智囊 / 得情・程戡
程戡知處州。民有積仇者。一日諸子謂其母曰:「母老且病,恐不得更議,請以母死報仇。」乃殺其母,置仇人之門,而訴於官。仇者不能自明,戡疑之,僚屬皆言無足疑。戡曰:「殺人而自置於門,非可疑耶?」乃親自劾治,具得本謀。
新字:程戡知処州。民有積仇者。一日諸子謂其母曰:「母老且病,恐不得更議,請以母死報仇。」乃殺其母,置仇人之門,而訴於官。仇者不能自明,戡疑之,僚属皆言無足疑。戡曰:「殺人而自置於門,非可疑耶?」乃親自劾治,具得本謀。
書き下し
程戡、処州に知たり。民に積仇ある者有り。一日、諸子其の母に謂いて曰く、「母は老いて且つ病む。恐らく更に議するを得ず。請う、母の死を以て仇に報いん」と。乃ち其の母を殺し、仇人の門に置き、而して官に訴う。仇者は自ら明らかにする能わず。戡之を疑うも、僚属は皆な疑うに足る無しと言う。戡曰く、「人を殺して自ら門に置くは、疑うべきに非ずや」と。乃ち親ら劾治し、具に本謀を得たり。
現代語訳
程戡が処州の知事であったとき、民の中に積年の恨みを抱えた者たちがいた。ある日、息子たちが母に言った。「母上は年老いて病んでおられます。もう長く相談することも難しいでしょう。どうか母上の死をもって仇に報いさせてください」と。そして母を殺し、仇の家の門前に置いて役所に訴えた。仇とされた者は、自分で身の潔白を示すことができなかった。程戡はこれを疑ったが、部下たちはみな、疑う必要はないと言った。程戡は言った。「人を殺して、自分の家の門ではなく仇の門に置くのは、疑わしくないのか」と。そこで自ら取り調べ、すべての謀略を明らかにした。
解説
この話は、一見、状況が揃っているときこそ、不自然さに目を向ける判断を示しています。息子たちは自分の母を犠牲にしてまで仇に罪を着せました。一方、程戡の問いは、殺されて置かれた場所そのものが不自然だという一点でした。部下が疑わなくてよいと言うなかで、自ら調べ直す責任感が、真相を暴きます。管理職も、周囲が皆納得している案件ほど、自分の目で確かめる役割があります。多数の意見に流されずに疑問を持ち続ける胆力は、冤罪を防ぐだけでなく、組織の判断の質を守ります。
この章句が説くこと
積仇門に置く疑親劾不自然冤罪防止
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