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智囊 / 狡黠・江南士子

科嘗為人居間公事。其人約於公所封物,正較量次,有一跛丐,右持杖,左攜竹籃,籃內有破衣,捱入乞賞。科掂零星與之,丐嫌少,科佯怒,取元寶一錠擲籃中,叱曰:「汝欲此耶?」丐悚懼,曰:「財主不添則已,何必怒?」雙手捧寶置幾上而去。後事不諧,其人啟封,則元寶乃偽物,為向丐者易去矣,丐者,即科黨所假也。〔述〕蘇城四方輻湊之地,騙局甚多。曾記萬曆季年,有徽人叔姪爭墳事,結訟數年矣,其姪先有人通郡司理,欲於撫台准一詞發之。忽有某公子寓閶門外,云是撫公年姪,衣冠甚偉,僕從亦都。徽姪往拜,因邀之飲。偶談及此事,公子一力承當。遂封物為質,及期,公子公服,取訟詞納袖中,徑入撫台之門,徽姪從外伺之,忽公事已畢而門閉矣,意撫公留公子餐也。詢門役,俱莫知,乃晚衙,公子從人叢中酒容而出,意氣揚揚,云:「撫公相待頗厚,所請已諧。」抵徽寓,出官封袖中,印識宛然。

新字:科嘗為人居間公事。其人約於公所封物,正較量次,有一跛丐,右持杖,左攜竹籃,籃内有破衣,捱入乞賞。科掂零星与之,丐嫌少,科佯怒,取元宝一錠擲籃中,叱曰:「汝欲此耶?」丐悚懼,曰:「財主不添則已,何必怒?」双手捧宝置幾上而去。後事不諧,其人啓封,則元宝乃偽物,為向丐者易去矣,丐者,即科党所仮也。〔述〕蘇城四方輻湊之地,騙局甚多。曽記万暦季年,有徽人叔姪争墳事,結訟数年矣,其姪先有人通郡司理,欲於撫台准一詞発之。忽有某公子寓閶門外,云是撫公年姪,衣冠甚偉,僕従亦都。徽姪往拝,因邀之飲。偶談及此事,公子一力承当。遂封物為質,及期,公子公服,取訟詞納袖中,径入撫台之門,徽姪従外伺之,忽公事已畢而門閉矣,意撫公留公子餐也。詢門役,倶莫知,乃晩衙,公子従人叢中酒容而出,意気揚揚,云:「撫公相待頗厚,所請已諧。」抵徽寓,出官封袖中,印識宛然。

書き下し

科は嘗て人の為に公事を居間す。其の人は約して公所に物を封ず、正に較量する次、一跛丐有り、右に杖を持ち、左に竹籃を携え、籃内に破衣有り、挨り入りて乞賞す。科は零星を掂りて之に与うるに、丐は少なきを嫌う、科は佯り怒り、元宝一錠を取りて籃中に擲ち、叱して曰く、「汝は此を欲するか」と。丐は悚懼して曰く、「財主は添えざれば則ち已む、何ぞ必ずしも怒らん」と、双手に宝を捧げて几上に置きて去る。後に事諧わず、其の人は封を啓くに、則ち元宝は乃ち偽物にして、向の丐者の為に易え去られたり、丐者は即ち科の党の仮る所なり。〔述〕蘇城は四方輻湊の地、騙局甚だ多し。曾て記す万暦季年、徽人の叔姪の墳を争う事有り、結訟すること数年、其の姪は先に人の郡の司理に通ずる有り、撫台に於いて一詞を准して之を発せんと欲す。忽ち某公子の閶門外に寓する有り、是れ撫公の年姪なりと云い、衣冠甚だ偉に、僕従も亦た都なり。徽姪は往きて拝し、因りて之を邀えて飲む。偶ま此の事を談及するに、公子は一力して承当す。遂に物を封じて質と為し、期に及びて、公子は公服し、訟詞を取りて袖中に納れ、径ちに撫台の門に入る、徽姪は外より之を伺うに、忽ち公事已に畢りて門閉ざされたり、意うに撫公は公子を留めて餐せしめんと。門役に詢うも、俱に知る莫し、乃ち晩衙に、公子は人叢の中より酒容にして出で、意気揚揚として、云う、「撫公の相待つこと頗る厚く、請う所已に諧えり」と。徽の寓に抵り、官封を袖中より出だすに、印識は宛然たり。

現代語訳

文科はかつて、ある人のために訴訟事の仲介をしたことがあった。その人は役所の詰所で物を封印する約束をし、ちょうど量って仕分けているところへ、足の不自由な乞食が右手に杖をつき、左手に竹籠を提げ、籠の中には破れた衣が入っていたが、割り込んで来て施しを求めた。文科は小銭を量って与えたが、乞食は少ないと不満を言った。文科は怒ったふりをして、銀の元宝を一つ取り上げて籠の中に投げ入れ、叱りつけた。「お前が欲しいのはこれか。」乞食は恐れかしこまって言った。「旦那様が足してくださらないならそれまでのこと、怒るにはおよびません。」そして両手で元宝を捧げて机の上に置いて立ち去った。のちに事がうまく運ばず、依頼人が封印を解くと、元宝は偽物で、先の乞食にすり替えられていた。乞食は文科の仲間が扮したものだった。〔述〕蘇州の町は四方の人が集まる土地で、詐欺の仕掛けがとても多い。かつて万暦の末年に、徽州の叔父と甥が墓地をめぐって争い、数年訴訟を続けていた件があった。甥はあらかじめ郡の司理に通じる人脈を求め、巡撫に訴状の受理を認めてもらおうとしていた。そこへ、ある公子が閶門の外に宿を取った。巡撫の年下の同窓の子だと称し、立派な服装で従者も立派だった。甥は訪ねて拝礼し、宴に招いた。たまたまこの件を話すと、公子はひとりで引き受けた。そこで物を封じて質とし、期日になると、公子は礼服を着て、訴状を袖に入れ、まっすぐ巡撫の役所の門に入って行った。甥は外から様子をうかがっていたが、公務が終わって門が閉ざされてしまった。巡撫が公子を引き止めて食事を出しているのだろうと思った。門番に尋ねたが誰も知らない。夕方の役所の退庁時に、公子は人ごみの中から酒気を帯びた顔で出て来て、意気揚々と言った。「巡撫殿は私を手厚くもてなされ、お願いの件はうまくまとまった。」宿に戻って、官印で封をしたものを袖から取り出すと、印の跡ははっきりと残っていた。

解説

二つの騙しが並んでいます。前半は、すり替えの手口で、乞食を仲間に仕立て、怒りの芝居で本物を触らせ、偽物と入れ替えます。後半は偽公子の話で、権力の門前までは本物の動きをして、期待を作り上げる周到さが際立ちます。どちらも、被害者が最後に見る証拠(封印や官印の跡)をあらかじめ偽造している点が共通します。管理職や経営者が学べるのは、書類や印の外形が整っていても、それを出す過程を自分の目で見ていなければ信用できないという教訓です。紹介者や仲介者の肩書を、そのまま信頼の根拠にしないことも大切です。馮夢龍の評は、人が集まる土地ほど騙しの仕掛けが多いという観察に立っています。

この章句が説くこと

元宝一錠公子官封信用危機管理人を見抜く

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