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智囊 / 謬數・王隨

王章惠公隨舉進士時,甚貧,游翼城,逋人飯,被執入縣。石務均之父為縣吏,為償錢,又館給之於其家,其母尤加禮焉。一日務均醉,令王起舞;舞不中節,毆之。王遂去,明年登第,久之為河東轉運使,務均懼而竄。及文潞公為縣,以他事捕務均,務均急往投王,王已為御史中丞矣,乃封一鋌銀至縣,令葬務均之父,事遂得解。

新字:王章恵公随舉進士時,甚貧,游翼城,逋人飯,被執入県。石務均之父為県吏,為償銭,又館給之於其家,其母尤加礼焉。一日務均酔,令王起舞;舞不中節,殴之。王遂去,明年登第,久之為河東転運使,務均懼而竄。及文潞公為県,以他事捕務均,務均急往投王,王已為御史中丞矣,乃封一鋌銀至県,令葬務均之父,事遂得解。

書き下し

王章恵公随、進士に挙げらるる時、甚だ貧し。翼城に游び、人に飯を逋し、執えられて県に入る。石務均の父、県吏為り、為に銭を償い、又た之を其の家に館給し、其の母、尤も礼を加う。一日、務均酔い、王をして起ちて舞わしむ。舞、節に中らず、之を殴つ。王遂に去り、明年、第に登る。久しくして河東転運使と為る。務均懼れて竄る。文潞公、県と為るに及び、他事を以て務均を捕う。務均急ぎ往きて王に投ず。王、已に御史中丞為り。乃ち一鋌の銀を封じて県に至らしめ、務均の父を葬らしむ。事、遂に解くるを得たり。

現代語訳

章恵公王随が進士に挙げられる前、ひどく貧しかった。翼城に遊学していたとき、飯代を借りたまま払えず、捕らえられて県に連れて行かれた。石務均の父は県の吏で、その代金を肩代わりして返し、さらに自分の家に泊めて食事を与え、務均の母は特に礼を尽くした。ある日、務均が酔って、王に立って舞えと命じた。王の舞が拍子に合わなかったので、務均は王を殴った。王はそのまま去り、翌年に科挙に及第した。長い年月ののち、王は河東転運使となった。務均は報復を恐れて逃げ隠れた。のちに文彦博(潞公)が県の長官となり、ほかの事件で務均を捕らえた。務均は急いで王のもとに身を寄せたが、王はすでに御史中丞になっていた。そこで王は銀一鋌を封じて県に届けさせ、務均の父を葬る費用に当てさせた。こうして事件は解決した。

解説

貧しいときに恩を受けた相手の息子に、のちに殴られた王随の話です。出世した王随が仕返しをしたかどうかではなく、恩人の父を弔うための銀を送って息子の窮地を救った点が肝心です。恨みと恩は別物として扱い、かつて世話になった家に、体面を損なわず報いました。この話が謬数、つまり人を意外な形で使う計略の一例として置かれているのは、報復するより恩を返すほうが、相手に生涯の負い目を残し、結果として自分の名を守るからと読めます。経営者も、昔の無礼な相手に力を持った後どう接するかで、人望が決まります。

この章句が説くこと

飯を逋す殴つ銀を封ず恩に報いる度量人望

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