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智囊 / 權奇・司馬懿・楊行密・孫堅・仇鉞

曹爽擅政,懿謀誅之,懼事泄,乃詐稱疾篤。會河南尹李勝將蒞荊州,來候懿,懿使兩婢侍持衣,指口言渴,婢進粥,粥皆流出沾胸,勝曰:「外間謂公舊風發動耳,何意乃爾?」懿微舉聲言:「君今屈并州,并州近胡,好為之備,吾死在旦夕,恐不復相見,以子師、昭為托。」勝曰:「當忝本州,非并州。」懿故亂其詞曰:「君方到并州。」勝復曰:「忝荊州。」懿曰:「年老意荒,不解君語。」勝退告爽曰:「司馬公屍居餘氣,形神已離,不足復慮。」於是爽遂不設備。尋誅爽。安仁義、朱延壽,皆吳王楊行密將也,延壽又行密朱夫人之弟。淮徐已定,二人頗驕恣,且謀叛,行密思除之。乃陽為目疾,每接延壽使者,必錯亂其所見以示之,行則故觸柱而僕,朱夫人挾之,良久乃蘇,泣曰:「吾業成而喪明,此天廢我也,諸兒皆不足任事,得延壽付之,吾無恨矣。」朱夫人喜,急召延壽。延壽至,行密迎之寢門,刺殺之,即出朱夫人,而執斬仁義。

新字:曹爽擅政,懿謀誅之,懼事泄,乃詐称疾篤。会河南尹李勝将莅荊州,来候懿,懿使両婢侍持衣,指口言渇,婢進粥,粥皆流出沾胸,勝曰:「外間謂公旧風発動耳,何意乃爾?」懿微舉声言:「君今屈并州,并州近胡,好為之備,吾死在旦夕,恐不復相見,以子師、昭為托。」勝曰:「当忝本州,非并州。」懿故乱其詞曰:「君方到并州。」勝復曰:「忝荊州。」懿曰:「年老意荒,不解君語。」勝退告爽曰:「司馬公屍居余気,形神已離,不足復慮。」於是爽遂不設備。尋誅爽。安仁義、朱延寿,皆呉王楊行密将也,延寿又行密朱夫人之弟。淮徐已定,二人頗驕恣,且謀叛,行密思除之。乃陽為目疾,毎接延寿使者,必錯乱其所見以示之,行則故触柱而僕,朱夫人挟之,良久乃蘇,泣曰:「吾業成而喪明,此天廃我也,諸児皆不足任事,得延寿付之,吾無恨矣。」朱夫人喜,急召延寿。延寿至,行密迎之寝門,刺殺之,即出朱夫人,而執斬仁義。

書き下し

曹爽、政を擅にす。懿、これを誅せんと謀り、事の泄るるを懼れ、乃ち詐りて疾篤しと称す。会たま河南尹の李勝、将に荊州に蒞まんとし、来りて懿を候う。懿、両婢をして衣を侍持せしめ、口を指して渇くと言う。婢粥を進むるに、粥皆流れ出でて胸を沾す。勝曰く、「外間は公の旧風発動すと謂うのみ。何ぞ意わん、乃ち爾るとは」と。懿、微かに声を挙げて言う、「君今并州に屈す。并州は胡に近し。好くこれが備えを為せ。吾死すること旦夕に在り。恐らくは復た相見えず。子の師、昭を以て托す」と。勝曰く、「当に本州を忝くすべし。并州に非ず」と。懿、故らにその詞を乱して曰く、「君方に并州に到らんとす」と。勝復た曰く、「荊州を忝くす」と。懿曰く、「年老いて意荒れ、君の語を解せず」と。勝退きて爽に告げて曰く、「司馬公は屍居余気、形神已に離る。復た慮るに足らず」と。是に於て爽遂に備えを設けず。尋いで爽を誅す。安仁義、朱延寿は、皆呉王楊行密の将なり。延寿は又行密の朱夫人の弟なり。淮徐已に定まり、二人頗る驕恣にして、且つ叛かんことを謀る。行密これを除かんと思う。乃ち陽りて目疾を為し、延寿の使者に接する毎に、必ずその見る所を錯乱して以て示す。行くに則ち故らに柱に触れて僕れ、朱夫人これを挟け、良や久しくして乃ち蘇り、泣きて曰く、「吾が業成りて明を喪う。これ天の我を廃するなり。諸児は皆事を任ずるに足らず。延寿を得てこれを付さば、吾恨み無し」と。朱夫人喜び、急ぎ延寿を召す。延寿至り、行密これを寝門に迎え、刺してこれを殺す。即ち朱夫人を出だして、仁義を執えて斬る。

現代語訳

曹爽が政治を独占していた。司馬懿は彼を討とうと謀ったが、事が漏れるのを恐れ、重い病気だとあざむいた。ちょうど河南尹の李勝が荊州に赴任することになり、司馬懿を見舞いに来た。懿は二人の侍女に着物を持たせ、口を指して喉が渇いたと言った。侍女が粥を差し出したが、粥はすべて口からこぼれて胸をぬらした。李勝は言った。「世間では、公の昔の中風が再発したと言っておりますが、これほどとは思いませんでした」。懿はかすかな声で言った。「君は今度、并州へ行くのだな。并州は異民族に近い。よく備えなさい。私は死が朝夕に迫っている。もう会えないだろう。息子の師と昭を頼みたい」。李勝は言った。「私は郷里の荊州に赴任するのです。并州ではありません」。懿はわざと言葉を乱して言った。「君は并州に着くところだな」。李勝はまた言った。「荊州に赴任いたします」。懿は言った。「年老いて頭がぼけて、君の言うことがわからない」。李勝は戻って曹爽に告げた。「司馬公は屍のようで、息があるだけです。魂も形ももう離れています。心配する必要はありません」。こうして曹爽は備えをしなくなった。その後まもなく、曹爽は誅殺された。安仁義と朱延寿は、ともに呉王の楊行密の部将であった。延寿は行密の朱夫人の弟でもあった。淮水・徐州の地が平定されると、二人はたいへん驕り高ぶり、叛こうと謀った。行密はこれを除こうと思った。そこで目の病気を装い、延寿の使者に会うたびに、必ず見間違いをして見せた。歩くときはわざと柱にぶつかって倒れ、朱夫人が抱え起こし、しばらくして意識が戻ったふりをし、泣いて言った。「私の事業が成ったというのに視力を失った。これは天が私を見捨てたのだ。子どもたちは皆、事を任せるには足りない。延寿にこれを任せられれば、私に恨みはない」。朱夫人は喜び、急ぎ延寿を召した。延寿が着くと、行密は寝所の門で迎え、刺し殺した。すぐに朱夫人を外に出し、安仁義を捕らえて斬った。

解説

司馬懿と楊行密は、病気を装って相手の警戒を解き、決定的な一撃を打ちました。司馬懿は粥をこぼし、受け答えをちぐはぐにして、曹爽側の使者に脅威でないと信じ込ませています。行密は目の不自由を装って、野心を持つ義弟を自ら呼び寄せました。共通するのは、弱く見せて相手の判断を誤らせる手です。現代の管理職も、強さを誇示する局面と、力を隠す局面を使い分ける必要があります。とくに大きな勝負の前は、情報を漏らさず、相手の見積もりを甘くさせることが効きます。もっとも、これは欺く技であって、日常の部下との関係に持ち込めば信頼を壊します。使うのは、敵対する相手との勝負に限るべきです。

この章句が説くこと

詐りて疾篤し屍居余気目疾を為す油断弱さの演出先制

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