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智囊 / 靈變・晉明帝

王敦將舉兵內向,明帝密知之,乃乘巴賩駿馬微行,至於湖,陰察敦營壘而出。有軍人疑明帝非常人,又敦正晝寢,夢日環其城,驚起曰:「此必黃鬚鮮卑奴來也!」於是使五騎物色追帝。帝亦馳去,見逆旅賣食嫗,以七寶鞭與之,曰:「後有騎來,可以此示。」俄爾追者至,問嫗,嫗曰:「去已遠矣。」因以鞭示之,五騎傳玩,稽留良久,帝遂免。

新字:王敦将舉兵内向,明帝密知之,乃乗巴賩駿馬微行,至於湖,陰察敦営塁而出。有軍人疑明帝非常人,又敦正昼寝,夢日環其城,驚起曰:「此必黄鬚鮮卑奴来也!」於是使五騎物色追帝。帝亦馳去,見逆旅売食嫗,以七宝鞭与之,曰:「後有騎来,可以此示。」俄爾追者至,問嫗,嫗曰:「去已遠矣。」因以鞭示之,五騎伝玩,稽留良久,帝遂免。

書き下し

王敦、将に兵を挙げて内に向かわんとす。明帝、密かに之を知り、乃ち巴賓の駿馬に乗りて微行し、湖に至り、陰かに敦の営塁を察して出づ。軍人に、明帝は非常の人なるかと疑う者有り。又敦は正昼に寝ね、日の其の城を環るを夢み、驚き起ちて曰く、「此れ必ず黄鬚の鮮卑奴来たれるならん」と。是に於て五騎をして物色して帝を追わしむ。帝も亦た馳せ去る。逆旅に食を売る嫗を見、七宝の鞭を以て之に与えて曰く、「後に騎の来る有らば、此れを以て示すべし」と。俄爾にして追う者至り、嫗に問う。嫗曰く、「去ること已に遠し」と。因りて鞭を以て之に示す。五騎伝え玩び、稽留すること良や久しく、帝遂に免るるを得たり。

現代語訳

王敦は兵を挙げて朝廷に向かおうとしていた。明帝はこれをひそかに知り、巴賓産の駿馬に乗って微行し、于湖に行き、ひそかに王敦の軍営を調べて出た。軍人の中に、明帝が尋常の人物ではないのではと疑う者がいた。また王敦は昼間に寝ていて、太陽が城を取り巻く夢を見て、驚き起きて言った。「これはきっと、黄色い鬚の鮮卑の奴が来たのだ」。そこで五騎に捜させて帝を追わせた。帝も馬を駆って去った。旅籠で食物を売る老婆に出会い、七宝の鞭を与えて言った。「後から騎馬の者が来たら、これを見せなさい」。まもなく追っ手が到着し、老婆に尋ねた。老婆は言った。「もうずっと遠くへ行きました」。そこで鞭を見せた。五騎の者たちは、その鞭を代わる代わる手に取って眺め、しばらく足止めされ、帝はこうして逃れることができた。

解説

追われる明帝は、貴重な七宝の鞭を老婆に預け、追っ手が興味を持って足止めされる仕掛けを作りました。逃走中に自分の持ち物を餌にして、相手の注意と時間を奪う発想です。五騎が鞭に気を取られている間に、距離を稼ぎました。経営者や管理職が危機に直面したとき、全力で逃げるだけでなく、相手の関心を別の価値のあるものに向ける手段を持っていると、時間を稼げます。ただし、七宝の鞭のような貴重なものを惜しまず手放せる決断力が前提です。なお、文中の「于湖」は原文の字が「湖」とのみあり、確かでない所があります。

この章句が説くこと

明帝七宝の鞭追っ手足止め時間稼ぎ王敦

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