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智囊 / 識斷・文彥博

潞公為御史時,邊將劉平戰死。監軍黃德和擁兵觀望,欲脫己罪,誣平降虜,而以金帶賂平奴,使附己。平家二百口皆冤係,詔彥博置獄河中。彥博鞫治得實。德和黨援謀翻獄,已遣他御史來代之矣。彥博拒之,曰:「朝廷慮獄不就,故遣君。今獄具矣。事或弗成,彥博執其咎,與君無與也。」德和並奴卒就誅。

新字:潞公為御史時,辺将劉平戦死。監軍黄徳和擁兵観望,欲脱己罪,誣平降虜,而以金帯賂平奴,使附己。平家二百口皆冤係,詔彦博置獄河中。彦博鞫治得実。徳和党援謀翻獄,已遣他御史来代之矣。彦博拒之,曰:「朝廷慮獄不就,故遣君。今獄具矣。事或弗成,彦博執其咎,与君無与也。」徳和並奴卒就誅。

書き下し

潞公、御史たりし時、辺将の劉平戦死す。監軍の黄徳和、兵を擁して観望し、己が罪を脱せんと欲し、平を誣いて虜に降ると為し、金帯を以て平の奴に賂い、己に附かしむ。平の家二百口、みな冤に係がる。詔して彦博に獄を河中に置かしむ。彦博、鞫治して実を得たり。徳和の党援、獄を翻さんことを謀り、已に他の御史を遣わして代えしむ。彦博これを拒みて曰く、「朝廷、獄の就らざるを慮り、故に君を遣わす。今、獄具わりぬ。事或いは成らずんば、彦博其の咎を執らん。君と与る無し」と。徳和并びに奴卒、誅に就く。

現代語訳

文彦博が御史であったとき、辺境の将の劉平が戦死しました。監軍の黄徳和は兵を抱えたまま形勢をうかがい、自分の罪を免れようとして、劉平を敵に降ったと偽って訴え、金の帯を劉平の下僕に贈って自分に味方させました。劉平の家族二百人はみな冤罪で拘束されました。詔によって文彦博に河中で審理させることになりました。文彦博は取り調べて真実を得ました。黄徳和の仲間は裁判を覆そうと謀り、すでに別の御史を遣わして交代させようとしていました。文彦博はそれを断って言いました。「朝廷は審理がまとまらないことを心配して、あなたを遣わしたのでしょう。いま獄は整いました。もし事が成らなければ、私が責めを負います。あなたには関わりのないことです。」黄徳和と、その下僕や兵士は、処刑されました。

解説

文彦博は、取り調べで真実を得たあと、利害の絡む政治的な横槍で担当者を替えられそうになったとき、責任を自分が負うと言って押し返しました。ここで重要なのは、事実の確定と、責任の所在の明示を同時に行った点です。現代の組織でも、調査や監査の終盤で、関係者が担当を替えて結論を動かそうとすることがあります。その圧力に抗するには、自分の調査の根拠が堅いこと、そして結果に責任を負う覚悟が必要です。冤罪の被害者が二百人に及ぶという重さが、この毅然とした判断の背景にあります。

この章句が説くこと

劉平黄徳和鞫治冤罪咎を執る公正

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