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智囊 / 得情・韓億

韓億知洋州,大狡李甲以財豪於鄉里。兄死,誣其兄子為他姓,賂里嫗之貌類者,使認為己子,又醉其嫂而嫁之,盡奪其貲。嫂、姪訴於州,積十餘年,竟未有白其冤者。公至,又出訴。公取前後案牘視之,皆未嘗引乳醫為驗。一日,盡召其黨至庭下,出乳醫示之,眾皆服罪,子母復歸如初。

新字:韓億知洋州,大狡李甲以財豪於郷里。兄死,誣其兄子為他姓,賂里嫗之貌類者,使認為己子,又酔其嫂而嫁之,尽奪其貲。嫂、姪訴於州,積十余年,竟未有白其冤者。公至,又出訴。公取前後案牘視之,皆未嘗引乳医為験。一日,尽召其党至庭下,出乳医示之,衆皆服罪,子母復帰如初。

書き下し

韓億、洋州に知たり。大狡の李甲、財を以て郷里に豪たり。兄死し、其の兄の子を誣いて他姓と為し、里の嫗の貌の類せる者に賂いて、認めて己が子と為さしめ、又其の嫂を酔わせて之を嫁がせ、尽く其の貲を奪う。嫂・姪、州に訴うること、積むこと十余年、竟に未だ其の冤を白らかにする者有らず。公至り、又出でて訴う。公、前後の案牘を取りて之を視るに、皆未だ嘗て乳医を引きて験と為さず。一日、尽く其の党を召して庭下に至らしめ、乳医を出だして之に示せば、衆皆罪に服し、子母復た初めの如くに帰す。

現代語訳

韓億が洋州の長官になった。大悪人の李甲は財力で郷里に幅をきかせていた。兄が死ぬと、その兄の子を別の姓の者だと言いがかりをつけ、顔の似た村の老婆に賄賂を贈って自分の子だと認めさせ、さらに兄嫁を酔わせて他家に嫁がせ、財産をすっかり奪い取った。兄嫁と甥は州に訴え出たが、十年あまり重ねても、その無実を晴らしてくれる者は一人もいなかった。韓億が着任すると、また訴え出た。韓億が前後の訴訟記録を取り寄せて見ると、どの裁きでも産婆を呼んで確かめたことがなかった。ある日、李甲の一味をすべて庭先に呼び出し、産婆を連れ出して見せると、皆が罪に服し、母と子は元どおりになった。

解説

十年以上も誰にも晴らせなかった冤罪を、韓億は過去の記録を読み直して突き止めました。どの裁きにも、子を取り上げた産婆に確かめた形跡がなかったのです。長く解決しない問題ほど、関係者は同じ角度から同じ証言ばかり集めがちです。そこで、まだ誰も当てていない証人や資料は何かと探すことが突破口になります。停滞した案件を引き継いだ管理職は、前任者の記録を読み直し、抜けている確認先を洗い出すところから始めると、状況が動き出すでしょう。

この章句が説くこと

乳医案牘子母記録の読み直し盲点真相究明

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