韓非子 / 顯學第五十
夫聖人之治國也、不恃人之為吾善也、而用其不得為非也。
新字:夫聖人之治国也、不恃人之為吾善也、而用其不得為非也。
書き下し
夫れ聖人の國を治むるは、人の吾が為に善なるを恃まずして、而して其の非を為すを得ざるを用うるなり。
現代語訳
聖人が国を治める時は、人々が(道徳心から)善行を行うことを期待するのではなく、人々が不正(非)を働きたくても働けないようにする仕組み(術)を用いる。
解説
すぐれた統治者は、人々が善い心を持って自分に尽くしてくれることをあてにはしません。そうではなく、人々が悪いことをしたくてもできないような仕組みを用いて世を治めるのだと言います。人の良心ややる気だけを頼りにして物事を任せると、思わぬところでほころびが出るものです。会社であれば、社員の良心任せにするのではなく、不正やごまかしがそもそも起こりにくい決まりや仕組みを整えることが大切です。これは家庭でも同じで、子どもの善意だけに頼らず、危ないことができないように環境を整えておく方が確実です。人の上に立つ者は、相手の心構えに期待するよりも、間違いが起こりにくい仕組みそのものを作ることに力を注ぐべきだ、という教えです。
この章句が説くこと
仕組み化内部統制性悪説コンプライアンスガバナンス
関連する章句
-
『韓非子』八説第四十七故に有道の主は、清潔の吏を求めずして、必ず知るの術を務むるなり。・・・是れ境内の事盡く衡石の如くなればなり。
-
『韓非子』外儲說左下第三十三故に明主は、其の我に叛かざるを恃まず、吾が叛く可からざるを恃むなり。...吾が欺く可からざるを恃むなり。
-
『韓非子』五蠹第四十九故に明主の道は、法を一にして智を求めず、術を固くして信を慕わず。故に法敗れずして、群官姦詐無し。
-
『韓非子』守道第二十六法を立つるは・史に備うる所以に非ざるなり、庸主をして能く盗跖を止めしむる所以なり。
-
『韓非子』外儲說左下第三十三陽虎は之を取ることを務め、我は之を守ることを務む。...遂に術を執りて之を御す。陽虎敢て非を為さず。
-
『韓非子』亡徵第十五法禁を簡にして謀慮を務め、封内を荒らして交援を恃む者は、亡ぶ可きなり。