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智囊 / 詰奸・陸雲

陸雲為濬儀令,有見殺者,主名不立,雲錄其妻而無所問。十許日,遣出,密令人隨後,謂曰:「其去不遠十里,當有男子候之,與語,便縛至。」既而果然,問之具服,云與此妻通,共殺其夫,聞妻得出,欲與語,憚近縣,故遠相伺候。於是一縣稱為神明。

新字:陸雲為濬儀令,有見殺者,主名不立,雲録其妻而無所問。十許日,遣出,密令人随後,謂曰:「其去不遠十里,当有男子候之,与語,便縛至。」既而果然,問之具服,云与此妻通,共殺其夫,聞妻得出,欲与語,憚近県,故遠相伺候。於是一県称為神明。

書き下し

陸雲、濬儀の令と為る。殺さるる者有り、主名立たず。雲は其の妻を録して問う所無し。十許日にして、遣わし出だし、密かに人をして後ろに随わしめて、之に謂いて曰く、「其の去ること遠からず十里にして、当に男子の之を候つ有るべし。与に語れば、便ち縛して至れ」と。既にして果たして然り。之に問えば具に服す。云う、此の妻と通じ、共に其の夫を殺す。妻の出づるを得しを聞き、与に語らんと欲すれども、近県を憚り、故に遠く相い伺候せりと。是に於て一県称して神明と為す。

現代語訳

陸雲が濬儀の県令だったとき、人が殺されましたが、犯人の見当がつきませんでした。陸雲は被害者の妻を拘留しましたが、何も問いただしませんでした。十日ほど過ぎてから、妻を釈放し、ひそかに人をあとからつけさせて言いました。「十里も行かないうちに、待っている男がいるはずだ。その男と話したら、すぐ縛って連れて来い」。果たしてそのとおりになりました。男を問いただすと、すべて白状しました。「この妻と通じていて、共謀して夫を殺しました。妻が釈放されたと聞き、話したいと思いましたが、近くの県では目立つので、わざと遠くで待っていました」。こうして県の人々は陸雲を神のように明察な人だとたたえました。

解説

陸雲は、被害者の妻に何も問わずに留め置き、のちに解放して様子を見ました。何も聞かれなかったことで、妻は疑われていないと考え、あるいは共犯者に連絡する必要を感じるはずだという読みです。ここでは、問いつめて情報を取るのではなく、放して泳がせるという発想が効いています。管理職が不祥事を調査する際も、疑いを抱いたからといってすぐに問い詰めるより、組織が普段どおり動く中で、不自然に動く人を見つけるほうが全体像は掴みやすくなります。ただし泳がせる期間が長引けば被害が広がることもあるので、見極めの時期を誤らない判断が必要です。

この章句が説くこと

録其妻無所問密随其後泳がせる共犯者待つ判断神明

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