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史記 / 項羽本紀

最其後,郎中騎楊喜,騎司馬呂馬童,郎中呂勝、楊武各得其一體。五人共會其體,皆是。故分其地為五:封呂馬童為中水侯,封王翳為杜衍侯,封楊喜為赤泉侯,封楊武為吳防侯,封呂勝為涅陽侯。項王已死,楚地皆降漢,獨魯不下。漢乃引天下兵欲屠之,為其守禮義,為主死節,乃持項王頭視魯,魯父兄乃降。始,楚懷王初封項籍為魯公,及其死,魯最後下,故以魯公禮葬項王穀城。漢王為發哀,泣之而去。諸項氏枝屬,漢王皆不誅。乃封項伯為射陽侯。桃侯、平皋侯、玄武侯皆項氏,賜姓劉氏。太史公曰:吾聞之周生曰:「舜目蓋重瞳子」,又聞項羽亦重瞳子。羽豈其苗裔邪?何興之暴也?夫秦失其政,陳涉首難,豪傑蠭起,相與并爭,不可勝數。

新字:最其後,郎中騎楊喜,騎司馬呂馬童,郎中呂勝、楊武各得其一体。五人共会其体,皆是。故分其地為五:封呂馬童為中水侯,封王翳為杜衍侯,封楊喜為赤泉侯,封楊武為呉防侯,封呂勝為涅陽侯。項王已死,楚地皆降漢,独魯不下。漢乃引天下兵欲屠之,為其守礼義,為主死節,乃持項王頭視魯,魯父兄乃降。始,楚懐王初封項籍為魯公,及其死,魯最後下,故以魯公礼葬項王穀城。漢王為発哀,泣之而去。諸項氏枝属,漢王皆不誅。乃封項伯為射陽侯。桃侯、平皋侯、玄武侯皆項氏,賜姓劉氏。太史公曰:吾聞之周生曰:「舜目蓋重瞳子」,又聞項羽亦重瞳子。羽豈其苗裔邪?何興之暴也?夫秦失其政,陳渉首難,豪傑蠭起,相与并争,不可勝数。

書き下し

其の後に最(あつ)まりて、郎中騎楊喜、騎司馬呂馬童、郎中呂勝・楊武各々其の一体を得たり。五人共に其の体を会するに、皆是なり。故に其の地を分かちて五と為し、呂馬童を封じて中水侯と為し、王翳を封じて杜衍侯と為し、楊喜を封じて赤泉侯と為し、楊武を封じて呉防侯と為し、呂勝を封じて涅陽侯と為す。項王已に死し、楚の地皆漢に降る、独り魯のみ下らず。漢乃ち天下の兵を引きて之を屠らんと欲す、其の礼義を守り、主の為に節に死するが為に、乃ち項王の頭を持ちて魯に視(しめ)す、魯の父兄乃ち降る。始め、楚の懐王初めて項籍を封じて魯公と為す、其の死するに及びて、魯最後に下る、故に魯公の礼を以て項王を穀城に葬る。漢王為に哀を発し、之に泣きて去る。諸々の項氏の枝属、漢王皆誅せず。乃ち項伯を封じて射陽侯と為す。桃侯・平皋侯・玄武侯は皆項氏なり、姓劉氏を賜ふ。太史公曰く、吾之を周生に聞く、曰く「舜の目は蓋し重瞳子なり」と、又聞く項羽も亦重瞳子なりと。羽豈に其の苗裔ならんや。何ぞ興ることの暴かなるや。夫れ秦其の政を失ひ、陳渉難を首め、豪傑蠭起し、相与に并び争ふこと、勝げて数ふべからず。

現代語訳

最後に集まってきた郎中騎の楊喜、騎司馬の呂馬童、郎中の呂勝と楊武が、それぞれ項王の遺体の一部を手に入れた。五人が持ち寄った遺体を合わせてみると、皆本物であった。そこで項王の首に懸けられた領地を五つに分け、呂馬童を中水侯に、王翳を杜衍侯に、楊喜を赤泉侯に、楊武を呉防侯に、呂勝を涅陽侯に封じた。項王が死ぬと、楚の地は皆漢に降ったが、ただ魯だけは降らなかった。漢は天下の兵を率いて魯を皆殺しにしようとしたが、魯が礼と義を守り、主君のために節義を貫いて死のうとしていたので、項王の首を持って行って魯の人々に見せた。すると魯の父兄たちはようやく降伏した。かつて楚の懐王が最初に項籍を魯公に封じたのであり、項籍が死んだとき、魯が最後まで降らなかったので、魯公の礼をもって項王を穀城に葬った。漢王は項王のために哀悼の儀を行い、涙を流して去った。項氏の一族について、漢王は誰も誅殺しなかった。そして項伯を射陽侯に封じた。桃侯・平皋侯・玄武侯は皆項氏の者で、劉の姓を与えられた。太史公(司馬遷)は言う。私は周生から「舜の目はおそらく瞳が二つある重瞳だった」と聞き、また項羽も重瞳だったと聞いた。項羽はあるいは舜の子孫だったのだろうか。なんとその勃興の急激だったことか。そもそも秦がその政治を誤り、陳渉が最初に反乱を起こすと、豪傑たちが蜂のように立ち上がり、ともに争い合った者は数え切れないほどであった。

解説

項羽の死後の処理と、司馬遷の評「太史公曰」の書き出しです。項羽の遺体は恩賞目当ての兵に五つに引き裂かれ、五人がそれぞれ侯に封じられました。英雄の最期のあまりの無残さを、司馬遷は冷静に記しています。一方、魯は最後まで項羽への節義を守って降らず、劉邦は項羽の首を見せて降伏させ、魯公の礼で手厚く葬り、自ら涙を流しました。項氏の一族も誅さず、項伯らに劉姓を与えています。敵の死後に礼を尽くし恨みを残さない劉邦の処置は、天下を治める者としての度量を示しています。太史公曰の部分では、舜と同じ重瞳だったという伝承に触れ、項羽の興隆の速さに驚きを表しています。司馬遷の評はこの後、項羽の失敗の原因を厳しく論じる部分へと続きます。

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