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智囊 / 權奇・爰種・溫嶠・高歡

爾朱兆以六鎮屢反,誅之不止,問計於高歡。歡謂宜選王心腹私將統之,有犯則罪其帥。兆曰:「善,誰可行。」賀拔允時在坐,勸請用歡。歡拳毆允,折其一齒,曰:「生平天柱時,奴輩伏處分如鷹犬,今天下安置在王,而允敢誣下罔上如此。」兆以歡為誠,遂委之,歡以兆醉,恐醒而悔之,遂出宣言,受委統州鎮兵,可集汾東受號令。軍士素樂歡,莫不皆至。歡去,遂據冀州。

新字:爾朱兆以六鎮屡反,誅之不止,問計於高歓。歓謂宜選王心腹私将統之,有犯則罪其帥。兆曰:「善,誰可行。」賀抜允時在坐,勧請用歓。歓拳殴允,折其一歯,曰:「生平天柱時,奴輩伏処分如鷹犬,今天下安置在王,而允敢誣下罔上如此。」兆以歓為誠,遂委之,歓以兆酔,恐醒而悔之,遂出宣言,受委統州鎮兵,可集汾東受号令。軍士素楽歓,莫不皆至。歓去,遂拠冀州。

書き下し

爾朱兆、六鎮の屡々反するを以て、これを誅して止まず。計を高歓に問う。歓、宜しく王の心腹の私将を選びてこれを統べしめ、犯す有らばその帥を罪すべしと謂う。兆曰く、「善し。誰か行くべき」と。賀抜允、時に坐に在り、歓を用いんことを勧め請う。歓、拳もて允を殴り、その一歯を折りて曰く、「平生天柱の時、奴輩は伏して処分を受くること鷹犬の如し。今、天下の安置は王に在り。而るに允敢えて下を誣い上を罔うること此の如きか」と。兆、歓を以て誠と為し、遂にこれに委ぬ。歓、兆の酔えるを以て、醒めて悔ゆるを恐れ、遂に出でて宣言す。「州鎮の兵を統ぶるを委ぬるを受けたり。汾東に集まりて号令を受くべし」と。軍士、素より歓を楽しみ、至らざる莫し。歓去りて、遂に冀州に拠る。

現代語訳

爾朱兆は、六鎮の者たちが何度も反乱を起こし、殺しても止まらないので、高歓に対策を尋ねた。高歓は、王の腹心の私兵の将を選んで六鎮の者を統率させ、違反があればその将を罰するのがよいと答えた。兆は「よい。誰が行くべきか」と言った。そのとき賀抜允が席にいて、高歓を用いるよう勧めた。すると高歓は拳で賀抜允を殴り、歯を一本折って言った。「天柱将軍の生前、おまえたちは鷹や犬のようにひれ伏して指図を受けていたではないか。いま天下の采配は王のもとにある。それなのにおまえは、下の者をいつわり、上をあざむくとは、どういうことか」。爾朱兆は高歓を誠実だと思い、ついに任せることにした。高歓は、兆が酔っているので、醒めてから後悔することを恐れ、すぐに外へ出て宣言した。「州鎮の兵を統率する任を受けた。汾東に集まり、号令を受けよ」。兵士たちは日ごろから高歓を慕っていて、みな集まってきた。高歓は去って、そのまま冀州に拠った。

解説

高歓は、自分を推薦した者を殴ってみせることで、権力を欲していないと爾朱兆に信じ込ませ、任務を手に入れました。野心を見せない演技によって、むしろ最も欲しい地位を相手から差し出させる形です。さらに、兆の酔いが醒めて気が変わる前に、その場で任命を既成事実にしてしまう素早さも見事でした。経営者や管理職は、人事や権限の委譲を受けるとき、自分から欲しいと言うより、信頼の出どころを整えて、任せたいと思わせる方が通りやすいと読めます。決まった直後に動いて、翻意の余地をなくす実行の速さも学べます。ただし高歓の目的は謀叛で、手法には倫理的な限界があります。

この章句が説くこと

六鎮心腹の私将拳もて殴る野心委任先手

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