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智囊 / 權奇・文彥博

起居舍人毋湜,至和中上言,乞廢陝西鐵錢,朝廷雖不從,其鄉人多知之,爭以鐵錢買物,賣者不肯受,長安為之亂。民多閉肆,僚屬請禁之,文彥博曰:「如此是愈惑擾也。」乃召絲絹行人,出其家縑帛數百匹,使賣之,曰:「納其直盡以鐵錢,勿以銅錢也。」於是眾知鐵錢不廢,市肆復安。

新字:起居舎人毋湜,至和中上言,乞廃陝西鉄銭,朝廷雖不従,其郷人多知之,争以鉄銭買物,売者不肯受,長安為之乱。民多閉肆,僚属請禁之,文彦博曰:「如此是愈惑擾也。」乃召糸絹行人,出其家縑帛数百匹,使売之,曰:「納其直尽以鉄銭,勿以銅銭也。」於是衆知鉄銭不廃,市肆復安。

書き下し

起居舎人毋湜、至和中に上言し、陝西の鉄銭を廃せんことを乞う。朝廷、従わずと雖も、其の郷人、多く之を知り、争いて鉄銭を以て物を買う。売る者、受くるを肯ぜず。長安、之が為に乱る。民、多く肆を閉ず。僚属、之を禁ぜんことを請う。文彦博曰く、「是くの如くんば、是れ愈いよ惑い擾すなり」と。乃ち絲絹の行人を召し、其の家の縑帛数百匹を出して之を売らしめて曰く、「其の直を納むるに尽く鉄銭を以てせよ、銅銭を以てする勿かれ」と。是に於いて衆、鉄銭の廃せられざるを知り、市肆復た安んず。

現代語訳

起居舎人の毋湜は、至和年間に上書して、陝西の鉄銭を廃止するよう願った。朝廷は従わなかったが、その郷里の人々の多くがこのことを知り、争って鉄銭で物を買った。売る側は受け取ろうとしなかった。長安はそのために混乱した。民は多く店を閉じた。部下の役人たちはこれを禁止するよう願った。文彦博は言った、「そうすれば、ますます人々を惑わせ、騒がせるだけだ」と。そこで絹織物の商人を呼び、自分の家の絹数百匹を出して売らせ、「代金はすべて鉄銭で受け取れ。銅銭は受け取るな」と言った。これにより人々は鉄銭が廃止されないことを知り、市場は再び落ち着いた。

解説

鉄銭廃止の噂による混乱を、禁止令ではなく、自分の財産を使った実例で鎮めた話です。文彦博は、禁止すれば疑念が深まると判断し、鉄銭だけで受け取る売買を自ら見せました。権力者が率先して、通貨への信用を示した行動です。管理職にとって、不安が広がった組織で、説明や禁止よりも、自分が率先して行動することで安心を伝える手法が学べます。ただし、数百匹の絹を投じる覚悟があって初めて成立する点を踏まえる必要があります。噂に対して口で否定するより、実際の行動で示すほうが強い説得力を持ちます。

この章句が説くこと

鉄銭毋湜縑帛市肆噂信用

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