智囊 / 委蛇・周新・陳瓘
周新為浙江按察使。嘗巡屬縣,微服觸縣官,取係獄中,與囚語,遂知一縣疾苦。明往迓,乃自獄出。縣官慚懼,解綬而去。由是諸郡縣聞風股栗,莫不勤職。陳瓘嘗為別試所主,蔡卞曰:「聞陳瓘欲盡取史學而黜通經之士,意欲沮壞國是而動搖荊公之學也!」既積怒,謀因此害瓘,而遂禁絕史學。計畫已定,唯俟瓘所取士,求疵立說而行之。瓘固預料如此,乃於前五名悉取談經及純用王氏之學者。卞無以發,然五名之下往往皆博洽稽古之士也。瓘嘗曰:「當時若無矯揉,則勢必相激,史學往往遂廢矣。故隨時所以救時,不必取快目前也。」〔評〕元祐之君子與「甘露」之小人同敗,皆以取快目前,故救時之志不遂。
新字:周新為浙江按察使。嘗巡属県,微服触県官,取係獄中,与囚語,遂知一県疾苦。明往迓,乃自獄出。県官慚懼,解綬而去。由是諸郡県聞風股栗,莫不勤職。陳瓘嘗為別試所主,蔡卞曰:「聞陳瓘欲尽取史学而黜通経之士,意欲沮壊国是而動揺荊公之学也!」既積怒,謀因此害瓘,而遂禁絶史学。計画已定,唯俟瓘所取士,求疵立説而行之。瓘固預料如此,乃於前五名悉取談経及純用王氏之学者。卞無以発,然五名之下往往皆博洽稽古之士也。瓘嘗曰:「当時若無矯揉,則勢必相激,史学往往遂廃矣。故随時所以救時,不必取快目前也。」〔評〕元祐之君子与「甘露」之小人同敗,皆以取快目前,故救時之志不遂。
書き下し
周新、浙江の按察使と為る。嘗て属県を巡り、微服にて県官に触れ、取りて獄中に係がる。囚と語りて、遂に一県の疾苦を知る。明くる日、往きて迓うるに、乃ち獄より出づ。県官、慚懼し、綬を解きて去る。是より諸郡県、風を聞きて股栗し、勤職せざる莫し。陳瓘、嘗て別試の主と為る。蔡卞曰く、「聞く、陳瓘、史学を尽く取りて通経の士を黜けんと欲す、と。意は国是を沮壊し荊公の学を動揺せんと欲するなり」と。既に怒りを積み、因りて瓘を害せんと謀り、遂に史学を禁絶せんとす。計画已に定まり、唯だ瓘の取る所の士を俟ち、疵を求め説を立てて之を行わんとす。瓘、固より預め此くの如きを料り、乃ち前の五名に於いて、悉く談経及び純ら王氏の学を用いる者を取る。卞、以て発する無し。然れども五名の下は往往にして皆な博洽・稽古の士なり。瓘、嘗て曰く、「当時若し矯揉無くんば、則ち勢い必ず相い激し、史学は往往にして遂に廃れん。故に時に随うは時を救う所以にして、必ずしも目前に快を取らざるなり」と。〔評〕元祐の君子は「甘露」の小人と同に敗る。皆な目前に快を取るを以て、故に時を救うの志、遂げられざるなり。
現代語訳
周新は浙江の按察使でした。あるとき、属県を巡察して、身をやつして県官に出会い、その場でつかまえて獄中に入れられました。囚人と語り合い、一県の苦しみを知りました。翌日、県官が出迎えると、周新は獄から出てきました。県官は恥じておそれ、印綬を解いて去りました。これ以後、諸郡県は噂を聞いて震え上がり、職務に励まない者はいませんでした。陳瓘は、かつて別試験の主任をしていました。蔡卞は言いました。「聞くところでは、陳瓘は史学ばかりを取り、経書に通じた士を退けようとしているそうだ。その意図は国是を損ない、王安石の学問を動揺させようとするものだ。」すでに怒りを積んでいたので、陳瓘を害することを図り、史学を禁じようとしました。計画はすでに決まり、ただ陳瓘が取る士を待ち、欠点を探して説を立てて実行しようとしました。陳瓘はもともとこうなると予想していたので、上位五名にすべて経を談じる者と、純粋に王氏の学を用いる者を取りました。蔡卞は攻撃する材料がありませんでした。しかし五名より下は、しばしばみな博学で古に通じた士でした。陳瓘はかつて言いました。「当時もし手加減を加えなかったら、情勢はきっと互いに激しくなり、史学はおそらくそのまま廃れていただろう。だから時に合わせることは、時を救う方法であり、必ずしも目先の快を取ることではない。」〔評〕元祐の君子は「甘露の変」の小人と同じ失敗をした。どちらも目先の快を取ったので、時を救う志を遂げられなかったのである。
解説
この章句が説くこと
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『宋名臣言行録』後集巻十三・陳瓘嘗て別試所の主文と爲る。林自蔡卞に謂いて曰く、聞くならく、陳瓘は盡く史學を取りて經に通ずるの士を黜けんと欲す。意は國是を沮壞して荊公の學を動搖せしめんと欲するなり、と。卞既に怒りを積み、此に因りて公を害し、遂に史學を禁絶せんことを謀る。計畫已に定まる。唯だ公の取る所の士を候ちて、疵を求め説を立てて之を行わんとするのみ。公固より其の此くの如きを預料す。乃ち前の五名に於いて悉く經を談じ、及び純ら王氏の學を用うる者を取る。卞發する無し。然れども五名の下は往往にして皆な博洽稽古の士なり。公嘗て曰く、當時若し矯揉無くんば、則ち勢い必ず相い激し、史學往往にして遂に廢せん。故に時に隨うは時を救う所以なり。必ずしも快を目前に取らざるなり、と。
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『智囊』詰奸・周新周新、浙江に按察たり。将に到らんとするとき、道上に蠅・蚋、馬首を迎えて聚まる。人をして之を尾せしむれば、一つの暴屍を得たり。唯だ小木布の記のみ在り。任に至るに及び、人をして布を市わしめ、屢ば佳からずと嫌いて、別に之を市わしめ、印志の者を得たり。布主を鞫すれば、即ち布商を劫かせし賊なり。一日、事を視るに、忽ち旋風の異葉を吹いて前に至る。左右言う、「城中に此の木無し。独り一古寺に之有り。城を去ること差や遠し」と。新悟りて曰く、「此れ必ず寺僧の人を殺し、其の下に埋めたり。冤魂、我に告ぐるなり」と。之を発けば、婦屍を得たり。僧即ち款服す。〔馮按〕新は南海の人。郷科より選ばれて御史となり、剛直にして敢えて言う。人称して「冷面寒鉄」と為す。公の浙に在るや異政多し。時に錦衣の紀綱、寵を擅にし、千戸をして浙に往き事を緝せしめ、威を作し賄を受く。新、捕えて之を治む。千戸は走げ脱れ、綱に訴う。綱、其の罪を構え、之を殺す。嗚呼、公は能く人の冤を暴くも、身は冤死を免るる能わず。天道は疑うべし。
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『宋名臣言行録』後集巻十三・陳瓘公太學博士爲り。薛昂・林自の徒、正錄と爲る。皆な蔡卞の黨なり。競いて荊公を推尊して元祐を擠排し、士人を禁戒して元祐の學術を習うを得ざらしむ。卞方に資治通鑑の板を毀たんことを議す。公之を聞き、士に策する題に因りて特に序文を引きて、以て神考に訓有るを明らかにす。是に於いて林自駭異して公に謂いて曰く、此れ豈に神考の親製ならんや、と。公曰く、誰か其の非なるを言わんや、と。自又た曰く、亦た神考少年の文のみ、と。公曰く、聖人の學は天性に得たり。始め有り卒わり有り。豈に少長の異有らんや、と。自辭屈し愧歉して、遽かに以て卞に吿ぐ。卞乃ち密かに學中をして板を高閣に置かしめ、復た敢えて毀たんことを議せず。
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『智囊』遠猶・陳瓘徽宗の初め、紹聖の弊を革めて以て靖国せんと欲し、是に於いて大いに言路を開く。衆議は瑤華の復位、司馬光らの叙官を以て当に先とすべき所と為す。陳瓘、時に諫省に在りて、独り以為えらく、「母后を幽廃し、故相を追貶するは、彼は皆な名を立てて以て行う、細故に非ざるなり。今、正復せんと欲せば、当に先ず誣罔を辨明し、非辜を昭雪し、造意の人を誅責し、然る後に詔を発し、礼を以て之を行うべし。庶わくは後患無からん。宜しく速やかならんことを欲して悔を貽すべからず」と。朝議は公論の久しく鬱せしを以て、速やかに人情を快くせんことを欲し、遽かに之を施行す。崇寧の間に至り、蔡京事を用い、悉く建中の政を改む。人皆な公の遠識に服す。
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『宋名臣言行録』後集巻十三・陳瓘公蔡氏に緣りて罪を得たりと雖も、而も首として私史を論じ、力めて王氏を排す。王・蔡の黨、薛昂・蹇序辰・何執中・鄧洵仁・洵武・蔡嶷の徒の如きは、皆な當時力を協せて排陷し公を殺さんと欲せし者なり。亦た獨り蔡京兄弟のみに非ざるなり。蔡嶷と公とは初め相い識らず。公宰相に書を上りて海陵に謫守せらる。嶷太學生爲り、長書を以て公に遺り、事を論じて公の議に合す。公の諫疏は婉にして理有り、陸宣公に似たり。剛にして撓まざるは狄梁公に似たり。文章淵源、正道を發明するは、則ち韓文公其の人なり、と謂う。次年に至り、嶷對策を以て大魁と爲る。陳ぶる所の時務、前書と頓に異なる。是に於いて愧悔して公を殺して以て口を滅せんと欲し、密かに京黨を贊けて力を出だすこと尤も甚だし。
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『智囊』委蛇・周忱・唐順之周文襄、江南を巡撫せし日、巨璫の王振、権に当たる。其の己を撓すを慮る。時に振、初めて居第を作る。公、預め人をして其の斎閣を度らしめ、松江をして剪絨毯を作らしめて之に遺る。尺寸を失わず。振、益ます喜ぶ。凡そ公の利便を上る事は、振みな中より之を賛け、江南は今に至るまで頼る。〔評〕秦檜、格天閣を構う。某官、江南に任じ、奇を出して之に媚びんと思い、乃ち重く工人に賂いて、其の尺寸を得、絨毯を作りて以て進む。鋪くに恰も合う。檜は其の己が内事を詗うと謂い、大いに怒り、因りて事を尋ねて之を斥く。献ずる所は同じなるに、喜怒は相い反するは、何ぞや。忠佞の意殊なれば、彼の蒼き者、陰かに各おの其の報を食ましむと謂うは、此れ恐らくは未だ然らず。大抵、振は暴にして驕、其の機は浅し。檜は険にして狡、其の機は深し。振は君子を招きて以て名を沽ることを楽しむ。檜は小人を防ぐことに厳にして以て禍を慮る。此れ異なる所以か。世の文襄を訾る者は、王振に媚びたること、及び粟千石を出して其の門を旌され、又た子の為に馬を納めて官を得たる二事を以てするに過ぎず。皆な高明の挙に非ず。愚謂えらく、此の二事も亦た深意有り。時に四方の災傷、薦ねて告げ、司農は貧しきを患う。而るに公は復た江南の苛税若干万を奏免す。唯だ是れ勧輸・援納を便宜の二策と為す。公、故に身を以て之に先んず。明らかに旌門の栄と為し、納官の辱と為らざることを示し、以て百姓を風励せんと欲す。此れ亦た卜式助辺の遺意なり。未だ軽々しく議すべからざるなり。
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