智囊 / 詰奸・楊逢春
南京刑部典吏王宗,閩人。一日當直,忽報其妾被殺於館舍,宗奔去旋來,告尚書周公用。發河南司究問,欲罪宗。宗云:「聞報而歸,眾所共見。且是婦無外行,素與宗歡,何為殺之?」官不能決,既數月,都察院令審事,檄浙江道御史楊逢春。楊示,約某夜二更後鞫王宗獄。如期,猝命隸云:「門外有覘示者,執來。」果獲兩人,甲云:「彼挈某伴行,不知其由。」乃舍之,用刑窮乙,乙具服。言與王宗館主人妻亂,為其妾所窺,殺之以滅口。即置於法,釋宗。楊曰:「若日間,則觀者眾矣,何由蹤跡其人,人非切己事,肯深夜來看耶?」由是稱為神明。
新字:南京刑部典吏王宗,閩人。一日当直,忽報其妾被殺於館舎,宗奔去旋来,告尚書周公用。発河南司究問,欲罪宗。宗云:「聞報而帰,衆所共見。且是婦無外行,素与宗歓,何為殺之?」官不能決,既数月,都察院令審事,檄浙江道御史楊逢春。楊示,約某夜二更後鞫王宗獄。如期,猝命隸云:「門外有覘示者,執来。」果獲両人,甲云:「彼挈某伴行,不知其由。」乃舎之,用刑窮乙,乙具服。言与王宗館主人妻乱,為其妾所窺,殺之以滅口。即置於法,釈宗。楊曰:「若日間,則観者衆矣,何由蹤跡其人,人非切己事,肯深夜来看耶?」由是称為神明。
書き下し
南京刑部典吏王宗、閩の人なり。一日当直するに、忽ち其の妾の館舎に殺されしを報ず。宗は奔り去りて旋り来たり、尚書周公用に告ぐ。河南司に発して究問せしめ、宗を罪せんと欲す。宗云う、「報を聞きて帰るは、衆の共に見る所なり。且つ是の婦に外行無く、素より宗と歓ぶ。何為れぞ之を殺さん」と。官は決すること能わず。既に数月、都察院は事を審せしむ。浙江道御史楊逢春に檄す。楊は示して、某夜二更の後に王宗の獄を鞫すと約す。期の如くして、猝かに隷に命じて云う、「門外に覘示する者有らん。執え来たれ」と。果たして両人を獲たり。甲云う、「彼は某を挈えて伴い行く。其の由を知らず」と。乃ち之を舎き、乙を用刑して窮す。乙は具に服す。言う、王宗の館主人の妻と乱れ、其の妾に窺わるるを為し、之を殺して以て口を滅ぼしたりと。即ち法に置き、宗を釈す。楊曰く、「若し日間なれば、則ち観る者衆く、何に由りて其の人を蹤跡せん。人の己に切ならざる事に、肯て深夜に来たり看んや」と。是に由りて称して神明と為す。
現代語訳
南京の刑部で書記を務める王宗は、福建の人でした。ある日、当直についていると、突然、妾が宿舎で殺されたという知らせが来ました。王宗は走って帰り、また戻ってきて、尚書の周公用に報告しました。事件は河南司に回されて調べられ、王宗を罪に問おうとしました。王宗は言いました。「知らせを聞いて帰ったのは、みなが見ています。しかもこの女に不貞はなく、もとよりわたしと仲が良かった。どうして殺したりするでしょうか」。役人は決められないまま数か月がたちました。都察院は事件の審理を命じ、浙江道の御史、楊逢春に文書を出しました。楊逢春は掲示を出して、某夜の二更(夜十時ごろ)以後に王宗の事件を審理すると予告しました。その日になって、不意に配下に命じました。「門の外にのぞき見ている者がいるだろう。捕らえて来い」。はたして二人を捕らえました。甲は「この人に連れられて一緒に来ただけで、事情は知りません」と言いました。そこで甲は放し、乙を取り調べましたところ、すべて白状しました。王宗の宿舎の主人の妻と不義を働き、妾に見られたので口封じのため殺した、というのです。ただちに法で処罰し、王宗は釈放されました。楊逢春は言いました。「昼間であれば見物人が多く、どうしてその者を突き止められようか。自分に関わりのない事件を、わざわざ深夜に見に来るだろうか」。これにより、人々は楊逢春を神のように明察な人と呼びました。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『智囊』詰奸・陸雲陸雲、濬儀の令と為る。殺さるる者有り、主名立たず。雲は其の妻を録して問う所無し。十許日にして、遣わし出だし、密かに人をして後ろに随わしめて、之に謂いて曰く、「其の去ること遠からず十里にして、当に男子の之を候つ有るべし。与に語れば、便ち縛して至れ」と。既にして果たして然り。之に問えば具に服す。云う、此の妻と通じ、共に其の夫を殺す。妻の出づるを得しを聞き、与に語らんと欲すれども、近県を憚り、故に遠く相い伺候せりと。是に於て一県称して神明と為す。
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『智囊』詰奸・元絳江寧の推官元絳、上元の令を摂す。甲と乙と酒を被りて相い毆つ。甲は帰りて臥し、夜に盗に足を断たる。妻は乙と称し、乙を執えて県に詣れば、甲は已に死せり。絳は其の妻に敕して曰く、「帰りて夫の喪を治めよ。乙は已に服せり」と。陰かに謹信なる吏を遣わして其の後を跡けしむれば、一僧の迎え笑い、切切として私語するを望む。絳は命じて取りて廡下に係がしめ、妻に奸の状を詰ぬれば、即ち実を吐く。人其の故を問うに、絳曰く、「吾れ妻の哭して哀しまず、且つ傷つけられし者と席を共にして襦に血の污れ無きを見る。是を以て之を知る」と。
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『智囊』得情・楊茂清楊茂清、直隷貴池の知県に升る。池は大江に浜し、使伝の往来は織るが如し。民は囂訟を好む。茂清、俗に因りて治め、且つ事に遇いて明決なり。時に涇県に王賛なる者有り。青陽の富室周鑒の金を逋り、之を陥れんと欲す。預め一丐婦を購いて之を蓄え、鑒至りて金を索むれば、輒ち婦を殺して鑒を誣う。訊する者は鑒の富むを以て嫌いとし、敢えて為に白らかにする莫し。御史、事を以て郡に下し、郡は清に檄して往きて按ぜしむ。其の獄詞を閲して曰く、「知見は何ぞ里鄰を指さずして、五十里外の麻客を以てするや。賛は既に毆たれて地に暈す。又た何ぞ能く麻客の姓名を弁じ、引きて之が証と為さんや」と。又た云う、「其の妻は賛の背に伏して賛を護る。又た何ぞ能く胸脅を毆ちて死せしめんや」と。已にして乃ち証人を訊うに、稍稍として実を吐く。詰旦に屍所に至り、益ます居民を審らかにするに、則ち賛の門に溝有り、溝に椽を布きて橋と為す。陽りて婦を出して鑒と争わせ、橋より墮ちて死す。賛乃ち語塞がり、鑒は免るるを得たり。
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『智囊』得情・楊茂清石埭の楊翁に二子を生む。長子の子は標。次子は死し、其の婦は僕と奸す。翁之を逐う。僕は復た潜かに家に至る。翁は直ちには奸と斥けず、盗に比して撲殺す。時に標は青陽に往きて親故の寿を為す。僕の家は標が実に之を殺せりと謂う。而して翁は己の当に辜に伏すべしと訴う。当道は聴かず、竟に標を以て坐す。翁は屢ば訴う。清、密かに其の事を偵いて之を得たり。而して当道も亦た標の富むを以て、平反を憚る。清は檄を承け、則ち青陽に逮びて標と飲酒せし者十余人を、隔てて之を訊うに、一口より出づるが如し。乃ち翁を収贖に坐し、而して標を貸す。後三年、道に其の家を経るに、尽室の男女、道に羅拝す。且つ一小児を携えて告げて曰く、「此れ標が禁を出でて生みし所なり。公に非ざれば楊氏は斬たれたり」と。〔馮述評〕又た銅陵の胡宏緒、韓太守の試に諸生に冠たり。一家奴有り、其の妻子を挈えて逃ぐ。宏緒、媒氏の之を匿すと訴う。蹤跡の所在を、相与に執縛す。其の奴は先に是れ病み甚だしく、獄に送るに比び、当夕に身死す。其の家、亟かに官に陳ぶ。而して客戸の江西人、其の同籍なるもの、紛至として証と為る。御史、部を按じ、之を訴うるに、輒ち以て清に下す。清は三たび之を訊い、曰く、「所謂鎖縛は、実に以て県に送るなり。私家に非ざるなり。況んや奴は先に病有るをや」と。遂に胡生を原す。会試且に迫らんとするに、夙夜、獄牒を以て上し、胡生は遂に坐せざるを得たり。是の年、賢書に登る。公の冤を弁じ滞を釈くこと、多く此に類す。
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『智囊』詰奸・范純仁参軍宋儋年、暴かに死す。范純仁は子弟をして喪を視しむるに、小斂するとき口鼻より血出づ。純仁は其の非命なるかと疑い、按じて其の妾の小吏と姦するを得たり。因りて会するに、毒を鱉肉中に置く。純仁問う、「肉を食らいしは第幾巡に在りしか」と。曰く、「豈に既に毒に中りて尚お能く席を終うる者有らんや」と。再び之を訊せば、則ち儋年は素より鱉を食らわず。其の曰く、「肉」とは、蓋し妾と吏と変獄の張本を為して以て死を逃れんと欲するのみ。実は儋年の酔いて帰るに、酒に毒して之を殺せしなり。遂に其の罪を正す。
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『智囊』得情・鄭洛書・許進・姚公・張昺鄭洛書、上海県に知たり。嘗て履端に郡に謁し、帰りて海口に泊す。沈屍有り、圧すに石磨を以てするを、忽ち之を見て、歎じて曰く、「此れ必ず客死ならん。故に余の告ぐる莫きなり」と。人を遣わして之を偵わしむるに、近村の民家に石磨有り、其の牡を失えり。執え来たりて相吻合す。一訊して即ち伏す。果たして江西の売卜人にして、歳晏れて将に帰らんとするに、房主、其の財を利して殺せるなり。単県に田作する者有り、其の婦、之に餉す。食い畢わりて死す。翁、故に曰く、「婦の意なり」と。官に陳ぶ。箠楚に勝えず、遂に誣服す。是れより天久しく雨ふらず。許襄毅公、時に山東に官たり。曰く、「獄に其れ冤有らんか」と。乃ち親ら其の地を歴め、獄囚を出して遍く審す。餉婦に至り、乃ち曰く、「夫婦の相守るは、人の至願。鴆毒もて人を殺すは、計の至密なる者なり。焉んぞ自ら田に餉して之を鴆する者有らんや」と。遂に其の餽する所の飲食、経る所の道路を詢う。婦曰く、「魚湯と米飯にして、荊林より度り、他の異なる無きなり」と。公乃ち魚を買い飯を作り、荊花を其の中に投じて、之を狗彘に試むるに、死せざる無し。婦の冤乃ち白し、即日大雨注ぐが如し。蘇人、商に外に出づ。其の妻は雞数隻を蓄えて以て其の帰りを待つ。数年にして方に返り、雞を殺して之を食らえば、夫即ち死す。隣人は外奸有るかと疑い、之を太守姚公に首す。鞫するも他の故無し。意うに其の雞に毒有りと。人をして老雞を覓め、当に死すべき囚と遍く之を食わしむるに、果たして二人を殺す。獄遂に白し。蓋し雞は蜈蚣百虫を食えば、久しくして毒を蓄う。故に養生家は雞の老いたるを食わず、又た夏は雞を食わず。
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