智囊 / 得情・樂藹・李耆壽
梁時長沙宣武王將葬,東府忽於庫失油絡,欲推主者。御史中丞樂藹曰:「昔晉武庫火,張華以為積油幕萬匹,必燃;今庫若有灰,非吏罪也。」既而檢之,果有積灰,時稱其博物弘恕。李南公為河北提刑,有班行犯罪下獄,案之不服,閉口不食者百餘日,獄吏不敢拷訊。南公曰:「吾能立使之食。」引出問曰:「吾以一物塞汝鼻,汝能終不食乎。」其人懼,即食,因具服罪。蓋彼善服氣,以物塞鼻則氣結,故懼。此亦博物之效也。
新字:梁時長沙宣武王将葬,東府忽於庫失油絡,欲推主者。御史中丞楽藹曰:「昔晋武庫火,張華以為積油幕万匹,必燃;今庫若有灰,非吏罪也。」既而検之,果有積灰,時称其博物弘恕。李南公為河北提刑,有班行犯罪下獄,案之不服,閉口不食者百余日,獄吏不敢拷訊。南公曰:「吾能立使之食。」引出問曰:「吾以一物塞汝鼻,汝能終不食乎。」其人懼,即食,因具服罪。蓋彼善服気,以物塞鼻則気結,故懼。此亦博物之効也。
書き下し
梁の時、長沙宣武王将に葬られんとし、東府忽ち庫に油絡を失い、主者を推さんと欲す。御史中丞楽藹曰く、「昔、晋の武庫火あり。張華以て積油幕万匹ありて必ず燃ゆと為す。今、庫に若し灰有らば、吏の罪に非ざるなり」と。既にして之を検するに、果たして積灰有り。時に其の博物弘恕を称す。李南公、河北の提刑と為る。班行にして罪を犯し獄に下る者有り。之を案ずるも服せず、口を閉じて食らわざること百余日、獄吏敢えて拷訊せず。南公曰く、「吾能く立ちどころに之をして食らわしめん」と。引き出して問いて曰く、「吾、一物を以て汝の鼻を塞がん。汝能く終に食らわざるか」と。其の人懼れ、即ち食らい、因りて具に罪に服す。蓋し彼は善く気を服する者にして、物を以て鼻を塞げば則ち気結ぶ、故に懼る。此れも亦た博物の効なり。
現代語訳
梁の時代、長沙宣武王が埋葬されようとしていたとき、東府で突然、倉庫の油絹の覆いがなくなり、担当者を追及しようとした。御史中丞の楽藹は言った。「昔、晋の武器庫が火事になったとき、張華は、油を染ませた幕が一万匹も積んであるので必ず燃える、と考えました。今、倉庫にもし灰があれば、役人の罪ではありません」。やがて調べると、はたして灰が積もっていた。当時の人々は、その博識と寛大さを称えた。李南公が河北の提刑であったとき、官位のある者で罪を犯して獄に下された者がいた。取り調べても罪を認めず、口を閉じて食事をとらないこと百日あまり、獄吏もあえて拷問しなかった。南公は言った。「私は、すぐに食べさせてみせよう」。引き出して問うた。「私はある物でおまえの鼻を塞ぐ。それでも最後まで食べずにいられるか」。その人は恐れて、すぐに食べ、そのまま罪に服した。この者は気を断って耐える術に長けていたが、物で鼻を塞げば気が結ばれてしまうので、恐れたのである。これも博識の効果である。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
言志四録・言志後録 第二百十条 識量と知識識量と知識とは自ら別なり。知識は外に在り、識量は内に在り。
-
『呻吟語』内篇・存心・知識は、帝則の賊なり知識は、帝則の賊なり。惟だ知識を忘れて以て帝則に任ず、此れを天真と謂ひ、此れを自然と謂ふ。一たび念を著くれば便ち乖違し、愈〻念を著くれば愈〻乖違す。乍ち見るの心一刻歇息すれば、別に是れ一個の光景なり。
-
『墨子』經說下指す有り。子、是を智り、是れ吾が先に舉ぐる所を智る有るは、重なり。則ち子、是を智れども、吾が先に舉ぐる所を智らざるは、是れ一なり。智る有り、智らざる有りと謂うなり。若し之を智らば、則ち當に之を指して智るを我に告ぐべし。則ち我れ之を智る。兼ねて之を指すは二を以てなり。衡して之を指すは、參えて之を直くするなり。若し曰く、必ず獨り吾が舉ぐる所を指し、吾が舉げざる所を舉ぐること毋かれと。則ち者は固より獨り指す能わず、相わんと欲する所、傳わらず。意うに若し未だ校せずして、且つ其の智る所は是なり、智らざる所も是なりとせば、則ち是れ是の智らざるを智るなり。惡くんぞ一と為すを得ん。謂いて智る有り、智らざる有るなり。所。智るなり、其の執、固より指す可からざるなり。逃臣は、其の處を智らず。狗犬は、其の名を智らざるなり。遺れたる者は、巧なるも兩つながらする能わざるなり。
-
『正法眼蔵随聞記』巻二其れをもの知らぬはわるしと、人も思ひ、愚人と自らも覚ゆる事を傷んで、ものを知らんとて、博く内外典を学し、剰さへ世間世俗の事をも知らんと思ふて、諸事を好み学し、あるひは人にも知りたる由をもてなすは、究めて僻事なり、学道のため真実に無用なり、知りたるを知らざる気色するもむつかしくやうがましければ、却てあたる気色にてあしきなり、本とより知らざらんは苦るしからざることなり、
-
論語・為政篇子曰く、由よ、女(なんじ)に之を知るを誨えんか。之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らずと為す、是れ知るなり。
-
『呻吟語』内篇・談道・知識は心の孽なり知識は、心の孽なり。才能は、身の妖なり。貴寵は、家の禍なり。富足は、子孫の殃なり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る