宋名臣言行録 / 後集巻十三・陳瓘
公雖緣蔡氏得罪而首論私史力排王氏王蔡之黨如薛昂蹇序辰何執中鄧洵仁洵武蔡嶷之徒皆當時恊力排䧟欲殺公者亦不獨蔡京兄弟而已蔡嶷與公初不相識公上宰相書謫守海陵嶷為太學生以長書遺公論事合公議謂公諌疏婉而有理似陸宣公剛而不撓似狄梁公文章淵源發明正道則韓文公其人也至次年嶷以對策為大魁所陳時務與前書頓異於是愧悔而欲殺公以滅口密贊京黨出力尤甚
新字:公雖縁蔡氏得罪而首論私史力排王氏王蔡之党如薛昂蹇序辰何執中鄧洵仁洵武蔡嶷之徒皆当時恊力排䧟欲殺公者亦不独蔡京兄弟而已蔡嶷与公初不相識公上宰相書謫守海陵嶷為太学生以長書遺公論事合公議謂公諌疏婉而有理似陸宣公剛而不撓似狄梁公文章淵源発明正道則韓文公其人也至次年嶷以対策為大魁所陳時務与前書頓異於是愧悔而欲殺公以滅口密賛京党出力尤甚
書き下し
公蔡氏に緣りて罪を得たりと雖も、而も首として私史を論じ、力めて王氏を排す。王・蔡の黨、薛昂・蹇序辰・何執中・鄧洵仁・洵武・蔡嶷の徒の如きは、皆な當時力を協せて排陷し公を殺さんと欲せし者なり。亦た獨り蔡京兄弟のみに非ざるなり。蔡嶷と公とは初め相い識らず。公宰相に書を上りて海陵に謫守せらる。嶷太學生爲り、長書を以て公に遺り、事を論じて公の議に合す。公の諫疏は婉にして理有り、陸宣公に似たり。剛にして撓まざるは狄梁公に似たり。文章淵源、正道を發明するは、則ち韓文公其の人なり、と謂う。次年に至り、嶷對策を以て大魁と爲る。陳ぶる所の時務、前書と頓に異なる。是に於いて愧悔して公を殺して以て口を滅せんと欲し、密かに京黨を贊けて力を出だすこと尤も甚だし。
現代語訳
陳瓘は蔡氏との関わりで罪を得たとはいえ、真っ先に私的な記録による修史を論じ、力を尽くして王安石の学を退けた。王氏・蔡氏の一派、たとえば薛昂・蹇序辰・何執中・鄧洵仁・鄧洵武・蔡嶷らは、いずれも当時力を合わせて陳瓘を陥れ、殺そうとした者たちである。蔡京兄弟だけではない。蔡嶷と陳瓘とは、初めは面識がなかった。陳瓘が宰相に書を上って海陵に左遷されたとき、蔡嶷は太学生であり、長い手紙を陳瓘に送り、事を論じて陳瓘の議論と一致した。そこにはこうあった。あなたの諫めの上奏文は穏やかでありながら理があり、陸贄に似ている。剛毅でたわまないところは狄仁傑に似ている。文章に深い源があり、正道を明らかにするところは、まさに韓愈その人である、と。翌年になって、蔡嶷は殿試の対策で首席となった。そこで述べた時務は、以前の手紙とはがらりと違っていた。そこで恥じ悔いて、陳瓘を殺して口を封じようとし、ひそかに蔡京の一派を助けて力を出すことがとりわけひどかった。
解説
この章句が説くこと
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論語・憲問篇憲、恥を問う。子曰わく、邦に道あれば穀し、邦に道無くして穀するは、恥なり。
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説苑・立節王子比干身を殺して以て其の忠を作し、伯夷叔斉身を殺して以て其の廉を成す。此の三子なる者は、皆天下の通士なり。豈に其の身を愛せざらんや。以為えらく夫れ義の立たず、名の著れざるは是れ士の恥なりと。故に身を殺して以て其の行いを遂ぐ。此に因りて之を観れば、卑賤貧窮は、士の恥に非ざるなり。夫れ士の恥ずる所の者は、天下忠を挙げて士与らず、信を挙げて士与らず、廉を挙げて士与らざるなり。三者身に在りて、名後世に伝わり、日月と並びて息まず、無道の世と雖も汚す能わず。然れば則ち死を好みて生を悪むに非ざるなり、富貴を悪みて貧賤を楽しむに非ざるなり、其の道に由り其の理に遵い、尊貴己に及ばば、士辞せざるなり。孔子曰わく、「富にして求む可くんば、執鞭の士と雖も、吾亦之を為さん。富にして求む可からざれば、吾が好む所に従わん」と。大聖の操なり。詩に云う、「我が心石に匪ず、転ず可からず。我が心席に匪ず、巻く可からず」と。己を失わざるを言うなり。己を失わざる能わば、然る後与に難を済う可し。此れ士君子の衆に越ゆる所以なり。
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論語・泰伯篇子曰く、篤く信じて学を好み、死を守りて道を善くす。危邦には入らず、乱邦には居らず。天下道有れば則ち見れ、道無ければ則ち隠る。邦に道有りて、貧しく且つ賤しきは、恥なり。邦に道無くして、富み且つ貴きは、恥なり。
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論語・子路篇子貢問いて曰く、「何如なれば斯れ之を士と謂う可き。」子曰く、「己を行うに恥有り、四方に使いして、君命を辱めざる、士と謂う可し。」曰く、「敢えて其の次を問う。」曰く、「宗族孝を称し、郷党弟を称す。」曰く、「敢えて其の次を問う。」曰く、「言必ず信、行必ず果、硜硜然たる小人なるかな。抑々亦た以て次と為す可し。」曰く、「今の政に従う者は何如。」子曰く、「噫、斗筲の人、何ぞ算うるに足らんや。」
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論語・公冶長篇子曰く、巧言・令色・足恭は、左丘明之を恥ず、丘も亦た之を恥ず。怨みを匿して其の人を友とするは、左丘明之を恥ず、丘も亦た之を恥ず。
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徒然草・第129段顔囘は、志人に労を施さじとなり。すべて人を苦しめ、物を虐ぐる事、賎しき民の志をも奪ふべからず。又幼き子を賺し嚇し、言ひ辱しめて興ずることあり。大人しき人は、まことならねば事にもあらず思へど、幼き心には、身にしみて恐ろしく、恥しく、あさましき思ひ、誠に切なるべし。これを悩して興ずる事、慈悲の心にあらず。大人しき人の、喜び怒り哀れび楽しぶも、皆虚妄なれども、誰か実有の相に著せざる。身を破るよりも、心を痛ましむるは、人を害ふ事なほ甚だし。病を受くる事も、多くは心より受く。外より来る病は少なし。薬を飮みて汗を求むるには、験なき事あれども、一旦恥ぢ恐るゝことあれば、かならず汗を流すは、心のしわざなりといふことを知るべし。凌雲の額を書きて、白頭の人となりし例なきにあらず。