説苑 / 雜言
太公田不足以償種,漁不足以償網,治天下有餘智。文公種米,曾子架羊,孫叔敖相楚,三年不知軛在衡後,務大者固忘小。智伯廚人亡炙●而知之,韓魏反而不知;邯鄲、子陽園人亡桃而知之,其亡也不知。務小者亦忘大也。」
新字:太公田不足以償種,漁不足以償網,治天下有余智。文公種米,曽子架羊,孫叔敖相楚,三年不知軛在衡後,務大者固忘小。智伯廚人亡炙●而知之,韓魏反而不知;邯鄲、子陽園人亡桃而知之,其亡也不知。務小者亦忘大也。」
書き下し
太公は田すれども種を償うに足らず、漁すれども網を償うに足らざれども、天下を治めては余りある智有り。文公は米を種え、曾子は羊を架し、孫叔敖は楚に相たりて、三年軛の衡の後に在るを知らず。大を務むる者は固より小を忘る。智伯の廚人は炙の●を亡いて之を知れるも、韓魏の反くを知らず。邯鄲・子陽の園人は桃を亡いて之を知れるも、其の亡ぶるをば知らざりき。小を務むる者は亦大を忘るるなり」と。
現代語訳
太公望は畑を耕しても種もみの元手さえ取り返せず、漁をしても網の代金にも及ばなかったが、天下を治めることについては人並み外れた知恵を持っていた。晋の文公は米の植え方を知らず、曾子は羊を飼う棚を組み立てられず、孫叔敖は楚の宰相でありながら三年もの間、車の軛(くびき)が轅(ながえ)のどちら側にあるかさえ知らなかった。大事を務める者は、もともと小事を忘れがちなのである。一方、智伯の料理人は、炙り肉の一部がなくなったことにはすぐ気づいたのに、韓氏・魏氏が謀反を起こそうとしていることには気づかなかった。邯鄲や子陽の庭師は、桃が一つなくなったことには気づいたのに、その国が滅びることには気づかなかった。小事を務める者は、また大事を忘れてしまうものなのである。
解説
太公望や孫叔敖のように天下国家を治める大器の持ち主が日常の些事に疎い一方、智伯の料理人や庭師のように目先の小さな異変には敏感でも国の滅亡という大事には気づかないという対比は、視野の広さと細部への注意は両立しにくいという人間の認知の限界を鋭く突く。現代の組織でも、大局を見る経営者ほど現場の細部を見落とし、逆に現場の細部に精通した人ほど全体の危機に気づけないということが起こりがちである。この章が示すのは、大事を成す者には小事を見る目を補う仕組みが必要であり、細部に強い者には大局を見る視点を意識的に取り入れる努力が求められるということである。
この章句が説くこと
大局些事盲点
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