は天を震わす。光は胡牀に坐し、蛮を引きて前に跪かしめ、朝廷の威徳と軍門の寛厚にして殺さざるの意を宣ぶ。辞は懇ろに声は厲しく、意態は閒暇なり。光の貌は清古にして、鼻に髭多く、頗る王公に類す。受は故に嘗て公の貌を物色す。竊かに公の潜かに来れるかと疑い、咸な俯首して款を献じ、誓って敢えて負かずと。議は遂に定まる。然れども猶お精兵二千を以て自衛し、南寧に至り、投見の日有り。而るに公の愛する所の指揮の王佐、門客の岑伯高は、雅く公に蘇受を殺す意なきを知り、人をして蘇受に言わしむ、「須らく万金を納めて命を丐うべし」と。蘇受は大いに悔い、恚りて言う、「督府は我を誑く。且つ倉卒に安んぞ万金を得ん。反する有るのみ」と。

現代語訳

南京の振武軍が褒賞を求めて嘆願書を差し出したが、その文言はたいへん不遜だった。人々はこれを憂えた。徐文貞はみずから操江都御史に言い含めた。「出て龍江関に居て、長江の兵を整えよ。万一事が起きたら、京城に立てこもり、長江の兵を呼び寄せ、孝陵への道を塞げ」。そして言った。「事は密にする必要はない。まさに彼らにこちらの意図を聞かせ、それぞれ自分で考えさせたいのだ」。騒ぎはまもなく収まった。王守仁が蒼梧に着くと、諸蛮は先に評判を聞いて、みな足が震えて命令に従った。しかし守仁はかえって一層才を隠し、翌年七月に南寧に着き、人を遣わして蘇受に降伏を約束させた。受は表向きは承知して、裏では二股をかけ、二万人を率いて降伏したが、実は様子を探りに来たのだった。守仁は門客の龍光を遣わして意向を伝えさせた。受の軍勢は雪のように白刃を露わにし、数十里にわたって取り囲み、叫び声は天を揺るがした。龍光は胡床に座り、蛮人を前に引いてひざまずかせ、朝廷の威光と徳、軍門の寛大で殺さない意向を述べた。言葉は懇ろで声は厳しく、様子はゆったりとしていた。光は顔立ちが清らかで古風、鼻に髭が多く、王公にとてもよく似ていた。受はかねて公の顔を探っており、ひそかに公がお忍びで来たのではと疑い、みな頭を下げて誠意を示し、決して背かないと誓った。話し合いはまとまった。それでも精兵二千を連れて自衛し、南寧まで来て、面会の日が決まった。しかし公の信頼する指揮の王佐、門客の岑伯高は、公が蘇受を殺す気がないことを知っていながら、人を遣わして受に「万金を納めて命乞いをするべきだ」と言わせた。蘇受は大いに悔い、怒って言った。「督府は私をだました。それに急に万金が出せるものか。反乱するしかない」。

解説

ここから二段にわたる長い話の前半です。徐文貞は、あえて計画を隠さず、相手に知らせることで反乱の気勢をそぐという逆の発想を使っています。王守仁の側では、替え玉に近い龍光が、本人らしい落ち着きで蛮人たちを抑えました。威光とは、実際の力だけでなく、相手に与える見え方や評判によっても形づくられます。さらに、内部の者が余計な金の要求を持ち出したことで、せっかくの合意が危うくなる展開は、組織の中の小さな欲や独断が大きな交渉を壊しうることを示します。管理職は交渉の外にいる関係者の動きまで目配りすべきです。

この章句が説くこと

事不須密先声竜光交渉威光内部統制

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