智囊 / 識斷・衛嗣君・高洋
衛有胥靡亡之魏,嗣君以五十金買之,不得。乃以左氏易之,左右曰:「以一都買一胥靡,可乎?」嗣君曰:「治無小,亂無大,法不立,誅不必,雖有十左氏無益也。法立誅必,雖失十左氏,無害也。」高洋內明而外晦。眾莫知也,獨歡異之。曰:「此兒識慮過吾。」時歡欲觀諸子意識,使各治亂絲。洋獨持刀斬之,曰:「亂者必斬。」
新字:衛有胥靡亡之魏,嗣君以五十金買之,不得。乃以左氏易之,左右曰:「以一都買一胥靡,可乎?」嗣君曰:「治無小,乱無大,法不立,誅不必,雖有十左氏無益也。法立誅必,雖失十左氏,無害也。」高洋内明而外晦。衆莫知也,独歓異之。曰:「此児識慮過吾。」時歓欲観諸子意識,使各治乱糸。洋独持刀斬之,曰:「乱者必斬。」
書き下し
衛に胥靡の魏に亡ぐる有り。嗣君は五十金を以て之を買わんとするも、得ず。乃ち左氏を以て之に易えんとす。左右曰く、「一都を以て一胥靡を買う、可ならんや」と。嗣君曰く、「治に小無く、乱に大無し。法立たず、誅必ならずんば、十の左氏有りと雖も益無し。法立ち誅必ならば、十の左氏を失うと雖も害無し」と。高洋は内に明らかにして外に晦し。衆は知る莫く、独り歓は之を異とす。曰く、「此の児は識慮吾に過ぐ」と。時に歓は諸子の意識を観んと欲し、各おのをして乱絲を治めしむ。洋は独り刀を持ちて之を斬り、曰く、「乱れたる者は必ず斬る」と。
現代語訳
衛に、魏へ逃げ込んだ刑徒がいた。衛の嗣君は五十金でその者を買い戻そうとしたが、得られなかった。そこで左氏の町と交換しようとした。側近が言った。「一つの都市で一人の刑徒を買うのは、よいのでしょうか」。嗣君は言った。「政治に小さな事はなく、乱れに大きな事はない。法が立たず、処罰が確実でなければ、十の左氏があっても益はない。法が立ち、処罰が確実なら、十の左氏を失っても害はない」。高洋は内心は聡明だが、外見はぼんやりしていた。人々は気づかなかったが、父の高歓だけは見抜いて、不思議に思った。「この子は見識も思慮も私に勝る」と言った。あるとき、高歓は息子たちの見識を見たいと思い、それぞれにもつれた糸を整えさせた。高洋だけが刀を持ってそれを断ち、「乱れたものは必ず斬る」と言った。
解説
この章句が説くこと
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『呻吟語』外篇・治道・大體を立てざる故なり政に從ふに自ら個の大體有り。大體既に立たば、則ち小節は抵牾すと雖も、當に別に張弛を作して、以て吾が大體の未だ備はらざる所を輔くべし。便ち弦を改め轍を易ふ可からず。譬へば民を待つに恩有るを貴ぶは、此れ大體なり。即ひ頑暴にして化せざる者有らば、之を重刑するも、民を待つの大體は變ぜず。士を待つに禮有るは、此れ大體なり。即ひ淫肆にして檢せざる者有らば、之を嚴治するも、士を待つの大體は變ぜず。彼の始めの寬なるは、既に士民の惡を養ひ、終はりの猛なるは、概ね士民の善に及ぶ。政に非ざるなり、大體を立てざる故なり。
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