智囊 / 權奇・吳質
丞相主簿楊修謀立曹植為魏嗣,曹丕患之,以車載廢簏,納吳質,與之謀。修白操,丕懼,告質。質曰:「無害也。」明日復以簏載絹入,修復白之,推驗無人,操由是不疑。〔評〕植之奪嫡,操固疑之;疑植,則其不疑丕也易矣;不然,多猜如操,何一推驗而即止耶?其殺修也,亦以孤植而安丕。而說者謂「黃絹」取忌,「雞肋」誤軍,亦淺之乎論操矣!
新字:丞相主簿楊修謀立曹植為魏嗣,曹丕患之,以車載廃簏,納呉質,与之謀。修白操,丕懼,告質。質曰:「無害也。」明日復以簏載絹入,修復白之,推験無人,操由是不疑。〔評〕植之奪嫡,操固疑之;疑植,則其不疑丕也易矣;不然,多猜如操,何一推験而即止耶?其殺修也,亦以孤植而安丕。而説者謂「黄絹」取忌,「鶏肋」誤軍,亦浅之乎論操矣!
書き下し
丞相主簿の楊修、曹植を立てて魏の嗣と為さんことを謀る。曹丕これを患う。車を以て廃簏を載せ、呉質を納れ、これと謀る。修、操に白す。丕懼れ、質に告ぐ。質曰く、「害無きなり」と。明日、復た車を以て絹を載せて入る。修復たこれを白す。推験するに人無く、操是に由り疑わず。〔評〕植の嫡を奪うこと、操は固よりこれを疑う。植を疑えば、則ち丕を疑わざること易し。然らずんば、猜多き操の如きは、何ぞ一たび推験して即ち止まんや。その修を殺すや、亦た植を孤にして丕を安んずるを以てなり。而るに説く者、「黄絹」忌まれ、「鶏肋」軍を誤ると謂うは、亦た操を論ずること浅きかな。
現代語訳
丞相主簿の楊修は、曹植を立てて魏の後継ぎにしようと画策していた。曹丕はこれを心配した。そこで車に古い竹かごを載せ、その中に呉質を入れて邸に運び入れ、ともに謀った。楊修はこれを曹操に告げた。曹丕は恐れ、呉質に打ち明けた。呉質は言った。「心配ありません」。翌日、今度は車に絹を載せて入った。楊修がまたこれを曹操に告げた。調べさせたところ、誰もいなかったので、曹操はそれで楊修を疑うようになった。〔評〕曹植が嫡子の座を奪おうとしたことを、曹操はもともと疑っていた。曹植を疑う以上、曹丕を疑わないのは容易である。そうでなければ、猜疑心の強い曹操が、一度調べただけで追及をやめるはずがない。楊修を殺したのも、曹植を孤立させて曹丕を安心させるためだった。それなのに、世間で「黄絹」が忌まれた、「鶏肋」が軍を誤らせたと説く者がいるのは、曹操の論じ方が浅い。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『智囊』敏悟・楊修楊修、魏武の主簿たり。時に相国の門を作り、始めて榱桷を構う。魏武自ら出でて看、門に題して「活」の字を作して便ち去る。楊見て、便ち令してこれを壊さしむ。曰く、「門中の活は『闊』の字なり。王は正に門の大なるを嫌うなり」と。人、魏武に一杯の酪を餉る。魏武少許を啖い、蓋の頭上に「合」の字を題して以て衆に示す。衆、能く解する莫し。次いで楊修に至る。修便ちこれを啖いて曰く、「公、人に一口を啖わしむ、また何ぞ疑わん」と。魏武嘗て「曹娥碑」の下を過ぐ。楊修従う。碑の背上に題して「黄絹幼婦外孫斉臼」の八字を作すを見る。魏武、修に謂いて曰く、「解するや否や」と。答えて曰く、「解す」と。魏武曰く、「卿、未だ言うべからず。我の思うを俟て」と。行くこと三十里、魏武乃ち曰く、「吾已に得たり」と。修をして別に知る所を記さしむ。修曰く、「黄絹は色糸、字において『絶』たり。幼婦は少女、字において『妙』たり。外孫は女子、字において『好』たり。斉臼は五辛を受くる器、字において『辞』たり。所謂『絶妙好辞』なり」と。魏武もまた記すに、修と同じ。歎じて曰く、「吾が才、卿に去ること乃ち三十里」と。操、既に漢中を平らげ、劉備を討たんと欲するも進むを得ず、守らんと欲するもまた功を為し難し。護軍、進止を知らず。操、教を出だし、唯だ曰く、「鶏肋」と。外曹、能く暁る莫し。楊修曰く、「夫れ鶏肋は、これを食らえば則ち得る所無く、これを棄つれば則ち殊に惜しむべし。公の帰る計、決せり」と。乃ち私に語りて営中に戒装せしむ。俄にして操果たして班師す。〔述評〕徳祖、聡穎太だ露わにして、操の忌む所と為る。それ免るるを能わんや。晋・宋の人主、多く臣下と詩・字を争勝す。故に鮑照は累句多く、僧虔は拙筆を用いる。皆以て禍を避くるなり。
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『智囊』善言・賈詡賈詡、操に事う。時に臨淄侯植、才名方に盛んなり。操嘗て丕を廃して植を立てんと欲す。一日左右を屏けて詡に問う。詡黙して対えず。操曰く、「卿と言うに、答えざるは何ぞや」と。対えて曰く、「属たま思う所有り」と。操曰く、「何を思う」と。詡曰く、「袁本初、劉景升の父子を思う」と。操大笑し、丕の位遂に定まる。〔評議〕衛瓘の「此の座惜しむべし」の一語は、詡に下らず。晋武悟れども従わず、以て敗に至る。
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『智囊』權奇・曹衝曹公に馬鞍の庫に在るもの有り、鼠に傷つけらる。庫吏懼れ、自ら縛して死を請わんと欲す。衝、謂いて曰く、「三日を待て」と。衝乃ち刀を以てその単衣を穿ち、鼠の齧む者の若くし、入りて見え、謬りて愁状を為す。公これに問う。対えて曰く、「俗に言う、鼠の衣を齧むは不吉なりと。今、児の衣齧まる。是を以て憂うるなり」と。公曰く、「妄言のみ。苦しむ無かれ」と。俄かにして庫吏、鞍を齧まるを以て白す。公笑いて曰く、「児の衣は側に在るすら且つ齧まる。況んや鞍の柱に懸かるをや」と。竟に問わず。
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『智囊』狡黠・曹操魏武、常に行軍するに、廩谷足らず。私かに主者を召して問う、「如何せん」と。主者曰く、「小斛を行いて之を足すべし」と。曹公曰く、「善し」と。後に軍中に曹公は衆を欺くと言う。公、主者に謂いて曰く、「汝に一物を借りて、以て衆心を厭えん」と。乃ち之を斬り、首を取りて題して徇えて曰く、「小斛を行い、官谷を盗む」と。軍心は遂に定まる。曹公嘗て云う、「我が眠中には妄りに近づくべからず。近づけば便ち人を斲る。亦た自ら覚えず。左右は宜しく慎むべし」と。一日陽り眠る。幸する所の一人、竊かに被を以て之を覆う。因りて便ち斲殺す。復た臥し、既に覚むれば問う、「誰か我が侍者を殺せしぞ」と。是れより眠る毎に人敢えて近づかず。魏武は、人の己を危うくせんと欲すれば己は輒ち心動くと言い、因りて親しき所の小人に語りて曰く、「汝は刃を懐きて密かに我が側に来たれ。我は必ず説きて必ず動く。汝を執えて刑を行わしめん。汝は但だ言う勿かれ。他の故無きを保たん。当に厚く相報ゆべし」と。親者は焉を信じ、以て懼れと為さず。遂に之を斬る。此の人は死に至るまで知らざるなり。左右は以て実と為し、謀逆する者は気を挫く。操は少き時、嘗て袁紹と人の新婚を観る。因りて潜かに主人の園中に入り、夜に叫呼して云う、「偸児賊有り」と。青廬中の人は皆出でて観る。操は乃ち入り、刃を抽きて新婦を劫かす。紹と還り出ずるに、道を失い、枳棘中に墜つ。紹は動くを得る能わず。操は復た大いに叫びて云う、「偸児此に在り」と。紹は惶迫して、自ら擲ち出で、遂に以て俱に免る。
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