智囊 / 權奇・楊雲才
楊雲才多心計,每有繕修,略以意指授之,人不知所為。及成,始服其精妙。為荊州同知日,當郡城改拓時,錢穀之額已有成命,而台使者檄下,欲增二尺許。監司謀諸守令,欲稍益故額,雲才進曰:「某有別畫,不煩費一錢也。」次日馳至陶所,命取其模以獻,怒曰:「不佳!」盡碎之,而出己所制模付之,曰:「第如式為之!」諸人視其式,無以異也,然雲才實於中陰溢二分許,積之得如所增數。城成,白其故,監司乃大服。〔評〕磚厚而陶者不知,城增而主者不費。心計之妙,侔於思神!
新字:楊雲才多心計,毎有繕修,略以意指授之,人不知所為。及成,始服其精妙。為荊州同知日,当郡城改拓時,銭穀之額已有成命,而台使者檄下,欲增二尺許。監司謀諸守令,欲稍益故額,雲才進曰:「某有別画,不煩費一銭也。」次日馳至陶所,命取其模以献,怒曰:「不佳!」尽砕之,而出己所制模付之,曰:「第如式為之!」諸人視其式,無以異也,然雲才実於中陰溢二分許,積之得如所增数。城成,白其故,監司乃大服。〔評〕磚厚而陶者不知,城增而主者不費。心計之妙,侔於思神!
書き下し
楊雲才は心計多し。每に繕修有れば、略ぼ意を以て之に指授し、人は為す所を知らず。成るに及び、始めて其の精妙に服す。荊州同知為りし日、郡城の改拓に当たり、銭穀の額は已に成命有り、而るに台使者、檄下して、二尺許りを増さんと欲す。監司、守令に謀り、稍や故額を益さんと欲す。雲才、進みて曰く、「某に別画有り、一銭を費やすを煩わさず」と。次日、馳せて陶所に至り、其の模を取りて献ぜしむ。怒りて曰く、「佳からず」と。尽く之を砕き、己の制する所の模を出して之に付して曰く、「第だ式の如く之を為せ」と。諸人、其の式を視るに、以て異なる無し。然れども雲才、実に中に於いて陰かに溢すこと二分許り、之を積みて増す所の数の如きを得たり。城成り、其の故を白す。監司、乃ち大いに服す。〔評〕磚は厚きも陶者は知らず、城は増すも主者は費やさず。心計の妙、思神に侔し。
現代語訳
楊雲才は知恵の働く人で、工事や修理があるたびに、おおまかな意図だけを指示し、人々は何をしているのか分からなかった。完成してはじめて、その精妙さに感服した。荊州の同知だったとき、郡城の拡張工事に当たり、費用と穀物の額はすでに決められていたが、上級官庁の使者が文書で、城壁をさらに二尺ほど増やすよう命じた。監司は長官たちと相談し、元の額を少し増やそうとした。雲才は進み出て、「私に別の考えがございます。一銭も費やさずに済みます」と言った。翌日、雲才は馬で煉瓦の窯場に行き、型を取り寄せて差し出させた。そして「よくない」と怒り、すべて砕いて、自分で作った型を渡して、「ただこの型のとおりに作れ」と言った。皆がその型を見たが、特に変わったところはなかった。しかし雲才は、実際には中でひそかに二分ほど余分に厚くしており、それが積み重なって増築すべき分になった。城が完成してから、その理由を明かすと、監司は大いに感服した。〔評〕煉瓦は厚くなったのに職人は気づかず、城壁は増えたのに責任者は費用を増やさずに済んだ。計算の妙は、神や鬼の領域に近い。
解説
この章句が説くこと
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『智囊』億中・韋孝寬韋孝寛、玉壁に鎮し、念えらく、汾州の北、離石以南は、悉く是れ生胡にして、居人を抄掠し、河路を阻断し、而して地は斉に入る。孝寛、其の要処に当たりて一大城を置かんと欲し、乃ち河西に於いて役徒十万、甲士百人を征し、開府姚岳を遣わして之を監築せしむ。岳は兵少なきを以て難と為す。孝寛曰く、「計るに此の城を成すこと十日にして即ち畢わらん。彼は晋州を去ること四百餘里、一日手を創むれば、二日にして魏の境始めて知る。設令い晋州が兵を徴せば、二日にして方に集まり、謀議の間に、自ら稽ること三日、其の軍行を計るに、二日にして到らざれば、我が城隍は辦ずるに足る」と。乃ち之を築かしむ。又た汾水以南、介山・稷山諸村に傍いて、所在に火を縦たしむ。斉人は是れ軍営なりと謂い、遂に兵を収めて自ら固む。版築克く就り、卒に孝寛の言の如し。
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『智囊』經務・丁謂祥符中、禁中に火あり。時に丁謂は営みて宮室を復するを主り、土を取ること遠きを患う。公、乃ち命じて通衢を鑿ち土を取らしむ。日ならずして皆な巨塹と成り、乃ち汴水を決して塹中に入れ、諸道の竹木の牌筏及び船の雑材を運ぶものを引き、尽く塹中より入り、公門に至りて事畢る。却って拆棄の瓦礫・灰壌を以て塹中に実し、復た街衢と為す。一挙にして三役済み、費を省くこと億万を以て計う。〔馮評〕此の公は尽く心計あり。但だ相の才にあらざるのみ。故に曰く、「人は大受すべからずして小知すべし」と。
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『智囊』應卒・趙從善・辛棄疾趙従善、京に尹たりし日、宦寺これを窘めんと欲し、勅して設醮の紅桌子三百隻を弁ぜしめ、内批もて一日に弁集するを限る。従善、酒坊・茶肆より桌の相類する者三百を取らしめ、浄洗して、糊するに白紙を以てし、用て紅漆を塗る。また両宮、聚景園に幸し、夜万松嶺を過ぐるに、立ちどころに火炬三千を索む。従善、瓦舎・妓館より取らしめ、竹簾・蘆簾を拘らず、実つるに脂を以てし、巻きて縄してこれを夾道の松樹に繋ぎ、左右照耀して、白日に比す。高宗南渡し、臨安に駐蹕して、行在を草創す。まさに一殿を造らんとするに、瓦無く、而して天雨ふり、郡と漕司これを憂う。忽ち一吏白して曰く、「多く兵士を差し、銭鏹を以て関廂の鋪店に分俵し、楼屋の腰簷瓦若干を賃借せよ。旬月にして新瓦到らば、数の如く賠還せん」と。郡司これに従い、殿瓦咄嗟にして弁ず。辛幼安、長沙に在り、後圃に楼を建てて中秋を賞せんと欲す。時すでに八月初旬なり。吏曰く、「他はみな弁ずべきも、ただ瓦のみ及ばず」と。幼安、まず市上において家ごとに銭百を以て簷瓦二十片を賃し、二日を限りて瓦を以て銭を収めしむ。ここにおいて瓦は勝げて用うべからず。〔評〕二事は皆一時の権宜、吏役の法と為すべし。
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『智囊』經務・種世衡・楊掞種世衡の置く所の青澗城は、虜境に逼近し、守備は単弱にして、芻糧は倶に乏し。世衡は官銭を以て商旅に貸し、之を致さしめ、其の出入を問わず。未だ幾ばくならずして、倉廩は皆実つ。又た吏民に射を習わしめ、僧道、婦人と雖も亦た之を習わしむ。銀を以て的と為し、的に中る者には輒ち之を与う。既にして中る者益ます多く、其の銀の重軽は故の如くして、的は漸く厚く且つ小さくなる。或いは徭役の軽重を争えば、亦た射せしめ、射中する者は優処を得。或いは過失有れば、亦た射せしめ、射中すれば則ち之を免ず。是れに由りて人人皆射し、富強は延州に甲たり。楊掞は本と書生なり、初め戎に従いて騎射を習い、夜ごとに青布を用いて地に藉き、生馬に乗りて躍り、初めは三尺に過ぎず、次は五尺、次は一丈に至り、数しば閃跌するも顧みず。孟珙は嘗て其の法を用い、称して「小子房」と為す。〔馮述評〕按ずるに『宋史』に、掞は嘗て人に万緡を貸り、襄、漢の間に游び、娼楼に入り、篋は垂んど尽く。夜に忽ち自ら呼びて曰く、「来たりて此に何を為さんや」と。輒ち棄てて去る。已に軍中に在りて、官銭数万を費し、賈似道は其の数を核し、孟珙は白金六百を以て償うも、掞は又た之を費し、終日にして飲む。似道は殺さんと欲するに、掞曰く、「漢祖は黄金四万斤を陳平に付して、其の出入を問わず。公の如く瑣瑣たらば、何を以て豪傑を用いん」と。似道は姑く之を置く。蓋し奇士なり。其の杜杲の軍幕に参じ、能く奇計を出し、安豊の囲みを解く。惜しいかな其の用を尽くさざるのみ。
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『智囊』經務・賀盛瑞都城の重城の根脚下は、雨水に沖激せられ、歳久しくして坑と成り、齧りて将に城に及ばんとす。名づけて「浪窩」と曰う。監督員外は部堂の旨を受け、吳家村の黄土を運びて填築せんと議す。京城を去ること二十里にして遥か、估銀は万一千余両。公は建議す、「但だ城壕の土を取りて以て填塞すれば、浪窩は土を得て之を築くこと固く、城壕は土を去りて之を濬うこと深し。銀を省き功倍す。計、此より便なるは無し」と。完工に比し、止だ九百有奇を費やすのみ。〔馮按〕両宮の役、賀公が政を為す。事例既に開く。凡そ通状の到る日に即ち帖を給し、銀完りて次日に即ち咨を給す。事に留宿無く、吏は勒掯し難く、赴く者は雲集し、銀百万両を得たり。公は毎事に核実し、浮費を裁去し、竟に七十万を以て役を竣う。省く所は九十万有奇。工甫めて完れるに、反って不職を以て論じて去らる。冤なるかな。然れども余、公の子仲軾の輯むる所の『冬官紀事』を覧るに、木商を抑え、窯税を清むるが如き、往々にして必ず其の意を行い、主怨を辞せず。宜なるかな、権貴の側目するや。夫れ用世の才有りて、而も必ず其の才を絀して以て世に容れられんことを求めしむ。国家は亦た何の利あらんや。吁、歎ずべきのみ。
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