智囊 / 謬數・管仲・王導
桓公好服紫,一國之人皆服紫。公患之,訪於管子。明日公朝,謂衣紫者曰:「吾甚惡紫臭,子毋近寡人。」於是國無服紫者矣。王丞相善於國事。初渡江,帑藏空竭,唯有練數千端。丞相與朝賢共制練布單衣。一時士人翕然競服,練遂踴貴。乃令主者賣之,每端至一金。〔述評〕此事正與「惡紫」對照。謝安之鄉人有罷官者,還,詣安。安問其歸資,答曰:「唯有蒲葵扇五萬。」安乃取一中者捉之。士庶競市,價遂數倍。此即王丞相之故智。
新字:桓公好服紫,一国之人皆服紫。公患之,訪於管子。明日公朝,謂衣紫者曰:「吾甚悪紫臭,子毋近寡人。」於是国無服紫者矣。王丞相善於国事。初渡江,帑蔵空竭,唯有練数千端。丞相与朝賢共制練布単衣。一時士人翕然競服,練遂踴貴。乃令主者売之,毎端至一金。〔述評〕此事正与「悪紫」対照。謝安之郷人有罷官者,還,詣安。安問其帰資,答曰:「唯有蒲葵扇五万。」安乃取一中者捉之。士庶競市,価遂数倍。此即王丞相之故智。
書き下し
桓公は紫を服するを好み、一国の人皆紫を服す。公これを患い、管子に訪う。明日、公朝し、衣紫の者に謂いて曰く、「吾甚だ紫の臭を悪む。子、寡人に近づく毋かれ」と。是に於いて国に紫を服する者無し。王丞相は国事に善し。初め江を渡るに、帑蔵空竭し、唯だ練数千端有るのみ。丞相、朝賢と与に練布の単衣を共に制す。一時、士人翕然として競いて服し、練遂に踴貴す。乃ち主者をして之を売らしむ。端ごとに一金に至る。〔述評〕此の事、正に「紫を悪む」と対照す。謝安の郷人に官を罷めし者有り、還りて安に詣る。安、其の帰資を問うに、答えて曰く、「唯だ蒲葵扇五万有るのみ」と。安乃ち一の中なる者を取りて捉る。士庶競いて市い、価遂に数倍す。此れ即ち王丞相の故智なり。
現代語訳
斉の桓公は紫の衣を着るのを好み、国中の人がみな紫を着た。桓公はこれを心配して管仲に相談した。翌日、桓公は朝廷で紫の衣を着た者に言った。「私は紫の臭いがとても嫌いだ。お前たち、私に近づくな」。すると国に紫を着る者はいなくなった。王導は国政に長じていた。はじめ長江を渡って来たとき、国庫が空になり、練り絹が数千端あるだけだった。王導は朝廷の賢臣たちと一緒に、練り絹の単衣を仕立てた。たちまち士人たちがこぞって競って着るようになり、練り絹の値が急騰した。そこで担当者に命じて売らせると、一端が一金にもなった。〔述評〕この話は「紫を悪む」と対になっている。謝安の同郷の人に官を罷めて帰った者がいて、謝安を訪ねた。謝安がその帰りの資金を尋ねると、「蒲葵の扇が五万本あるだけです」と答えた。謝安はそのうちの中ぐらいのものを一本取って持った。士も庶民も競ってこれを買い、値は数倍になった。これは王導の昔の知恵と同じである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集綺・風流は墜髻を誇る流蘇の帳の底、之を披けば夜月人を窺ひ、 玉鏡臺の前、之を諷すれば朝煙樹に縈る。 風流は墜髻を誇り、時世は啼眉を聞く。
-
徒然草・第78段今様の事どもの珍しきを、いひ広めもてなすこそ、又うけられね。世に事ふりたるまで知らぬ人は心にくし。今更の人などのある時、こゝもとに言ひつけたる言種、物の名など心得たるどち、片端言ひかはし、目見合はせ笑ひなどして、心しらぬ人に心得ず思はすること、世なれずよからぬ人の必ずあることなり。
-
『韓非子』八姦第九人臣為る者は諸侯の辯士を求め、国中の能く説く者を養ひ、之をして以て其の私を語らしむ。巧文の言、流行の辞を為し、之に示すに利勢を以てし、之を懼れしむるに患害を以てし、虚辞を施属して以て其の主を壊る、此を之れ流行と謂ふ。七に曰く威強。何をか威強と謂ふ。
-
『政談』遊女河原者の種姓の分事並に乞食の締りの事斯の如く遊女河原者の平人に混するよりして、遊女野郎の風俗平人に移り、当時は大名高位の詞つかいにも傾城町野郎町の言葉を遠慮なくつかひ、武家の妻娘も傾城野郎の真似をして恥といふことを知らず、是は当代のはやりとなり、苦しからざることなり、之を真似ぬは田舎ものなりといひのゝしりて、風俗以ての外に悪しくなること皆種姓の混乱より起る、古法の如く種姓を正し、遊女河原者の子を男をば野郎にし女をば遊女とし、平人とは混ずることを堅く禁じたらばこの悪風自から巳むべきなり、比丘尼にも平人よりなることを堅く禁じて、比丘尼は子を比丘尼とし種姓を極むべきことなり、
-
『武士道』第六章 禮儀・絶えず移りゆく流行を追う愚宜なり、衣食足りて礼節を知ると謂ひ、又たヴェブレン氏が多趣味の著『有閑階級論』に於て、礼は『有閑階級者の生活の産む所にして、又た之を表するものなり』と云ふこと。欧人ややもすれば我が礼儀の委曲繊巧に流るるを嗤ひ、思慮を役する大にして、之を固守すること其愚及ぶべからずと評す。予も亦た礼儀の繁縟なるよりして、徒に無用の細節に泥むことあるを知る。されど、泰西の絶えず移りゆく流行を追ふの愚に比するに、予は、にはかに其優劣を判ずるに苦しむものなり。然るに予は彼の流行すらも、なお之を目して、虚栄の癖好なりとせざるのみならず、反つて之を認めて、人心の断えず美を慕ふ所以なりとす。されば何すれぞ、繊巧なる儀礼を以て全く取るに足らずとせんや。
-
『韓非子』八姦第九六に曰く流行。何をか流行と謂ふ。曰く、人主は、固より其の言談を壅がれ、論議を聴くこと希にして、移すに辯説を以てし易し。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る