智囊 / 威克・侯嬴
〔馮評〕信陵邯鄲之勝,決於椎晉鄙;項羽巨鹿之勝,決於斬宋義。夫大將且以擁兵逗留被誅,三軍有不股栗願死者乎?不待戰而力已破矣,儒者猶以擅殺議刑,是烏知扼要之策乎?
新字:〔馮評〕信陵邯鄲之勝,決於椎晋鄙;項羽巨鹿之勝,決於斬宋義。夫大将且以擁兵逗留被誅,三軍有不股栗願死者乎?不待戦而力已破矣,儒者猶以擅殺議刑,是烏知扼要之策乎?
書き下し
〔馮評〕信陵の邯鄲の勝は、晋鄙を椎するに決し、項羽の鉅鹿の勝は、宋義を斬るに決す。夫れ大将すら且つ兵を擁して逗留するを以て誅せらる。三軍に股栗して死を願わざる者有らんや。戦いを待たずして力已に破らる。儒者は猶お擅殺を以て刑を議す。是れ烏んぞ要を扼するの策を知らんや。
現代語訳
〔馮夢龍の評〕信陵君が邯鄲で勝てたのは、晋鄙を鉄槌で打ち殺したことで決まった。項羽が鉅鹿で勝てたのは、宋義を斬ったことで決まった。大将でさえ、軍を握って足踏みしていれば処刑される。となれば全軍に、足が震えて死を覚悟しない者がいるだろうか。戦いを待たずに、敵を破る力はすでに生まれている。それなのに、儒者はなお、勝手に殺したことを理由に刑を論じる。これでは、急所を押さえる策などどうして分かろうか。
解説
馮夢龍はここで、非常の場面では見せしめの断行こそが全軍の士気を一変させる、と断じます。信陵君と項羽が、いずれも指揮官を排除して勝機をつかんだ事例を並べ、手続きを問う儒者を批判しました。リーダーにとって、決断を遅らせて全体を危うくする存在への対処は、避けて通れない課題です。ただし、これは危機の戦場という特殊な条件での話で、現代の組織で同じ強硬策を取れば、不当な処分や職場の萎縮を招きます。大切なのは、この主張の背景にある、急所を見極め、全体に意思を示すという発想の部分でしょう。
この章句が説くこと
椎晋鄙斬宋義要を扼する見せしめ士気擅殺
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