智囊 / 詰奸・慕容彥超
慕容彥超為泰寧節度使,好聚斂。在鎮常置庫質錢,有奸民為偽銀以質者,主吏久之乃覺。彥超陰教主吏夜穴庫垣,盡徙金帛於他所,而以盜告。彥超即榜市,使民自言所質以償,於是民爭來言,遂得質偽銀者。超不罪,置之深室。使教十餘人為之,皆鐵為之質而包以銀,號「鐵胎銀」。〔馮述評〕得質偽銀者,巧矣;教十餘人為之,是自為奸也。後周兵圍城,超出庫中銀勞軍。軍士嘩曰:「此鐵胎耳!」咸不為用,超遂自殺。此可為小智亡身之戒。
新字:慕容彦超為泰寧節度使,好聚斂。在鎮常置庫質銭,有奸民為偽銀以質者,主吏久之乃覚。彦超陰教主吏夜穴庫垣,尽徙金帛於他所,而以盗告。彦超即榜市,使民自言所質以償,於是民争来言,遂得質偽銀者。超不罪,置之深室。使教十余人為之,皆鉄為之質而包以銀,号「鉄胎銀」。〔馮述評〕得質偽銀者,巧矣;教十余人為之,是自為奸也。後周兵囲城,超出庫中銀労軍。軍士嘩曰:「此鉄胎耳!」咸不為用,超遂自殺。此可為小智亡身之戒。
書き下し
慕容彦超、泰寧節度使と為る。聚斂を好む。鎮に在りて常に庫を置きて銭を質す。奸民の偽銀を為りて以て質する者有り、主吏は之を久しくして乃ち覚る。彦超は陰かに主吏に教え、夜に庫垣に穴あけしめ、金帛を尽く他所に徙して盗を以て告げしむ。彦超は即ち市に榜し、民をして自ら質する所を言いて以て償わしむ。是に於て民争い来たりて言い、遂に偽銀を質せし者を得たり。超は罪せず、之を深室に置き、十余人に教えて之を為さしむ。皆な鉄もて質と為し、包むに銀を以てし、「鉄胎銀」と号す。〔馮述評〕偽銀を質せし者を得しは、巧みなり。十余人に教えて之を為さしむるは、是れ自ら奸を為すなり。後周の兵の城を囲むや、超は庫中の銀を出だして軍を労う。軍士嘩ぎて曰く、「此れ鉄胎のみ」と。咸な用を為さず、超は遂に自殺す。此れ小智の身を亡ぼすの戒めと為す可し。
現代語訳
慕容彦超が泰寧の節度使だったときのことです。彼は蓄財を好みました。任地では常に質屋の倉庫を設けて金銭を貸していました。偽の銀を作って質草にする悪賢い民がおり、主任の役人は長い間気づきませんでした。彦超は、ひそかに主任に教え、夜に倉庫の垣根に穴を開けさせ、金や絹をすべて他所に移して、盗難にあったと報告させました。彦超はただちに市場に掲示を出し、民に自分の質入れした物を申し出て、その分を弁償させると告げました。すると民は争って申し出て、結局、偽銀を質入れした者が見つかりました。彦超は罪に問わず、その者を奥の部屋に入れ、十数人に教えて偽銀を作らせました。みな鉄を芯にして銀で包み、「鉄胎銀」と呼ばれました。〔馮夢龍の述評〕偽銀を質入れした者を見つけたのは巧みだった。しかし十数人に教えて作らせたのは、自ら悪事をすることである。のちに後周の軍が城を囲むと、彦超は倉の銀を出して兵を労った。兵たちは騒いで「これは鉄の芯だ」と言い、みな働こうとしなかった。彦超はついに自殺した。これは小賢しい知恵で身を滅ぼす戒めとすべきである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『智囊』權奇・文彥博起居舎人毋湜、至和中に上言し、陝西の鉄銭を廃せんことを乞う。朝廷、従わずと雖も、其の郷人、多く之を知り、争いて鉄銭を以て物を買う。売る者、受くるを肯ぜず。長安、之が為に乱る。民、多く肆を閉ず。僚属、之を禁ぜんことを請う。文彦博曰く、「是くの如くんば、是れ愈いよ惑い擾すなり」と。乃ち絲絹の行人を召し、其の家の縑帛数百匹を出して之を売らしめて曰く、「其の直を納むるに尽く鉄銭を以てせよ、銅銭を以てする勿かれ」と。是に於いて衆、鉄銭の廃せられざるを知り、市肆復た安んず。
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『智囊』狡黠・江南士子科は嘗て人の為に公事を居間す。其の人は約して公所に物を封ず、正に較量する次、一跛丐有り、右に杖を持ち、左に竹籃を携え、籃内に破衣有り、挨り入りて乞賞す。科は零星を掂りて之に与うるに、丐は少なきを嫌う、科は佯り怒り、元宝一錠を取りて籃中に擲ち、叱して曰く、「汝は此を欲するか」と。丐は悚懼して曰く、「財主は添えざれば則ち已む、何ぞ必ずしも怒らん」と、双手に宝を捧げて几上に置きて去る。後に事諧わず、其の人は封を啓くに、則ち元宝は乃ち偽物にして、向の丐者の為に易え去られたり、丐者は即ち科の党の仮る所なり。〔述〕蘇城は四方輻湊の地、騙局甚だ多し。曾て記す万暦季年、徽人の叔姪の墳を争う事有り、結訟すること数年、其の姪は先に人の郡の司理に通ずる有り、撫台に於いて一詞を准して之を発せんと欲す。忽ち某公子の閶門外に寓する有り、是れ撫公の年姪なりと云い、衣冠甚だ偉に、僕従も亦た都なり。徽姪は往きて拝し、因りて之を邀えて飲む。偶ま此の事を談及するに、公子は一力して承当す。遂に物を封じて質と為し、期に及びて、公子は公服し、訟詞を取りて袖中に納れ、径ちに撫台の門に入る、徽姪は外より之を伺うに、忽ち公事已に畢りて門閉ざされたり、意うに撫公は公子を留めて餐せしめんと。門役に詢うも、俱に知る莫し、乃ち晩衙に、公子は人叢の中より酒容にして出で、意気揚揚として、云う、「撫公の相待つこと頗る厚く、請う所已に諧えり」と。徽の寓に抵り、官封を袖中より出だすに、印識は宛然たり。
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『智囊』狡黠・白鐵餘白鉄余なる者は、延州の嵆胡なり。一銅仏像を窮谷の柏樹の下に埋め、草の遍く生ずるを俟ちて、仏光現ると宣言す。乃ち数百人を集め、斎を設けて聖仏を出さんとす。佯りて他所より之を劚るも得ず。謂う、是れ衆の誠至らず、布施せざるのみと。蓋し舎する者は百余万にして、即ち埋めし処を劚り、像を獲たり。聖仏を見んと求むる者は日に益々衆く、乃ち紺・紫・緋・黄の綾を以て袋を為ること数重にして像を盛る。観る者其の一重を去り、一回布施す。数百里の老少士女、之に就くこと狂うが若し。遂に乱を作し、自ら「光王軍師」と称す。程務挺、討ちて之を斬る。〔評〕一智なり。善く之を用うれば、即ち李抱貞・劉玄佐なり。善く用いざれば、則ち白鉄余なり。智に於いて何ぞ尤めん。
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『智囊』雄略・邑宰妾守る者は金を分かつを貪り、忍ぶ能わず、足は覚えず前む。宰は間を以て潜かに逸す。衆は金を懐にして既に饜き、出でて宰を失うを視、懼れて走らんと欲す。妾は弱き者一人を択びて力めて之を持し、大いに呼ぶ、「攫金の賊在り」と。衆は奮拳して斉しく毆り、歯甲俱に集う。妾は且に死せんとするも、終に釈かず、声愈いよ厲し。外の人を動かし、外の人入り、衆は竄り、其の一を獲たり。並びに妾の持する所の者と両人を、巡城の潘御史の中に送る。妾は群凶の淫貪の状を訴え、兼ねて失う所の鬻産の銀数を具す。此の両人は諱む能わず、尽く其の党の姓名を供す。頃之くして、悉く擒えて至り、銀は猶お懐に在り。而して犯官の逸出するを以て解と為す。御史は詔獄を視しむるに、則ち宰焉に在り、衆は語塞がり、乃ち罪を不肖の姪に委ぬ。御史は姪を収め、尽く箠の下に斃す。妾は故の金を取りて帰り、数を籍して宰に報じ、病むこと数日にして、乃ち死す。〔評〕獄中の囚の私に出入するは、法に非ざるなり。詔獄甚だし。方に群邏の押し至るや、宰を以て奇貨と為さざらんや。膽薄と言いて其の志を堅くし、金多しと言いて其の欲に中て、謔を忍びて以て之を堅くし、空橐を以て之を餌す。守者を怠らせて宰を逸すは、固より已に吾が算の中に在り。其の不意に出で、一弱を持して以て衆強を羈す。仮令い身は老拳の下に斃るるとも、罪人其れ免れんや。群凶先に我が死するに至りても、目は瞑すべきなり。婦の智は言うを必とせず。独り其の猝にして乱れず、死して怵れず、従容として功に就くは、丈夫の智の逮ばざる所有り。惜しむらくは伝うる者其の名を逸す。然りと雖も、千秋の下、一邑宰の妾有りて浣紗女、鋭司徒の妻、車中の女子の儔に在るを知らば、斯れ友無しと為さざるなり。
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『智囊』詰奸・錢藻銭藻、兵を密雲に備う。二京軍有り、人を通州に劫かす。之を獲たるも服せず、州以て藻に白す。二賊は京軍なるを恃み、出語無状なり。藻乃ち甲を大門の外に移し、独り乙を留めて鞫問すること数四、声色甚だ厲し。已にして筆を握りて百許字を作り、乙の口語を録するが若き状にして、遣り去らしむ。隨いて甲を以て入らしめ、之を紿きて曰く、「乙は已に実を吐けり。事は汝に由る。乙は当に生くべし。汝は当に死すべし」と。甲は其の紿くを意わず、忿然として曰く、「乙は本と首事なり。何ぞ我に委ねんや」と。乃ち尽く乙の首事の状を白す。藻、乙を出だして之に証し、遂に法の如くに論ず。
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『智囊』詰奸・江點江点、字は徳輿、崇安の人なり。特恩を以て官を補せられ、郢州録参に調せらる時、郡の常平庫に銀を失う。方に緝捕するに、劉福という者有り、貿易に因りて銀一筒を得たり。上に「田家抵当」の四字有り。一銀工其の事を発し、劉は直くする能わず。其の家を籍すれば、約万余緡、法は死に当たる。点は其の枉なるかと疑い、又款牘の円かならざるを見る。発する所の者を除き、皆な正贓に非ず。点は反覆して詰問す。劉は鍛冶に苦しみ、平反を願わず。点は立ちどころに守に言い、別に推問を委ね、実を得ること点と同じ。然れども未だ正賊を獲ず、劉は終に釈し難し。未だ幾ばくならずして、経総軍資の両庫皆な盗まる。金を失うこと万を以て計う。点は必ず前の盗ならんと料る。州司の使臣李義という者有り、一妓を館し、用度甚だ侈り。点は之を疑うも、未だ敢て軽がるしく発せず。会たま制司より行下して営田の耕牛を買わしむ。点は因りて陰かに人を遣わして妓の家を襲わしめ、金一束を得たり。遂に府に白し、即ち使臣の行李を簡すれば、中に皆な三庫の失う所の物あり。,劉は方めて釈くを得、人は皆な点の明見に服す。
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